犠牲を捧げる

ミルクティ

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序章(再)

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はあ、はぁはぁ と

自分の呼吸音だけが聞こえる夜道を走り続ける。
あれからどれくらいだったのだろうか。
シンとした住宅街は、一変して森の中へと姿を変えていた。月光だけが灯りの源だ。

とにかくあの家から離れたくて走り続けたが、知らない間に森に迷い込んだのかもしれない。

やばい、
この思考が脳裏をよぎり、回れ右して疾走した。

森はまずい、いくら住宅街が近いからといっても、得体の知れない獣が住んでいるかもしれないのだから。

再び、疲れた体を走らせたせいで、限界はすぐに見えた。
目の前には、大きな塀がそびえ立っている。
全長2メートルを超えるような壁に囲また私は、きっと蛇に睨まれたカエルのように小さく見えただろう。

どうしたものか、あたりは完全に森であり、何者かに襲われる気配こそないものの、特有の危機感を煽るような気配を発している。

ここで野宿するのか、少し、いいや、かなり気が引けるが、もちろんあの悪魔の家よりはマシだ。

でも壁があるってことは誰かの敷地内かもしれない。そうだとしたら流石に野宿はまずいだろう。
かと言って下手に動いたら、もっと迷子になるかも知れない。
考えて、その塀を再び見上げたその時、ガサッという音とともに、愛らしい声が聞こえてきた。
「ここで何をしているの?」


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