成瀬さんは世渡りが下手すぎる

喜島 塔

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第三部

13

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 その後、警告は更にエスカレートした。薄黄色の封筒に入った警告状は、唯香が住んでいるマンションの郵便受けにも放り込まれるようになった。なぜ自分ばかりがこんな目に遭わなければならないのだろうというやり場のない怒りが破裂寸前の風船みたいにパンパンに膨れ上がっていたある日、久しぶりにタケルからの着信が入った。

「やほっ! 唯香ちゃん、久しぶり! 元気? 山崎さん騒動の時以来だね。どう? 結婚準備は順調に進んでる? 岡崎夫人?」

 相変わらず能天気なタケルの声を聞いて、笑いが込み上げてきた。

「ほんと、久しぶりじゃない? 相変わらず元気そうね。タケルの声聞いたら、ちょっとだけ元気が出たわ」

「えっ? 何それ? もしかして、唯香ちゃん ”マリッジブルー”ってやつ?」

「“マリッジブルー”だったら、まだマシだったわよ」

 そう言った後で、唯香は重いため息を吐いた。

「また、何かあったの?」

 スマホ越しのタケルが心配そうに尋いてきた。タケルが唯香を心配するときに見せる、しょぼくれた子犬みたいな顔をしているんだろうなあと思うと、今すぐにでもタケルに会って話を聞いて欲しくなった。でも、もう、それはできない。

「ううん……なんでもないの。大丈夫! 私は、今、幸せに向かって驀進中の女なんだからっ!」
 
 唯香は舞台女優になったつもりで、陽気な女を演じた。まあ、主演女優には程遠い大根役者の演技は付き合いの長いタケルにはバレバレなんだろうけど。

「ところで、どうしたの? 何か用があるから連絡くれたんでしょう?」
 
 タケルに胸中のもやもやの原因を探られる前に、唯香は話題を変えた。

「あ、うん……あのね……来週の三連休の最終日って予定空いてる?」

「うん。暇だけど、何かあるの?」

 折角の三連休なのに、スケジュールを確認しなくても暇だと即答できる自分が、本当に結婚式を間近に控えた女なのかと唯香は自分で自分を疑いたくなった。
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