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「へえ、面白そうな喧嘩じゃない。受けて立つわ」
七菊の口角がキュッと上がった。
「撃つタイミングはいつでも構いませんよ。さっさと撃って僕を殺してもいいですけど、折角だから、ゆっくり楽しみましょうよ。多少は僕が何者なのか興味あるでしょう?」
「そうねえ……あなたのせいでオカルトに目醒めちゃったことだし。今後、九賀野を背負っていくためにも、そういう力があったら便利かもね。あなた如きにできることが、わたくしにできないわけありませんもの」
「ふふっ、すごい自信ですねえ。七菊さん。もう勝った気でいらっしゃるのですね」
「当然でしょう? わたくしは、九賀野七菊なんですから」
七菊は、まるで自分は無敵と言わんばかりに笑った。
「では、参考までに、僕がこの能力を得た経緯についてお話ししますね。少し退屈な話かもしれませんが、何かヒントが隠されているかもしれませんので辛抱強く耳を傾けることをお勧めします」
「わかったわ。聞いてあげるわよ」
「では、改めて自己紹介から。僕の本当の名前は四童子鬼灯。北廿区 金鳳花村 四藻木という小さな集落で『よもぎ医院』を経営する四童子竜胆と百合の息子で、四つ歳の離れた姉の瑠璃との四人家族でした。まあ、この件は何度も聞かされたでしょうから、その後は割愛しましょう。父を殺され母を失い孤児になった姉と僕は人買いに騙されて、姉は遊女として僕は男娼として売り飛ばされてしまいました。僕が売り飛ばされた店は、昔で言うところの陰間茶屋の西洋版みたいな店でした。男色は初代皇帝の千時丸藤樹 様によって禁止令が出され厳しい取り締まりが行われたというのに、人間の性欲というものはどうにもこうにも抑えきれないようですねえ。表向きに美少年に春を売らせる店はなくなりましたが、皆、うまく国家警察の目を搔い潜って金儲けしてるのですよ。僕が売られた店なんて、商店街の中にある普通の純喫茶ですもん。普通に八百屋とか金物屋とかある商店街に紛れてるんですよ。本当、薄汚ねえ場所ですよ。立派な医者に成って貧しい人々を救うことが僕の夢だったのに、なんで、僕、女装させられて臭えじじい相手にこんな辱めを受けなきゃならないんだろうって思ってましたよ。最初の頃はよく自殺未遂したけど見つかっちゃって折檻部屋で拷問受けてた僕ですけど、もうこの地獄から逃れることができないんだと悟った代わりに心が亡くなっちゃって。気付いたら、店の看板娘に成ってて、ふふふっ。人間堕ちるところまで堕ちると何も怖くなくなっちゃうんですよねえ。あはっ。女装にもすっかり慣れて、今じゃあお気に入りですよ。そこいらの小娘より僕の方が可愛いしねえ。客も最初はせいぜい小金持ち程度の人だったんだけど、僕の店での人気が上がるにつれて、政治家、財界人、官僚が僕を指名するようになったんですよ。すごいでしょう? この国を牛耳ってるお偉いさんがさあ、僕のこの愛らしい姿と話術に乗せられて極秘事項を喋ること喋ること。だから、僕、情報通なんですよ」
「あらら、なんか雪、激しくなってません? これは積りそうですねえ。七菊さん、あなたと初めてお会いした日もこんな大雪の日でしたねえ。懐かしいなあ。そうそう、僕ね、あの時、七菊さんに『命の受け渡しの儀式』をさせるために必死だったから、ちょっと嘘吐いちゃった。僕、あの時『六郷航太 様の愛玩動物』って言ったでしょう? あれは嘘。まったくの出鱈目ってわけじゃないんだけど、嘘に中に真実を混ぜるって感じ? 実際、僕は六郷航太 様にはお会いしたことがないし六郷のお屋敷で働いていたというのも嘘」
「ちょっと待って。それでは、あなたは何処から六郷の情報を入手していたのよ? だいぶ詳しいようだったけれど」
