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3.クエストを引き受けよう
しおりを挟む「…だ…っ…!!!」
「い…で………」
何か言い争ってる声が聞こえる。
あー…起き抜けの頭にその大声は厳しい…
目を開けると、そこは知らない天井。背中にはふわふわなカーペット。どうやらあの後倒れたらしい。
まぁそうなるわなと、上体を起こす。
「死んだぞ…!俺が触れたらやっぱり死んだぞ!!なにを持って大丈夫だと言ったんだ!!」
「…即死だったのが幸いですね。ここまで焦げていたら遺体の判断もつきませんし、何より依頼内容が外部に漏れる心配はありませんからね」
「いやなにが幸いなんだ?!もう嫌だ!!」
先ほどまでキリリとしていた美男子はおらず、今は頭を掻き毟りながら泣き喚いている男性がいる。
もしかしてあの人、ペルクナス将軍?
なんか髪の色とか服装とか同じだけど…え、うそ…
ペルクナス将軍の変わりようにも驚いたが、あの初老の使用人、冷淡すぎない、、?
「こわ…」
思わず考えていた事が口から漏れていた。
その瞬間、将軍と使用人が驚いた表情をしながら私を見てきた。
将軍は「よかった…生きてた、、!」と喜び、使用人は不思議そうな顔で私を見ている。
「ニア様、ご無事でしたか。誠によかったです」
なにがよかったじゃ。完全に葬る気満々だっただろお前。
「やはりギルドから推薦された方。電撃耐性ギフトをお持ちなのですね」
「電撃耐性…?いや、違いますが」
「?では、攻撃値を最小に抑えられる防御ギフトでしょうか?」
先ほどからなにを言っているんだ?
そんなギフトを持っていたら、薬草採取なんてせずもっと真っ当な冒険者してるわ。
「いや…違いますけど…」
「ならどんなギフトをお持ちなのでしょうか?」
「人より体が頑丈というか、なんというか…」
「つまり?」
この使用人グイグイくるな…こっちはさっきまで丸こげだったんだぞ。もっと優しくしろ!
でもまぁ、職場によっては授かったギフトごとに仕事内容を割り振られることもあるし…
「その、私…死に切れないんです…」
私が授かったギフトは「死なない体」だ。
風邪もひくし怪我もする。たとえば腕が一本なくなっても、すぐに生えてくるわけじゃない。だけど致命的なダメージを受け、命の灯が完全に消えたその瞬間、私は何度でも、生き返る。
体はリセットされて元通り!老いもするし痛みもある。恐怖だって、ちゃんと感じる。でも、結局は死なない。
……死なないって、慣れるとブレーキ壊れるんですよ。最初は怖かったけど、痛みなんて、その場限り。どうせ復活する。って思っちゃえば、まぁ、ね。
便利なギフトだって言う人もいる。でも私に言わせりゃ、死ぬほど痛い思いをしてまで生き返ることに、そこまでの価値があるとは思えない。
けど、他に取り柄もない私にとっては、唯一の武器であり、飯の種だったのも事実。
だから今までは、死ぬほど危険な場所に行って、死ぬほど死にながら薬草採取系のクエストをこなして、それでなんとか食いつないできた。
身体は何度でも戻る。でも、心の方は、確実に削れていく。まじでもう、痛いのも苦しいのも嫌だ。
だから私は思うのだ。
——死なない仕事がしたい。よし、転職しよう。と。
「……というわけなんです」
「なんと素晴らしい!探していた以上の逸材ですね!」
「いや、だからもう死にたくないので。このクエスト、辞退でお願いできますか?」
「貴方以上の適任者はおりません。それに先ほどもペルクナス様がお伝えした通り、報酬に口止め料を入れております。このクエストに関する全ての情報を外部に洩らされては困るのです。つまり、その少しでもこの案件に関わったニア様をただでこの屋敷から出すわけにはいきません」
「…」
「死ねない体となると処分が少し厄介ですが…それならこのクエストに挑んで頂いた方が良いとは思いませんか?」
何を言っているんだこの使用人は…
将軍家ドブラックじゃないか…
いやでもこの目つき、多分断ったら本気で殺される。いや死なないけど。
はあー……どうせ私は死なないしさ。痛いのなんて一瞬だし、そのあと寝てりゃ治る。しかもこの報酬、一生分とは言わないけど、十年働かなくていい金額だしなぁ…うん、やるしかないよね。うんうん、これはもう決定。仕方ない。さっさと報酬をもらってこんなところおさらばしてやろう!決定!
「わかりました…私は何をしたら良いのですか?」
「おや?クエスト内容を理解されてるわけではないのですが?てっきりご存知なのかと思いました」
ご存知なわけがない。なんのことだ?
困った顔が前面に出ていたらしく、いつの間にかに出会ったばかりのような冷静な美男子になったペルクナス様がクツクツと笑った。
「爺、下がれ。ここからは俺から説明する。どこから説明すべきか…とりあえず紅茶でも飲みながら仕切り直そうじゃないか」
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