NEVER☆AGAIN~それは運命の出会いから始まった~

ハルカ

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第14章『新たな敵』

5話

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 重たい空気と時間だけが流れていた。
 まるで、自分たちの中だけ時が止まってしまったかのように誰も動かない。
 息苦しい……。

「どういうことだよ?」

 最初に口を開いたのはタクヤであった。
 息を止めているかのような息苦しさに我慢できなくなっていた。
 先程までアオイがいた場所を凝視しながら、感情を抑えた口調で問い掛ける。
 誰に対して……と、名前を言わずとも顔を見ずとも、そこにいた全員が分かっていた。
「…………」
 その相手、カイは無表情にアオイがいた場所を見つめている。
「カイっ! なんでアイツはお前を知ってるんだよっ? どういう関係なんだっ……一体なんなんだよっ!」
 何も話さないカイに苛つき、抑えていた感情が一気に溢れ出した。
 カイに向かって怒りの感情を露に怒鳴り付ける。
「…………」
 しかし、それでもカイは表情一つ変えず黙ったままだった。
 まるで電池の切れたおもちゃのように微動だにしない。
「何も言い返すことはないのかよっ?」
 全く反応のないカイに近付くと、タクヤは胸倉を掴み、更に怒鳴り付ける。
「…………」
 顔を近付け睨み付けても、タクヤが見えているのかどうかも分からないくらいにカイからの反応はない。

「やめてよっ!」

 すると、黙ったままカイの袖を掴んでいたリョウが、泣きそうな顔をしながらタクヤの上着を掴んだ。
「…………」
 ハッとしてリョウを見ると、仕方なさそうにカイを掴んでいた手を離した。
 そして、苛つく気持ちを抑えながらその場から離れる。
「カイ兄……」
 涙が出そうになるのを我慢した様子でリョウがカイを見上げる。
 不安そうな顔で掴んでいたカイの袖を更に強く握っている。
「…………」
 全く微動だにしていなかったカイが、リョウの声で漸く反応した。ゆっくりとリョウを見下ろす。
 今にも泣き出しそうなリョウの顔を見て、カイは深く溜め息を付いた。
「俺は……ある人の指示で来たんだ」
 ぼそりと話し始める。
「ある人?」
 リョウに止められ、少しずつ落ち着いてきていたタクヤは、じっと窺うようにカイを見た。
「……さっき、アイツが言っていた『あの子』というのは……」
 3人のやり取りをじっと黙って見ていたイズミが口を開いた。
 先程のアオイの言葉。恐らくイズミはずっとそれが引っ掛かっていたのだろう。
「……俺は、その人に頼まれてここへ来た。でも、今はまだ、理由は答えられない。……だが、俺は敵じゃない。信じる信じないはお前たちの自由だ」
 一瞬イズミの言葉にびくりとしたカイであったが、答えることなく話を続けた。
 無表情に話しているが、いつもとは様子が違う。
 考えていることも全く分からない。
 ただ、その様子は何かの感情を抑え付けているようにも見えた。
「お、俺はっ、カイ兄のこと信じてるよっ。カイ兄は絶対悪い人なんかじゃないっ。絶対っ」
 そう言ってリョウは唇をきゅっと噛み締め、強い瞳でカイを見上げる。
 先程まで泣きそうになっていたとは思えないくらいに真剣で強い瞳をしていた。
「……俺は、分からない……。分からないけど、あいつはカイを嫌ってるみたいだった。俺はあいつが許せない。だから、あいつと敵対してるならっ……俺は、カイが敵じゃないって信じたい。でも、イズミを傷つけるようなことだけは、絶対に許さないからな」
 ちらりとリョウを見た後、自分もカイを信じることにした。
 まだ付き合いは短いものの、カイがリョウに嘘をつくとは思えなかったからだ。
 そして、じっとカイを見つめながら返事を待つ。
「ふっ……」
 ふとカイの口元が緩んだ。
 今までのどこか苦しそうな、感情のない顔からいつもの顔に変わる。
 そして、静かに話し始めた。
「ほんとに……いや、信じてほしいとは言わない。俺が大事なのは、あの人と、リョウだけだからな。……あの人が命令するなら、俺はお前たちを裏切ることだってあるだろう」
 何を考えているのか分からない表情で、カイはじっとタクヤを見つめる。
「なにっ!」
 漸く落ち着いた気持ちが再び怒りに満ちる。
 カッと顔が熱くなり、再びカイを睨み付けた。
「そんなっ……カイ兄っ、俺はタクヤもイズミも大好きだよ。カイ兄のことも。だから、喧嘩もしてほしくないし争ってほしくないっ! ね、お願いだよ。タクヤも、ねぇっ」
 じっとお互いを睨み付けているタクヤとカイを交互に見ながら、リョウは必死になって声を上げる。
「……リョウ。大丈夫だよ、そんなことにはならないから」
 再びいつもの笑顔に戻ると、カイはリョウの頭を優しく撫でる。
「ほんとに?」
 じっと訴えるような瞳でリョウがカイを見つめる。
「約束する」
 にこりと笑ってカイはリョウの問いに頷いた。
「……分かったよ」
 ふぅっと溜め息を付きながら、タクヤもリョウに向かって頷いた。

「俺たちを惑わすのがあいつの狙いかもしれないな」

 じっと様子を見ていたイズミが再び口を開いた。
「えっ?」
 驚いてイズミの方を振り返った。
「特に何かをする訳でもなく、散々喋って消えた……。あんたとあいつがどういう関係なのかは分からないが、俺たちと一緒にいること、あいつは知っていたんじゃないのか?」
 無表情に、しかしどこか疑うような目付きでイズミがカイを見つめる。
「さぁ? 分からないな。たとえそうだとしても、そんなことは関係ない」
 いつものように、カイは飄々と答えるだけだった。
「関係ないだとっ!」
 先程リョウと約束したばかりだというのに、カイの言葉に頭にきて再び怒鳴ってしまった。
「関係ないよ。あいつが何を言おうが。それともあいつの言葉を信じるのか?」
 余裕そうな笑顔でカイはタクヤを試すように問い掛ける。
「それはっ……」
「もう終わりにしよう、この話は。早く先に進んだ方がいい。野宿にでもなったら厄介だ」
 言葉に詰まるタクヤを遮るかのように、カイはぱんと手を打ち話を止めた。
 そしてリョウの頭を軽く撫でる。
 それに反応してリョウがじっとカイを見上げた。
「……分かった」
 なんともしこりが残るような気持ちではあったが、確かにカイの言う通りである。
 いつまでもここで言い争っている時間はない。

 不穏な空気のまま、一行はゆっくりと歩き始めた。
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