21 / 60
【シリーズ1】Nurture ずっと二人で ~ サッカー硬派男子 × おっとり地味子のゆっくり育むピュア恋~
【19 初めてのお弁当(まこ)】
しおりを挟むあんなに早起きしたのに、結局バタバタになっちっゃた!
出来上がったお弁当を保冷バッグに詰めて、私は急いで玄関を飛び出した。
「まこ、気を付けてね!」
「はあい、いってきます!」
キックオフは十時から。
急いでグラウンドに向かうと、すでにフェンスの周りにはうちの学校の応援とS高校の応援とで人だかりが来ていた。
「まこ、こっちこっち!」
「あんたが一番最後ってどうなのよ」
「ご、ごめん~っ」
折り畳みベンチでしっかりと場所を陣取っているせなちゃんと麻衣ちゃんが手招きしている。
私の名前が入っている席の隣にそれぞれ二人が座っている。
私もいそいで、自分の席について、グラウンドを見つめた。
ピーッと開始を知らせるホイッスルが鳴る。
それぞれのチームがコートに集まり、挨拶ののちすぐにキックオフ。
ついに試合が始まった!
序盤、ボールは互いの選手が奪い奪われして、どちらも攻めあぐねている。
お互いにお互いの戦略を研究し尽くしているからだ。
予想通り、八代くんにはふたりのマークがびったり張り付いている。
「あ、あれじゃパスが通らないよ……」
「大丈夫、あのくらいで抑え込まれる八代くんじゃないよ」
麻衣ちゃんが力強くいった。
そ、そうだよね、みんなの力を信じよう……!
けれど、どちらのチームの決定打なく、前半戦が終了。
チームにも苛立ちが見えてきた。
せなちゃんがめずらしく口を出す。
「S校の10番、新田くんのプレイスタイルが似てるね。あれはやりづらいね」
「浜岡敬くんだよね。そう、新田くんと体型もポジションもよく似てる。
多分、お互いに考えていることも分かるんだろうね。
そういう相手って、やりにくいんだ」
麻衣ちゃんは相手チームの主要選手の情報も把握していた。
なるほど……。
そうだよね、サッカーはチーム戦。
自分のチームの構成はもちろん大事だけれど、相手チームの構成や戦略によって、試合は全然変わってくる。
休憩の間、監督とコーチの周りで、部員たちが話を聞いている。
新田くんは汗を拭きながら、真剣な目でうなづいている。
「後半、押して行けッ!」
「おおっ!」
気合の入った掛け声とともに、新田くんたちが再びコートに走っていく。
がんばれ……、がんばれ、新田くん……!
祈りながら見つめていると、チームの動きが変った。
選手を前に上げて、より攻撃的な形になっている。
「いけ、いけっ!」
「走れ、山西~っ!」
「奪えっ、井口!」
部員たちの声掛けもより頻繁になって、激しい熱気を帯びている。
試合が動き出した!
チームメイトのつないだパスが、新田くんのもとへ。
それを読んでいたかのように、いつの間にか八代くんがガードを交わして前へ。
まるで、サッカーのお手本のようなアシストからのシュ―トがみごとに決まった。
――わぁっ!
グラウンドに歓声が響く。
八代くんが派手にガッツポーズを決めて、そこへ新田くんや他のメンバーが駆け寄る。
「おらぁっ、もう一本いくぞッ!」
「おうっ!」
気合を新たにゲームが再開する。
しかし、一点入れられたS校も黙っていない。
先制点を取られてことで、闘争心に火がついたように攻めに転じた。
再びお互いにボールの奪い合いになり、試合は膠着状態に。
でも、このまま一点を守り切れば勝ち……。
でも、サッカーは最期まで何が起こるかわからない。
後半戦も中盤を過ぎ、S校チームに強い焦りの色が見える。
S校の監督が大声で指示を出しているけれど、なかなかパスが回らない。
焦りや苛立ちが募って、集中力が切れかけている。
そのとき、八代くんが突然駆け出し、ボールを奪いに行った。
誰もがその動きに注視していたはずのエースストライカー。
それなのに、その時は誰も予想していなかったのか、八代くんの素早い動きに、コートのいた全員が大きく動揺した。
集中力を欠いていたところにさらに意表をつかれた選手の足元から、まるで餌を奪い取る鷹のように八代くんがボールをさらった。
「きゃああっ!」
その鮮やかなプレイに、女の子たちの歓声が最大音量で響き渡った。
そのまま八代くんが前へ駆け出す。
S校の選手たちはまるで一拍遅れているみたいな動きだった。
――誰も追いつけない……!
誰もが夢中で八代くんの姿を目で追いかける。
そのとき、八代くんに合わせたように、ゴールを狙える位置にいたのは、新田くんだった!
すかさず八代くんがパス。
まるでプロみたいな速攻の連携プレー。
新田くんの右足が放ったシュートが、ゴールネットに突き刺さった!
わあああっ、と響く歓声。
私も麻衣ちゃんも、いつもは座りきりのせなちゃんまでもが立ち上がり、声を上げていた。
麻衣ちゃんが大声を上げて、両手を高く振った。
「きゃあああっ、やった! すごい! すごいよ!」
「うんっ、やったね!」
「ふわぁ~……、今のはやばいわ~……」
手を振ると、コートの中の新田くんがこっちに向かってガッツポーズをしてくれた。
新田くん……!
やったね、すごいよ!
すごく、かっこいい!
試合はそのまま2対0で、勝利!
みごとにインハイの雪辱を晴らすことができた。
すごく胸が熱い。
ワールドカップを見ているときみたいに感動してる。
新田くん、すばらしい試合を見せてくれてありがとう!
大好き!
だいすき……!
0
あなたにおすすめの小説
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。
甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。
平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは──
学園一の美少女・黒瀬葵。
なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。
冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。
最初はただの勘違いだったはずの関係。
けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。
ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、
焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

