死んでも死んでも死に切れない

りく太

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トール・ペルクナス将軍
古くから国の要ともいえる強大な武力に特化した一族。エリート中のエリート家系ではあるがペルクナス将軍は分家筋で、己の能力で将軍という地位まで上り詰めた努力家。先の戦争でも多くの武功をあげた。怒りの炎で体を纏い、ギフトである雷を使い戦場を駆け巡る姿はまるで雷獣のよう。

と以前、噂で聞いたことがある。

安直ではあるが将軍というくらいだし、多分ゴリマッチョだと思ってた。この街で最強の冒険者もゴリマッチョだし。
だから市場で見かける絵姿は、英雄を親しみやすくするため、ちょっと、いやだいぶ盛ったイケメン画かと思っていた。

いやでも、現実は奇なり。
サラサラの銀髪に切れ長の琥珀色の瞳。凛とした美貌が並ぶその顔に、親しみやすい柔らかい表情が妙に似合っていた。

誰がって、目の前にいるペルクナス将軍が。


------


若くて体が頑丈な女性募集というよくわからないクエストを達成するため、ペルクナス将軍の屋敷に向かうと使用人一同大歓迎ムード。
なぜだ、そんなに困っているのか?

門も廊下もピカピカ。柱とかもやたら彫ってあるし、歩いてるだけでちょっと緊張する。というかこの屋敷…無駄に広すぎない? 私ひとりで掃除しろとか言われたら、マジで泣くやつ。など無駄なことを考えつつ、長い長い廊下を進んだ先に一際豪華な扉があった。
私を案内してくれた初老の使用人は、扉をノックし「ギルドに依頼していた件で女性が来ましたのでお通しさせて頂きます」なんて渋い声で扉の向こうに話しかけた。
暫くすると「通せ」とこれまた綺麗な声が聞こえてきた。

豪華な扉を抜けるとどうやら仕事場のようで、大量の書類に埋もれている美男子がいた。


「トール様、今回依頼していた件を対応してくださるニア様です。ニア様、こちら依頼人であり我が主人のトール・ペルクナス将軍です」


使用人が依頼主に私を、私に依頼主を紹介した。
って、将軍自ら依頼を出したの?ただのハウスメイドの臨時職員の募集を?
やはり国の英雄となると、自分のテリトリーに入れる人間を自分で判断するのか…それはとってもいいことだとは思うが、そんな仕事まで自分で抱え込んでしまうとは顔に似合わず不器用な人なのかもしれない。


「トール・ペルクナスだ。君のような女性にこの依頼を受けて貰えた安心したよ。正直、こんな募集だともっと、その…もう少し…年季の入った人が来るかと思っていた。いや、まさかこんな若い人が来てくれるとは。」


年季の入った人?使用人は慣れた人の方が便利だと思うけど…お屋敷ごとにルールが違うだろうし、中途半端に知ってる人ってより、未経験者の方が教えやすいのかな?若い女性希望って書いてたし。


「あの仕事を受ける前に1つ質問したいのですがよろしいでしょうか?」


ハウスメイドで間違い無いだろうが、やけに報酬が高い。もし護衛や外部からのアタックを受け止められる戦闘系ハウスメイドを御所望の場合、申し訳ないが私には扱いきれない。一応確認せねばと思い質問を切り出すとペルクナス将軍は少し眉をあげ「なんだ?」と質問を聞く姿勢を見せてくれた。


「今回の依頼、高額な賞金が設定されています。その…ないとは思うのですが、攻撃系ギフトが必要な依頼ではないですよね?」

「あぁ、そのことか。勿論違う。もし第三者を攻撃する必要があるならば、ギルドに依頼せず自分で行った方が確実だし足がつかないからな。報奨金が高額なのは仕事への対価と、この依頼の内容を多言をしないようにという口止め費用が含まれているからだ」


一部過激な発言があったが、ペルクナス将軍は何事もないように穏やかに答えてくれた。
口止め料か…たしかに天下の大将軍家で見たこと聞いたこと知ったことをベラベラと言いふらせては問題だろうし。
金額は私の今まで受けていたショボくれたクエストに比べたら天と地ではあるが、将軍家からしたら端金なのかもしれない。


「人のお世話をするのは初めてなもので慣れておらず、ご迷惑をお掛けする事が多々あるとは思いますが、精一杯勤めさせて頂きますので宜しくお願いします」


ならば受けるしかないだろう。
憧れの安心安全なお仕事、かつ高額報償!私そういうお仕事大好きです!!

嬉しくて思わずニコニコしてしまったらしく、そんな私にペルクナス将軍は少しほっとしたように右手を差し出しながら


「本来なら、こんなことは誰かに頼むべきではないのだろう。だが今の私には、それを以外の道がない。どれだけの間になるかはわからんが、宜しく頼む」


と手を差し出してきた。

シェイクハンド!
こんな友好的な将軍のもとで、ハウスメイド!なんて素敵なのだろう!!
こちらこそ宜しくお願いします!

そんな気持ちを込めて将軍の右手を強く握りしめた。
将軍の手は剣を握る手で少しゴツゴツしており、少し思ったより暖かかった。

そう思ったのも束の間、ビリッ、という軽い音がした。直後、脳が焼き切れるような衝撃が全身を貫いた。肉が焦げる匂いが鼻を突き、視界が白く染まる。

あ、これ死んだ…

そこで私の意識は途切れた。
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