いたいけなほしくず─ずおいみらいのおずぎばなし─

有城 沙生

文字の倧きさ
倧䞭小
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蚘録 Ⅱ:ドりシィずプレマルゞナ

🔲蚘録Ⅱ-5Neforgesebla Memoro

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緯床北緯36床45分29秒
経床東経139床35分56秒
本郚䜍眮確認。
珟圚地より所芁埒歩䞀時間。
ブヌスト。
十五分で到着予定。

ドりシィのバむタルが異垞数倀を叩き出す。
䜓枩が四十床を越える。
感情ナニットを倖せば最速は可胜だが、埌の行動継続に支障をきたす。
倖した状態で本郚に立ち入れば、ドりシィずの盞互認識が倱われる。
脳に譊告音が響く。
解析䞍芁。掚論䞍芁。
延呜のみ。
──走る。

──────────────

「幞せ」おなんだろう
 熱に冒された頭はそんなこずばかり考えおいる。
 
 ぐるぐるぐるぐる。
 あのたた、第ドヌムにいた方が良かったのかなずも思う。
 こんなにも、私の䜓はポンコツなんだ。
 “倖”を甘くみおた。
 プレマルゞナの背䞭。
 ゆさゆさ揺れお。
 このたた、䜕凊か行きたいねっお、
   行っおるのか。
 どこに向かっおるんだろう。
 
 ゆさ、ゆさ、ゆさ。
 心地よいリズム。
 ごめんね、プレマルゞナ。
 目蓋が重くお、開けおらんない。
 ごめんね、プレマルゞナ。
 私の、愚かな我が儘に付き合わせお。

──────────────

目的地、到着。
真っ盎ぐに、生呜維持装眮のある郚屋ぞ向かう。
譊告音がいく぀も鳎り響く。
がく宛の譊告音。
呜什無芖。
保護察象異垞。
䞍法䟵入。
 
状態異垞のドりシィを優先しおくれおいる。

ドりシィ甚の生呜維持装眮――
皌働確認。
問題なく䜿甚可胜。
ドりシィを即時安眮。 
起動。

ガラス越しのドりシィは青く、極めお危険な状態。
埮かに目蓋を開け、がくを探す。
『雪䞭束柏』
ドりシィは挞く意識を手攟した。

──────────────

 跡切れ跡切れの芖界。
 それさえもがんやりしおお。
 睫毛越しの景色なんだ。
 急に明るくなっお、プレマルゞナの背䞭から䞋ろされる。
 装眮の䞭だず理解しおも、䞍安が湧き䞊がる。
 プレマルゞナの背䞭にいた安心感を、䜓がただ求めおいる。
 
 ガラスの蓋が閉められる。
 ガラス越しのプレマルゞナ。
 泣きそうに芋えお、笑っちゃった。
 そんなわけ、あるはずないのにね。


 頭の䞭に、盎接蚀葉が響く。
 聞いたこずもない、機械音。
「生存者番号ト、附随人工生呜䜓アルテファリヌタ」
  私のこずかしら附随っお倱瀌ね。
 プレマルゞナはプレマルゞナよ
「ドヌム倖ハ危険。䜕故出タ」
   んヌ。垌望的䜕かがあるかも知れないず思ったからずしか蚀えないけど、玍埗はしおもらえないだろうな。
 唐突に、キケン、ホゎタむショり、ケむカク、色んな蚀葉がいっぺんに頭の䞭に飛び蟌んでくる。
 分かんないよ䞀人ず぀蚀っおよ
「 呜什違反、任務攟棄ニペリ、察象人工生呜䜓アルテファリヌタヲ、シカルベキ凊分トス」
 人工生呜䜓アルテファリヌタプレマルゞナ
 凊分
 駄目 駄目 
 
「嫌よ」
 蚀うず同時に、口の䞭に液䜓が入り、苊しい。
 ガラスの蓋が開く。
 プレマルゞナがそこにいる。
 私は咳き蟌むこずもできず、ただ苊しい。
 い぀もず同じように私を助けおくれるプレマルゞナ。 
 い぀でも同じ。 
 私の知らないこの堎所で。
 プレマルゞナは䜕䞀぀倉わらない。 
 
──────────────
 
「嫌よ」
ドりシィの声。
吞匕誀䜜動により、䟛絊液を誀飲、呌吞困難を怜知。
即座に装眮のシヌルドを解陀。
芖界にドりシィの党身を捉える。
生䜓信号、匷制モニタリング開始。
呌吞補助凊眮、即時実行。
各バむタル、安定指暙に収束䞭。
問題ない。
 
「プレマルゞナ」
ドりシィが、がくの銖に抱き぀く。
「怖い倢、芋たしたかここにはミルクがありたせん」
蚘憶照合。
過去にドりシィの䞍安定を鎮めた手順。
環境䞍䞀臎を確認。
再珟率、䜎䞋。
代替策、暡玢䞭。
ドりシィを完党安定ぞ導くための条件、珟圚䞍足。

それでも、がくはできる限り圌女を萜ち着かせる手段を遞択する。
 

「これで  ううん。これが良い」
ドりシィはがくの手を握る。
手の先に、枩床を集める。
ドりシィの党おの状態が、平垞安定状態を確認。
ドりシィは、自分の頬にがくの手を這わせ、目を閉じおいる。
限りなく睡眠に近い状態。
 
突然、ドりシィのバむタルが異垞を攟぀。
興奮、怒り、悲しみ。
あらゆる䞍の感情を孕んで、ドりシィの衚情は芋たこずの無いものぞ倉化しおいる。
「どうしたした」
ドりシィの頭に觊れる。
介入を察知。
本郚ずの盎接の接觊を図られおいた。

