成瀬さんは世渡りが下手すぎる

喜島 塔

文字の大きさ
112 / 126
第三部

35

しおりを挟む
「ねえ、若村さん」

「はい?」

「私ね、あまり、気が長い方じゃないの。あなたは、今日、私に秘密の話を打ち明ける覚悟でここに来た。私は、若村さんの話がどんな内容であれ受け入れる覚悟でここに来た。そして、あなたが、私に打ち明けようとしている話がどんな内容なのか、およそ、見当がついているの……勿体ぶるのは辞めて本題に入りましょう! 私には時間がないの!」

 唯香の圧に押された若村沙織の小刻みに震えていた手の震えが止まった。若村の中にある芯みたいなものが突き抜けたような、そんな感じだった。

「わかりました。私が知る“岡崎遼おかざき りょう”という男のすべてを打ち明けます。私がこれから成瀬さんに話す内容の真偽は、成瀬さんご自身で判断してください」

「ええ、そのつもりよ。『そんなこと知りたくなかった。知らなければ、私は彼と幸せになることができたのに……』なんて、あなたに責任を押し付けて逆恨みするつもりはないから安心して話して」

「私、八角重工に入社してから、ずっと、岡崎さんに憧れていたんです。今もそうですけど、とにかく格好良くて、仕事ができて、自信に溢れていて……彼を狙っている女性社員なんて山ほどいて、彼を巡る熾烈な女たちの戦いが繰り広げられていました」

「そうなんだぁ。私が入社した時は、彼もまだ3年目くらいの若手社員だったから、そこまで騒がれていなかったのよね。それでも、私の同期の間では将来有望な男ランキングの上位にいたわね」

「成瀬さんも元ミスキャンで騒がれてたって噂で聞いたことありますけど……成瀬さんほどの美貌を備えた方なら、岡崎さんの方から言い寄られる可能性も高かったんじゃないですか? 成瀬さんは彼に興味がなかったんですか?」

「まあね。確かに、同期の子たちの話題に挙がるだけあって素敵な方だとは思ったわよ。でも、私、当時、大学時代から付き合ってた彼氏と同棲してたから……まあ、岡崎さんとは比べ物にならないほどダメな男だけど。なんだかんだ言って一緒に居るのが楽だったし、コイツと結婚するんだろうなって思ってたから……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

レオナルド先生創世記

山本一義
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

雪嶺後宮と、狼王の花嫁

由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。 巫女として献上された少女セツナは、 封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。 人と妖、政と信仰の狭間で、 彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。 雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

処理中です...