死んでも死んでも死に切れない

りく太

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「貴方のギフトはなんなの?」

「死なないことです!いや、正確には“ちょっとやそっとじゃ死なない”だけなんですけど、つまり……超・働けます!」


元気とやる気が面接の命、って村長が言ってたから、笑顔でいったのに――なぜその顔だ、面接官。


「体が頑丈なのはいい事だけれども…うちみたいな女の子の笑顔を売りにした喫茶店だと、丈夫さはあんまり必要ないのよね…」


私だって笑顔の可愛い女の子だ。現に、ほら、笑顔にしてるではないか。

「申し訳ないけど、ちょっとうちの雰囲気には合わないから…今回はごめんなさいね」


笑顔を売りに……うん、もういいや。


「そうですか…残念ですが、また機会があれば宜しくお願いします。」


店を出た瞬間、はぁ…と口から大きなため息が出た。ため息をつくと幸せが逃げるというが、先に幸せが逃げたからため息が出るのであって、ため息ばかりをついているから幸せが逃げたのではない。鶏が先か卵が先か――いや、ため息が先だった。

この面接に賭けていた分、虚しさが刺さる。鼻の奥が少しだけツンとする。


私は冒険者ギルドに登録をしおり、攻撃スキルはないけれども持ち前の体の頑丈さを生かし薬草や鉱石などの収集や荷物の運搬など細々とした雑用で生計を立ててはいる。非常にお金に困っているというわけではないが、正直本気で転職したい。
理由は簡単、これ以上危険な仕事をしていたくはないのだ。

私だってまだまだぴちぴちの乙女、そんな汗と泥にまみれた体力勝負な仕事から足を洗い、給与は多少下がるが安心安全なウェイトレスになりたかったのだ。
なにより、あの店の制服可愛かったし…

夢を見て応募したウェイトレスの仕事。冒頭に戻るが、見事玉砕でした。


本当の事をいうと、今日は酒を飲んでそのまま倒れるように寝たかったのだが、働くもの食うべからず。手持ちにまだ余裕はあるものの、働けるうちに働かなくてはすぐにお金がなくなってしまう。ワープア辛い。
これが凄腕冒険者や魔法使いな一発逆転の大きな仕事を貰えるのだろうが、私はちょっと人より体が丈夫な一般人。
セコセコと薬草を採取したりするのが関の山。


この世界では、人は生まれ持って1つ、神からの贈り物(ギフト)という能力を持っている。
一度見たものは全部記憶できるといった能力から、火炎系の魔法が使える攻撃に特化した能力など人によって授けられたギフトは様々である。

私のギフトは人よりちょっとだけ体が頑丈なことである。とはいえ、風邪は引くし、膝も擦りむく。完璧なギフトじゃない。ほんと、なんで私のギフト、金銀財宝錬成とかじゃなかったの?

本日二度目のため息をつき、暗い気持ちを引きずるようにトボトボと冒険者ギルドを目指す。
あ~簡単で賃金が高いラッキー求人でてないかな~…



---------
 


ギルドは今日も騒がしい。吠えるような笑い声と金属音、そして男たちの汗臭さが混ざって、空気すら重い。数日前まではこんな職場とおさらばして、女の子のフローラルな香りとパンケーキの甘い匂いに包まれて働くつもりだったなな…これも、それも、全部、面接官の見る目のなさが原因だ。
私のギフトがウェイトレス向きではないとは自分でも思うが、もしかしたら私自身の能力がめっちゃどハマりするかもしれないではないか…とりあえず雇ってみようという思いっ切りの良さがあの面接官にはなかった!

なんて自分のギフトを棚に上げて、ダメだった理由を他人に押し付ける。クズの思考だろうが、とにかく私のせいではないと心を落ち着かせながら、壁に貼られたクエスト一覧を確認していく。

ドラゴン討伐、無理。

新しいダンジョンの攻略、絶対無理。

薬草の採取、出来ないことはないけどこの薬草は時間だけかかって報酬が少ないから…できればやりたくないな…でも、とりあえずキープしとこ。

ざっと壁に貼られているクエストを確認したが、私が達成できるもので良い条件のものがない。まぁ今日はやれそうなものがあっただけマシかな。
仕方ない、先ほどキープした薬草採取でもするか。一食分にはなるだろう。

本日何度目かのため息をつき、採取クエストの紙を受付に持っていく。


「すみません、このクエストお願いしたいのですが」

「はいは……あっ、ニアさん!やっと来てくれました!ずっと待ってたんですよ!」


いつもは事務的にクエスト受付をしてくれるギルド職員が私を確認した途端やけに大袈裟な反応をしてきた。


「あ、クエストの受付ですよね。…このクエスト受けてもいいですけど、他にだいぶ条件の良い仕事があって…体力や体の丈夫さ自信がある女性向けなんで、ぜひニアさんに受けていただきたいと思って置いておいたんですが…受けてくれませんか?」


私?今、私、待たれてた?人生初の“指名依頼”ってやつでは?なんて浮かれかけたが、それでは格好がつかないと思い冷静を装った。


「いや、ちょっとそれだけの情報だと受けるも受けないも判断つかないですし…」

「そうですよね、クエスト内容はこんな感じですよ」


スッと手元に依頼用紙が渡された。私に当てはまる好条件の依頼?そんなもの、一度だって取り置きしてもらえてたことなんてないが?と疑問に思いながらも確認する。

【身の回りの世話をしてくれる人募集】
条件:体の丈夫さに自信がある女性
※若い女性歓迎
※電撃耐性があるとなおよし

期間:達成期間は問わない
※1日でクエストを達成できる可能性有


「内容的にハウスメイド?ただ1日で達成できる仕事とはなんでしょう?」

「多分客人をもてなす間、臨時で使用人を増やしたいとかかなって。詳細はギルド長にしか伝えられてないんですよ。これ以上の情報はないですが、いかかでしょうか?」

「いかがでしょうかといわれても、この内容だけだとちょっと怪しい気がして…」


ただのハウスメイドに電撃?……なんで?怪し過ぎる。私はやんわり断ろうとした。


「ギルド長が了承したので、そんなに怪しい仕事ではないとは思いますよ。依頼主はあのペルクナス将軍家らしいですし」

それにほら報酬も…と指差された先は、報酬額の記載欄。

いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん…ん?ん??


「あ、これ受けます。私がやります」

「ありがとうございます。では受付しますね~」


金額に釣られたわけじゃない。困ってるなら助ける、それが冒険者だ。うん、そう。たまたま報酬が高かっただけ。
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