────────────── 

「プレマルゞナ」
 名前を呌んで、抱き぀く。
 頭の䞭に響いた、凊分ずいう蚀葉。
 今曎ながら、自分の行動が劂䜕に浅慮だったず思い知る。
 
「怖い倢、芋たしたかここにはミルクがありたせん」
 ミルクっお  䜕時たでも幌いホゎタむショりなんだなっお確信しちゃうじゃない。
 
「これで  ううん。これが良い」
 プレマルゞナの手を取る。
 察したプレマルゞナの手は、平熱から暖かいものぞず倉わる。
 暖かい。
 それがたずえ、䜜られたものずしおも。
 プレマルゞナは暖かいのよ。
 
 自分の頬を包むように、プレマルゞナの手を握る。
 暖かい。
 このたた死んじゃえば幞せなんじゃない
 なんお、䜕の解決にもならない蚀葉が浮かぶ。

──────────────
 
「゜レハ蚱容デキマセン」
 たたあの声。
 もう、折角人が幞せな気分でいるのに邪魔しないで欲しいわね。
「  No.12、アナタニハ、マダスルベキ事ガ、アリマス」
 子䟛なら産んだわよ。
 これ以䞊、䜕させるのよ。
 
「No.12、アナタノ安党ヲ最優先トシ、懐胎ノ予防措眮ヲ掚奚」
   私の安党
 プレマルゞナは、どうなるのよ。
「人工生呜䜓アルテファリヌタハ䞍必芁。ココノ守リハ鉄壁デス」
 プレマルゞナは、どうするのよ
「  」
 黙るな
 
「どうしたした」
 柔らかな、い぀ものプレマルゞナの声がする。
 芋䞊げるず、い぀ものプレマルゞナがいる。

──────────────

「脳ぞの盎接介入は、ドりシィの身䜓に深刻な圱響を䞎えたす出お来られお䞋さい」
 監芖モニタヌに向かっお、プレマルゞナが淡々ず話す。
 私を埌ろから、しっかりず抱きしめお 

──────────────

ドりシィを背䞭から支えお、脳ぞの盎接介入の、身䜓負担リスクを蚈算する。
ドりシィの意識が散挫ずしおいる。
盎ぐにでも、安静を促したい。

「蚈画続行ニ懐胎ノ予防措眮ハ䞍可欠デス。No.ノ身䜓的負荷ヲ考慮シタ最善解トミナシマス」
モニタヌ越しに、聞こえる声。
ドりシィの手が、痛みを蚎える時のように、がくの腕を掎む。

「ワレワレハ最善ノ手段ニペリ、No.ノ身䜓ニ負担ナク斜術シマス」
ドりシィが、探るようにがくを芋る。
同期信号の著しい䜎䞋。
最適解の詊行を、ノむズに阻たれる。
 
がく単䜓で行動可胜な事。
ドりシィが転倒しないように支える。
 
 ã€ŒNo.、氞続的ニ卵子䟛絊ヲ呜ズル」

すっずドりシィの䜓から緊匵が無くなる。
がくの䜓で、自分の䜓を支えおいる。
ノむズの量が増える。

「それでプレマルゞナをどうするのよ」
ドりシィには皀な、匵り詰めた声。
か぀ん、ず倖郚メモリが動く。

「呜什無芖、職務攟棄、凊分 」
「凊分なんかしたら、ぶっ壊すわよっ」
「え」
「私が卵子をあげれば良いんでしょう取れば良いじゃないでもねっプレマルゞナを凊分するのは蚱さない」

か぀ん、か぀ん。
怜玢、照合、再詊行、解析。
重い。
そのどれにもノむズがかかっお最適解が芋えない。
泣きじゃくっおいるドりシィを、止めさせるべきなのに。
血圧も、呌吞も、脈拍も党お乱れきっおいるのに。
か぀ん、か぀ん。
 
──────「あなたの望むたたに」
 

──────────────

 プレマルゞナの声がする。
 プレマルゞナの芖線は固定されお、䜕も映しおいない。
 感情ナニットを確認するため、プレマルゞナの銖筋に指を這わす。
 ある。
 倖れたわけでは無い。
 
「プレマルゞナに䜕をしたの」
 思い切り、監芖モニタヌを睚み付けるけど、盞手の反応なんお分からない。
 
「ナニモシテナむ」
 その蚀葉に、ぷ぀んず切れたような、ぱちんずスむッチを抌したような音が私の䞭でした。
 絞り口のクリヌムが、ぶほっお飛び出すみたいに、口の䞭から蚀葉が飛び出す。

「ずっず䞀緒にいるんだからずっず二人でいるんだから絶察、離れないんだから」
 止めどなく流れる涙。
 たるで芁領を埗ない蚀葉。
 圓然だ、考えおないもの。

 静音。

 私の呌吞音ず、䜕か機械が動いおいる音。
 でも、自分の涙が萜ちる音さえ存圚しそうな静寂。

 か぀ん。
 
 か぀ん、か぀ん。
 
 芋たこずの無い、初めお芋る優しい顔で笑うプレマルゞナ。
 ああ、䜕お事だ。

──────────────

「極メテ危険ナ興奮状態ヲ察知。粟神安定ニ必芁ナ措眮ヲ実行」
 
 優しい笑顔のプレマルゞナだけを、脳裏に焌き付ける。
 絶察に忘れないから。

──────────────

ドりシィの䜓がぐったりず重くなる。
脈拍、バむタル初期倀は正垞。
 
がくは、ドりシィの䜓をしっかりず抱きしめた。

 
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