成瀬さんは世渡りが下手すぎる

喜島 塔

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第二部

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 正午を報せるチャイムとともに、唯香と山崎洋子は席を立ち、エレベーターホールへと向かった。社員食堂に向かうのはほとんどが男性社員だ。統括営業部の女性社員は、空いている会議室などに集まって持参したお弁当を食べる者が多い。かつて、唯香が新人だった頃は、彼女たちと同じように会議室でお弁当を食べていたのだが、仲が良かった同期が転職したり寿退職してしまってからは自分の席でひとりで食事をとるようになった。もともと群れるのが苦手な唯香にとって、おひとりさまは性に合っているのだ。

「社員食堂はどこにあるのですか?」
「地下1階に社員食堂があって、8階にはカフェテリアもあります」
「カフェテリアもあるんですか? 素敵ですね」
「今度、良ければ一緒に行きましょうか?」
「はい、ぜひ。ご一緒させてください」

 唯香が社員食堂に行くのは久しぶりのことだった。唯香と小川との大喧嘩と、総務部の若村沙織の小川に対する復讐は別の出来事だが、ふたつが一緒くたにされて、若村を操っていた黒幕は成瀬なんじゃないかという根も葉もない噂が社内に飛び交っていたから、唯香はなるべく目立たないようにしていた。良いタイミングで夏季休暇が入ったおかげか、もう、そのことを面白おかしく騒ぎ立てる人々はほとんど見当たらなくなっていたが、念には念をだ。

「山崎さんっておいくつなの?」
 
 日替わり定食はチキンソテー定食だ。唯香は、チキンを一口サイズに切り分けながら山崎さんに尋ねた。

「35歳です」
「えーっ! じゃあ、私とタメですね! 嬉しい」
「はい……実は、私、成瀬さんのこと昔から知ってるんですよ」
 
 唯香は、少し寒気がした。

(昔から知ってるってどういうことよ?)
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