NEVER☆AGAIN~それは運命の出会いから始まった~

ハルカ

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第5章『要求する魔物』

1話

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 朝、町を出て、ひたすら広野を歩き続けること3時間。
 日も高くなり、もうすぐ昼になろうとしていた。

 2人は……というと、相変わらずタクヤが1人で何やら話し続け、イズミはそれを鬱陶しそうにタクヤを見ることもせずに聞いていた。
「……お前さ、よくそんなに話すことあるな……」
 やっと口を開いたかと思うと、イズミは呆れた顔でちらっとだけタクヤを見た。
「何で? そりゃ19年も生きてんだから、話すことぐらいいくらでもあるよ。だって、イズミと会ったのなんてまだ最近じゃん。……そっか、俺ら、まだ始まったばっかだもんなっ。でも、何か色々あったから、もっとずっと前から一緒にいたみてぇ。なっ? そう思わねぇ?」
 タクヤは嬉しそうにイズミを覗き込むようにして見るが、イズミは大きく溜め息をついただけであった。
「なぁ、イズミは何で何も話さないんだよ。イズミだって何か話すことぐらいあるだろ?」
 タクヤはイズミの態度を気にすることなく不思議そうに首を傾げる。
「話したくないから。以上」
 イズミは無表情にタクヤを見ることなく答える。
「言うと思ったー」
「なら聞くな」
 今度は鬱陶しそうに答える。
 タクヤはちぇーっと口を尖らせると、そのまま黙り込んでしまった。
 今までずっと1人で旅をしてきたタクヤにとって、イズミと一緒に旅をできることが、イズミと一緒にいられることが本当に嬉しかった。
 しかし、相変わらずのイズミの態度に少し寂しさを感じていた。
「どうした?」
 暫くして、ずっと黙り込んだままのタクヤを見て不思議に思ったのか、珍しくイズミから話しかけた。
「別に」
 タクヤはむくれた顔で一言だけ答える。
「珍しいこともあるもんだな。喋り疲れたか、それともなんか拾い食いでもして腹でも壊したんだろ」
 イズミは面白そうにタクヤを見ている。
「何でもないよっ」
 タクヤは頬を膨らませると、ぷいっと横を向いてしまった。
「なんだ、反抗期か?」
 イズミは更に面白がってニヤニヤとタクヤを見る。
「いーっだっ! イズミには教えてやんないっ」
「ガキ?」
「うるさいうるさーいっ! もうっ、ほっといてよっ!」
 タクヤは顔を真っ赤にしてイズミをむくれた顔で睨むと、そのまま走り出してしまった。その方向の先には町が見える。
 イズミは大きく溜め息をつくと、自分もその町へと向かった。



 ☆☆☆



 タクヤは町の中に入ると、何かおかしなことに気が付いた。
 まだ、昼間だというのに町の中には誰もいなかったのだ。
 そして、物音すらしない。まるで誰も住んでいないかのように。
 しかし、辺りを見渡しても魔物に襲われた様子は全くない。
「どうなってんだ?」
 人の気配は感じられる。どうやら建物の中からこちらの様子を窺っているようだ。
 タクヤは神経を集中しながら周りを見回す。
 しかし、なぜこのような事態が起こっているのか全く分からない。
「おい、どうした?」
 少ししてイズミが追いついた。
 イズミもこの町の異変に気付いているようだった。周りを注意深く見ている。
「一体どうしちゃったんだろう、この町。魔物に襲われたって訳じゃないみたいだけど……」
「建物の中から俺達のことを探っているみたいだな。何かあったのか……」
 2人はゆっくりと更に町の中心部へと進む。
 空気が張り詰めているのが体に伝わってくる。

 町の中を歩いているうちに、建物を直してある所を何箇所か見つけた。
 魔物に襲われたのか、それとも地震か何かあったのか。
 辺りを見ながら歩くが、やはり人の姿は全くない。
 この時間ならもっと人々が出歩いていてもおかしくない。
 一体何が起きたというのか、この町に。
 やはり、魔物に襲われたのであろうか……。

 暫く歩くと、町の中央らしき広場に出た。
 真ん中には噴水がある。壊れかけてはいるが、今もちゃんと水が流れている。
 その水が流れる音だけが聞こえてくる。
「綺麗だな……」
 噴水の周りに溜まっている水を眺め、イズミが独り言をこぼす。
 その言葉は、噴水が人の手によってきちんと手入れされていることを意味した。

「あの……」

 突然後ろから声をかけられた。
 2人は驚いて振り返る。
「あの、もしかして、勇者……ですか?」
 振り返ると、そこには15、6歳の小柄な少女が両手を胸の辺りでギュッと握り締め、こちらをおずおずと見上げていた。
 暗めの茶色いショートヘアで同じく茶色い瞳。昨日出会ったルカとは違い、大人しそうな少女である。
「え? ……うん。そうだけど?」
 タクヤは不思議な表情を浮かべながら答える。
「やっぱりっ! 良かった! ずっと勇者がこの町を訪れるのを待っていたんですっ!」
 少女は急にパァッと目を輝かせ、喜びの声を上げた。
「えっ? 待ってたって、どうして――」
 タクヤが少女に話しかけるのと同時に、今まで建物の中に潜んでいた町の住人達が一斉に出てきた。
「っ!?」
 タクヤとイズミは何が起こったのか分からず、辺りを見回すだけであった。
 町の人々は2人を囲んだかと思うと、突然タクヤの腕を掴み、どこかへ連れて行こうとした。
「ちょっ、何すんだよっ!」
 タクヤが反抗して振り払おうとするが、町の人々は強引にタクヤをそのまま引き摺るように引っ張る。
「やめろってっ! ……イズミっ!」
 タクヤが必死に手を伸ばそうとするが、イズミには届かなかった。
 そして、そのまま連れ去られてしまった。

 一瞬の出来事で、一体何が起こったのか分からず、イズミはその場に1人立ち尽くしていた。
「何なんだ……一体……」
 呆然と再び静かになった町を眺め、独り言をこぼす。
 そして、なんとか平静を取り戻すと、落ち着いて今の状況を考えた。

(……このまま放っておくか。アイツがいなくても別に構わない。元に戻るだけだ。今までずっと1人で生きてきたんだ、1人でずっと……)

 ふと、タクヤと一緒にいたこの3日間のことが思い出された。
 常に元気で笑ったり怒ったり泣いたりと、よくコロコロと変わるヤツだった。
 鬱陶しいと思いながらも、自分も同じように感情を表していたことに気付く。
 今まで誰とも関わらず、冷めたような生活だった。
 それがタクヤに出会ってからというもの、怒ったり馬鹿にしたり呆れたり……。
 自分も人間なのだということを思い出されたような日々だった。まだたった3日間だというのに――。

(俺も変われるだろうか……)

 もう一度、タクヤが連れ去られた方向を見つめる。
「ちっ、面倒くせぇな」
 舌打ちをして溜息をつきながらぼそりと呟く。そして仕方なさそうに歩き始める。
 しかし、表情は何か吹っ切れたかのように、イズミ自身気付いていなかったが、晴れ晴れとしたものになっていた。


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