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第二部
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「ええっ! うそっ! 成瀬さんほどの方がおひとりだなんて信じられないですっ!」
「そんなことないって。私なんて、こわいとか、キツイとか言われて、敬遠されてるもの。性格がキツイの治らないのよねえ」
唯香は、はあっと重い溜息を吐いた。
「あっ! ごめんね! これから一緒に仕事する仲間に対して初日から愚痴とか言っちゃって……お願いだから、長く続けてね」
「いいんですよ。タメのおひとりさま同士ですもの。私で良ければ、愚痴でも何でも聞きますよ。私、憧れの成瀬さんとお近づきになれて、本当に嬉しいんです。辞めるわけがないですよ。まあ、八角重工さんに要らないって言われちゃったらそれまでですけどね」
彼女の表情が少しだけ翳った。もしかしたら、今まで接客業などをやっていて事務のお仕事には自信がないのかなあ、と唯香は思った。
「山崎さん、前職は何をされてたの?」
「八角重工業さんと同じ業界で人事などのお仕事に携わっていました」
「えっ? 同業なの? 会社名尋いても差し支えなければ教えてほしいな」
「このことは真山部長や宇野沢課長以外の方々には他言しないで頂きたいのですが……」
山崎さんは、困ったなあという表情をしていた。唯香は、興味本位で軽々しく尋いてしまったことを少し後悔した。
「いいよ、いいよ。何か訳ありなら無理しなくて大丈夫だから」
「いえ……成瀬さんには、あまり隠し事をしたくないんです」
「そう思ってくれるのは、とても嬉しいけど」
「私、扇重工の正社員だったんです」
社員食堂に驚嘆の声が響いた。それが、自分が発した声であることに、唯香自身がいちばん驚いていた。
「そんなことないって。私なんて、こわいとか、キツイとか言われて、敬遠されてるもの。性格がキツイの治らないのよねえ」
唯香は、はあっと重い溜息を吐いた。
「あっ! ごめんね! これから一緒に仕事する仲間に対して初日から愚痴とか言っちゃって……お願いだから、長く続けてね」
「いいんですよ。タメのおひとりさま同士ですもの。私で良ければ、愚痴でも何でも聞きますよ。私、憧れの成瀬さんとお近づきになれて、本当に嬉しいんです。辞めるわけがないですよ。まあ、八角重工さんに要らないって言われちゃったらそれまでですけどね」
彼女の表情が少しだけ翳った。もしかしたら、今まで接客業などをやっていて事務のお仕事には自信がないのかなあ、と唯香は思った。
「山崎さん、前職は何をされてたの?」
「八角重工業さんと同じ業界で人事などのお仕事に携わっていました」
「えっ? 同業なの? 会社名尋いても差し支えなければ教えてほしいな」
「このことは真山部長や宇野沢課長以外の方々には他言しないで頂きたいのですが……」
山崎さんは、困ったなあという表情をしていた。唯香は、興味本位で軽々しく尋いてしまったことを少し後悔した。
「いいよ、いいよ。何か訳ありなら無理しなくて大丈夫だから」
「いえ……成瀬さんには、あまり隠し事をしたくないんです」
「そう思ってくれるのは、とても嬉しいけど」
「私、扇重工の正社員だったんです」
社員食堂に驚嘆の声が響いた。それが、自分が発した声であることに、唯香自身がいちばん驚いていた。
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