90 / 126
第三部
13
しおりを挟む
その後、警告は更にエスカレートした。薄黄色の封筒に入った警告状は、唯香が住んでいるマンションの郵便受けにも放り込まれるようになった。なぜ自分ばかりがこんな目に遭わなければならないのだろうというやり場のない怒りが破裂寸前の風船みたいにパンパンに膨れ上がっていたある日、久しぶりにタケルからの着信が入った。
「やほっ! 唯香ちゃん、久しぶり! 元気? 山崎さん騒動の時以来だね。どう? 結婚準備は順調に進んでる? 岡崎夫人?」
相変わらず能天気なタケルの声を聞いて、笑いが込み上げてきた。
「ほんと、久しぶりじゃない? 相変わらず元気そうね。タケルの声聞いたら、ちょっとだけ元気が出たわ」
「えっ? 何それ? もしかして、唯香ちゃん ”マリッジブルー”ってやつ?」
「“マリッジブルー”だったら、まだマシだったわよ」
そう言った後で、唯香は重いため息を吐いた。
「また、何かあったの?」
スマホ越しのタケルが心配そうに尋いてきた。タケルが唯香を心配するときに見せる、しょぼくれた子犬みたいな顔をしているんだろうなあと思うと、今すぐにでもタケルに会って話を聞いて欲しくなった。でも、もう、それはできない。
「ううん……なんでもないの。大丈夫! 私は、今、幸せに向かって驀進中の女なんだからっ!」
唯香は舞台女優になったつもりで、陽気な女を演じた。まあ、主演女優には程遠い大根役者の演技は付き合いの長いタケルにはバレバレなんだろうけど。
「ところで、どうしたの? 何か用があるから連絡くれたんでしょう?」
タケルに胸中のもやもやの原因を探られる前に、唯香は話題を変えた。
「あ、うん……あのね……来週の三連休の最終日って予定空いてる?」
「うん。暇だけど、何かあるの?」
折角の三連休なのに、スケジュールを確認しなくても暇だと即答できる自分が、本当に結婚式を間近に控えた女なのかと唯香は自分で自分を疑いたくなった。
「やほっ! 唯香ちゃん、久しぶり! 元気? 山崎さん騒動の時以来だね。どう? 結婚準備は順調に進んでる? 岡崎夫人?」
相変わらず能天気なタケルの声を聞いて、笑いが込み上げてきた。
「ほんと、久しぶりじゃない? 相変わらず元気そうね。タケルの声聞いたら、ちょっとだけ元気が出たわ」
「えっ? 何それ? もしかして、唯香ちゃん ”マリッジブルー”ってやつ?」
「“マリッジブルー”だったら、まだマシだったわよ」
そう言った後で、唯香は重いため息を吐いた。
「また、何かあったの?」
スマホ越しのタケルが心配そうに尋いてきた。タケルが唯香を心配するときに見せる、しょぼくれた子犬みたいな顔をしているんだろうなあと思うと、今すぐにでもタケルに会って話を聞いて欲しくなった。でも、もう、それはできない。
「ううん……なんでもないの。大丈夫! 私は、今、幸せに向かって驀進中の女なんだからっ!」
唯香は舞台女優になったつもりで、陽気な女を演じた。まあ、主演女優には程遠い大根役者の演技は付き合いの長いタケルにはバレバレなんだろうけど。
「ところで、どうしたの? 何か用があるから連絡くれたんでしょう?」
タケルに胸中のもやもやの原因を探られる前に、唯香は話題を変えた。
「あ、うん……あのね……来週の三連休の最終日って予定空いてる?」
「うん。暇だけど、何かあるの?」
折角の三連休なのに、スケジュールを確認しなくても暇だと即答できる自分が、本当に結婚式を間近に控えた女なのかと唯香は自分で自分を疑いたくなった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる