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第6章『ペンダント』
7話
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そのままイズミは黙ってタクヤの腕を見つめているだけであった。
イズミが何をしようとしているのか全く分からず、タクヤも黙って自分の腕を見ていた。
「え?」
数分後、今まで魔剣から伝わっていたものが段々と弱くなり、手の痺れもなくなっていったことに驚き、ぼそりと呟く。
「…………」
イズミは何も答えず手を離した。
「今、何したんだ? 何か分かったのか?」
タクヤはまだ剣を握り締めたまま、顔だけ動かしイズミを見る。
「別に。……それから、こいつには手出しするな。どうやらこいつは昔、『神霊樹』と呼ばれていたものだ」
イズミは右手で左手を摩りながら、ちらっとだけ木を見ると再びタクヤを見て無表情に答えた。
「『しんれいじゅ』? 何でそんなこと分かったんだ?」
イズミの言葉でタクヤは魔剣をしまうが、不思議そうに首を傾げる。
「……『神霊樹』っていうのは、昔、神が宿っていると考えられていた木のことを言うんだ。まぁ、実際神なんてものは存在しないけどな。……ただ、こういった木には不思議な力があって、下手に何かしたりすると、とんでもないことが起こったりするから、関わらない方が身のためだ」
イズミは相変わらず表情を変えることなく淡々と答える。
「ふ~ん……よく分かんねぇけど、触らぬ神に祟りなしってことか。……ていうか、だから何でそんなこと分かったんだよっ」
タクヤはイズミの話を不思議そうに聞いていたが、また誤魔化されたことに気付くと、ムッとしてイズミを睨んだ。
「秘密」
「まぁーったそれだっ! もう秘密秘密って、いっつもそれじゃんっ!」
イズミはタクヤから目を逸らして答える。そして、そんなイズミをいつものことだと思いながらもタクヤは真剣に怒っていた。
「少し調べてみる必要があるな」
そう言ってイズミはタクヤを無視して、中央の木に向かって歩き出した。
「また誤魔化したっ!」
タクヤはムッとしながら睨み付けるが、何をするのか気になりイズミの横へと移動した。
「どうすんの?」
「お前に言っても分かんねぇよ」
タクヤが横から覗き込んでくるのを鬱陶しそうに答える。
「何だよー。そんなの分かんないじゃんかっ。俺だって聞けば分かるかもしんねぇじゃん」
「面倒くせぇ……」
「何だとぉーっ!」
イズミから何とか聞き出そうと頑張るタクヤだったが、またも鬱陶しそうに返され再び激怒していた。
「何してんの?」
暫くむくれていたタクヤであったが、やはりイズミのやることが気になりもう一度覗き込む。
イズミは左手を木の幹に当て、何やら難しい顔をしていた。
「……コイツを探ってんだよ。ま、お前に説明してもどうせ分かんねぇから無駄だろうけど?」
タクヤの言葉に呆れた表情でちらっとだけ見るが、再び視線を木に戻し、馬鹿にしたような口調で話す。
「もうっ。すぐそうやって人をバカにするのやめろよなっ。でも、そんなんで何か分かんの? イズミの左手ってどうなってんの?」
タクヤは頬を膨らませて怒るが、すぐにまた不思議そうな表情でイズミの手元を見る。
「教えない」
「だーっ! もうっ、どうせ言うのが面倒臭いだけだろっ!」
「…………」
タクヤが喚き散らす横で、イズミは呆れた表情で横目にタクヤを見ると大きく溜め息をついていた。
「お前の剣なら何とかできるかもしれない」
木に当てていた左手を離すと、イズミはぼそりと呟くように言った。
「え? 俺の剣? 何で?」
タクヤは納得いかないような表情でイズミを見る。
「俺の力は魔物にしか効かない。コイツは魔物じゃないからな。でもお前の剣なら何とかできるかもしれない」
「ちょっと待てよっ。何とかって、さっき下手に何かするととんでもないことが起こるって言ったのはイズミだぞっ」
イズミの言葉にタクヤは更に納得いかない顔をして反論する。
「だから今調べたんだよ……。このままこの森を探し続けても埒が明かねぇ。『大事なもの』とやらを持っていったとかいう魔物を見つけようにも、この森全部が魔物化しちまってるからな。こんなでかい森、全部探していられるか。面倒くせぇ……。つまり、この森をなんとかしなきゃならん訳だが、全てはこの木が原因なんだ。コイツがこの森を魔物化させている。だったらコイツを何とかすれば、この森も変わるかもしれない」
「攻撃しちゃっても大丈夫なわけ?」
イズミの話を黙って聞いていたタクヤであったが、やはりまだ納得いかず訝しげにじっと見る。
「知らん。俺もどうなるかまでは分からん」
「……そんなんでいいのかよ」
自分の問いに平然と答えるイズミに、タクヤは珍しく呆れた表情をする。
「お前はコイツをなんとかしろ。お前の剣なら何か知ってるかもしれないからな。周りのことは俺がやる」
呆れた表情で見ているタクヤを無視して、更に淡々と言い返す。
「なんとかって……」
「知るか。自分の剣に聞け。お前はそいつの主人だろ」
タクヤが困った顔で見るが、鬱陶しそうに答えるだけであった。
「分かんねぇよ。だって今までだって何となく感じたことはあったけど、どうすればいいとか魔剣の声みたいなものを俺は聞いたことねぇもん。俺の師匠は頭に直接伝わってくるからって言ってたけど……」
タクヤは口を尖らせながら話す。
「お前、本当にそいつの主人か?」
「うるせぇ」
イズミに呆れた顔で見られ、タクヤは更に口を尖らす。
「畜生……なんとかすればいいんだろ」
タクヤは頬を膨らませながらも、念を込め魔剣を出し、目の前の巨大な木を強く睨み付ける。
「援護ぐらいしてくれるんだろ?」
真剣な表情でイズミをちらっと見る。
「必要ならな」
「よしっ」
イズミが無表情に答えるのを見ると、もう一度木を睨み付け気合いを入れる。
魔剣を両手で強く握り締めると、タクヤは気を集中させ、魔剣の『声』を必死に感じ取ろうとした。
(頼む、教えてくれ。俺を認めてくれたんなら……)
必死に祈る。そして――。
「よしっ! 分かったっ! ……そこだっ!!」
ニヤリとすると、タクヤは巨大な木の幹のある部分を目掛けて思い切り魔剣を突き刺した……。
イズミが何をしようとしているのか全く分からず、タクヤも黙って自分の腕を見ていた。
「え?」
数分後、今まで魔剣から伝わっていたものが段々と弱くなり、手の痺れもなくなっていったことに驚き、ぼそりと呟く。
「…………」
イズミは何も答えず手を離した。
「今、何したんだ? 何か分かったのか?」
タクヤはまだ剣を握り締めたまま、顔だけ動かしイズミを見る。
「別に。……それから、こいつには手出しするな。どうやらこいつは昔、『神霊樹』と呼ばれていたものだ」
イズミは右手で左手を摩りながら、ちらっとだけ木を見ると再びタクヤを見て無表情に答えた。
「『しんれいじゅ』? 何でそんなこと分かったんだ?」
イズミの言葉でタクヤは魔剣をしまうが、不思議そうに首を傾げる。
「……『神霊樹』っていうのは、昔、神が宿っていると考えられていた木のことを言うんだ。まぁ、実際神なんてものは存在しないけどな。……ただ、こういった木には不思議な力があって、下手に何かしたりすると、とんでもないことが起こったりするから、関わらない方が身のためだ」
イズミは相変わらず表情を変えることなく淡々と答える。
「ふ~ん……よく分かんねぇけど、触らぬ神に祟りなしってことか。……ていうか、だから何でそんなこと分かったんだよっ」
タクヤはイズミの話を不思議そうに聞いていたが、また誤魔化されたことに気付くと、ムッとしてイズミを睨んだ。
「秘密」
「まぁーったそれだっ! もう秘密秘密って、いっつもそれじゃんっ!」
イズミはタクヤから目を逸らして答える。そして、そんなイズミをいつものことだと思いながらもタクヤは真剣に怒っていた。
「少し調べてみる必要があるな」
そう言ってイズミはタクヤを無視して、中央の木に向かって歩き出した。
「また誤魔化したっ!」
タクヤはムッとしながら睨み付けるが、何をするのか気になりイズミの横へと移動した。
「どうすんの?」
「お前に言っても分かんねぇよ」
タクヤが横から覗き込んでくるのを鬱陶しそうに答える。
「何だよー。そんなの分かんないじゃんかっ。俺だって聞けば分かるかもしんねぇじゃん」
「面倒くせぇ……」
「何だとぉーっ!」
イズミから何とか聞き出そうと頑張るタクヤだったが、またも鬱陶しそうに返され再び激怒していた。
「何してんの?」
暫くむくれていたタクヤであったが、やはりイズミのやることが気になりもう一度覗き込む。
イズミは左手を木の幹に当て、何やら難しい顔をしていた。
「……コイツを探ってんだよ。ま、お前に説明してもどうせ分かんねぇから無駄だろうけど?」
タクヤの言葉に呆れた表情でちらっとだけ見るが、再び視線を木に戻し、馬鹿にしたような口調で話す。
「もうっ。すぐそうやって人をバカにするのやめろよなっ。でも、そんなんで何か分かんの? イズミの左手ってどうなってんの?」
タクヤは頬を膨らませて怒るが、すぐにまた不思議そうな表情でイズミの手元を見る。
「教えない」
「だーっ! もうっ、どうせ言うのが面倒臭いだけだろっ!」
「…………」
タクヤが喚き散らす横で、イズミは呆れた表情で横目にタクヤを見ると大きく溜め息をついていた。
「お前の剣なら何とかできるかもしれない」
木に当てていた左手を離すと、イズミはぼそりと呟くように言った。
「え? 俺の剣? 何で?」
タクヤは納得いかないような表情でイズミを見る。
「俺の力は魔物にしか効かない。コイツは魔物じゃないからな。でもお前の剣なら何とかできるかもしれない」
「ちょっと待てよっ。何とかって、さっき下手に何かするととんでもないことが起こるって言ったのはイズミだぞっ」
イズミの言葉にタクヤは更に納得いかない顔をして反論する。
「だから今調べたんだよ……。このままこの森を探し続けても埒が明かねぇ。『大事なもの』とやらを持っていったとかいう魔物を見つけようにも、この森全部が魔物化しちまってるからな。こんなでかい森、全部探していられるか。面倒くせぇ……。つまり、この森をなんとかしなきゃならん訳だが、全てはこの木が原因なんだ。コイツがこの森を魔物化させている。だったらコイツを何とかすれば、この森も変わるかもしれない」
「攻撃しちゃっても大丈夫なわけ?」
イズミの話を黙って聞いていたタクヤであったが、やはりまだ納得いかず訝しげにじっと見る。
「知らん。俺もどうなるかまでは分からん」
「……そんなんでいいのかよ」
自分の問いに平然と答えるイズミに、タクヤは珍しく呆れた表情をする。
「お前はコイツをなんとかしろ。お前の剣なら何か知ってるかもしれないからな。周りのことは俺がやる」
呆れた表情で見ているタクヤを無視して、更に淡々と言い返す。
「なんとかって……」
「知るか。自分の剣に聞け。お前はそいつの主人だろ」
タクヤが困った顔で見るが、鬱陶しそうに答えるだけであった。
「分かんねぇよ。だって今までだって何となく感じたことはあったけど、どうすればいいとか魔剣の声みたいなものを俺は聞いたことねぇもん。俺の師匠は頭に直接伝わってくるからって言ってたけど……」
タクヤは口を尖らせながら話す。
「お前、本当にそいつの主人か?」
「うるせぇ」
イズミに呆れた顔で見られ、タクヤは更に口を尖らす。
「畜生……なんとかすればいいんだろ」
タクヤは頬を膨らませながらも、念を込め魔剣を出し、目の前の巨大な木を強く睨み付ける。
「援護ぐらいしてくれるんだろ?」
真剣な表情でイズミをちらっと見る。
「必要ならな」
「よしっ」
イズミが無表情に答えるのを見ると、もう一度木を睨み付け気合いを入れる。
魔剣を両手で強く握り締めると、タクヤは気を集中させ、魔剣の『声』を必死に感じ取ろうとした。
(頼む、教えてくれ。俺を認めてくれたんなら……)
必死に祈る。そして――。
「よしっ! 分かったっ! ……そこだっ!!」
ニヤリとすると、タクヤは巨大な木の幹のある部分を目掛けて思い切り魔剣を突き刺した……。
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