【完】Nurture ずっと二人で ~ サッカー硬派男子 × おっとり地味子のゆっくり育むピュア恋~【ブルーモーメントオムニバス1~2&5】

国府知里

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【シリーズ5】888字物語 ~青春篇~

# 真夏のよかぜ

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 なんとなく帰りたくなくて、防波堤で海を見ていた。

 だんだん暗くなってきたけど、むっとする暑さに動く気すらしない。



「ほれ、そこの中学生、ぼちぼち家へ帰らんかい」

「親が迎えに来るとこですぅ」

「本当かいな、ぐるっと見回りしたらまた来るでな。そんときまだここにおったら、交番に連れてくでなぁ」

「はぁぃ……」



 お巡りさんが自転車で向こうへ走っていった。

 しょうがない、行くか。

 防波堤を降りて帰り道をとぼとぼ歩いていると、少し先に海を眺めている人影が見えた。

 近くまで来たら、こんなど田舎では見たことないようなカッコイイ男の人だった。

 絶対ここら辺の人じゃない。

 いや、都会から帰ってきた人かも。

 自分でも不躾だと思ったけど、じろじろ見ながら避けて通った。



「風はまだかのう」



 急にしゃべり出したので、びっくりして足を止めてしまった。

 その人がこっちを振り向く。

 うわ、芸能人!?

 薄暗い中でも目がきらきらしていて、めちゃくちゃ存在感があった。



「風はまだ吹かんか?」

「は……? そ、そうですね……」



 確かに今はべた凪で、むわっとした空気が淀んでいる。

 強い潮風でも吹いてくれれば、体感温度が下がるはずだけど。

 そのとき、急にぶわっと風が吹いた。

 まとわりついていた熱のすべてを取り去るように、風が夜を運んできた。

 ぐっしゃぐしゃになった髪を撫でつけて顔を上げた。

 あれ、あの人は?

 さっきまでそこにいた男の人がいなくなっていた。

 まさか、海に落ちた?

 いやまさか、そんな音しなかった。

 でも、もう暗い海には誰かが落ちていてもわからない。

 え、えっ、うそでしょ?




「これえ、やっぱり嘘ついたなあ、交番に来ぉんかぁい」

「あっ、お、お巡りさん! 今、誰か海に落ちた、かも……」

「なっ、なんやとう!?」




 その夜、捜索隊が出て、消えた男の人を探した。

 けれど、何も見つからなかった。

 ドラッグでもやっていたのかと心配され、私は厳しく叱られた。

 でも、こんな田舎でそんなもの簡単に買えるわけないし、私の頭が正常だということは自分が一番知っている。

 だけど、あのときあの場所にはいた。

 あの人と私はしゃべった。



 多分あれは、夜風だったんじゃないか。と密かに思っている。
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