堪らず七菊が口を挟んだ。
七菊の口角がキュッと上がった。
「撃つタイミングはいつでも構いませんよ。さっさと撃って僕を殺してもいいですけど、折角だから、ゆっくり楽しみましょうよ。多少は僕が何者なのか興味あるでしょう?」
「そうねえ……あなたのせいでオカルトに目醒めちゃったことだし。今後、九賀野を背負っていくためにも、そういう力があったら便利かもね。あなた如きにできることが、わたくしにできないわけありませんもの」
「ふふっ、すごい自信ですねえ。七菊さん。もう勝った気でいらっしゃるのですね」
「当然でしょう? わたくしは、九賀野七菊なんですから」
七菊は、まるで自分は無敵と言わんばかりに笑った。
「では、参考までに、僕がこの能力を得た経緯についてお話ししますね。少し退屈な話かもしれませんが、何かヒントが隠されているかもしれませんので辛抱強く耳を傾けることをお勧めします」
「わかったわ。聞いてあげるわよ」
「では、改めて自己紹介から。僕の本当の名前は四童子鬼灯。北廿区 金鳳花村 四藻木という小さな集落で『よもぎ医院』を経営する四童子竜胆と百合の息子で、四つ歳の離れた姉の瑠璃との四人家族でした。まあ、この件は何度も聞かされたでしょうから、その後は割愛しましょう。父を殺され母を失い孤児になった姉と僕は人買いに騙されて、姉は遊女として僕は男娼として売り飛ばされてしまいました。僕が売り飛ばされた店は、昔で言うところの陰間茶屋の西洋版みたいな店でした。男色は初代皇帝の千時丸藤樹 様によって禁止令が出され厳しい取り締まりが行われたというのに、人間の性欲というものはどうにもこうにも抑えきれないようですねえ。表向きに美少年に春を売らせる店はなくなりましたが、皆、うまく国家警察の目を搔い潜って金儲けしてるのですよ。僕が売られた店なんて、商店街の中にある普通の純喫茶ですもん。普通に八百屋とか金物屋とかある商店街に紛れてるんですよ。本当、薄汚ねえ場所ですよ。立派な医者に成って貧しい人々を救うことが僕の夢だったのに、なんで、僕、女装させられて臭えじじい相手にこんな辱めを受けなきゃならないんだろうって思ってましたよ。最初の頃はよく自殺未遂したけど見つかっちゃって折檻部屋で拷問受けてた僕ですけど、もうこの地獄から逃れることができないんだと悟った代わりに心が亡くなっちゃって。気付いたら、店の看板娘に成ってて、ふふふっ。人間堕ちるところまで堕ちると何も怖くなくなっちゃうんですよねえ。あはっ。女装にもすっかり慣れて、今じゃあお気に入りですよ。そこいらの小娘より僕の方が可愛いしねえ。客も最初はせいぜい小金持ち程度の人だったんだけど、僕の店での人気が上がるにつれて、政治家、財界人、官僚が僕を指名するようになったんですよ。すごいでしょう? この国を牛耳ってるお偉いさんがさあ、僕のこの愛らしい姿と話術に乗せられて極秘事項を喋ること喋ること。だから、僕、情報通なんですよ」
「あらら、なんか雪、激しくなってません? これは積りそうですねえ。七菊さん、あなたと初めてお会いした日もこんな大雪の日でしたねえ。懐かしいなあ。そうそう、僕ね、あの時、七菊さんに『命の受け渡しの儀式』をさせるために必死だったから、ちょっと嘘吐いちゃった。僕、あの時『六郷航太 様の愛玩動物』って言ったでしょう? あれは嘘。まったくの出鱈目ってわけじゃないんだけど、嘘に中に真実を混ぜるって感じ? 実際、僕は六郷航太 様にはお会いしたことがないし六郷のお屋敷で働いていたというのも嘘」
「ちょっと待って。それでは、あなたは何処から六郷の情報を入手していたのよ? だいぶ詳しいようだったけれど」
堪らず七菊が口を挟んだ。
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