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逃げただけ
しおりを挟むダグラスはなにかを思ってか、手をギュッと握りしめながら弱弱しい声で話します。
「そして留学先で弁護士という資格について学びたいと思うようになって、必死に勉強して資格を取得した。そして、どうにか18歳のステフの誕生日に戻ってきたんだ。
でも戻ってきたらステフの結婚相手は決まっていて………ああ、僕じゃあダメだったんだと思った……でも他国に行っても僕はステフが諦められなかったんだ。これから先ステフ以外の人が見つかるとは思えない。だからせめてステフの側で弁護士の仕事をしたいと思ったんだ」
ダメだったもなにも、いない人を選べるはずがありません。
それに私は当主。相手がいないのも………なんて言い訳を並べていますが、私も逃げただけ。
結局の所、お祖母様が連れてきた婚約者候補が都合がよかったのです。
だって、幼い頃に夢見た人はもう一緒にいない。それならばと私も逃げたのです………
「なによ!
………なにが僕じゃあダメだったよ。そうよ!ダグラス以外みんな一緒だった!
僕のプリンセスなんて呼んでおいて勝手にいなくなって!!
それなのにまた私の心を揺さぶるなんてずるい!!」
私に心の内も晒さずに留学を決めたダグラス。
ダグラスがいないこと、彼以外の結婚相手を見つけなければならないことを考えたくなくて結婚してしまった私。
どちらも大事なことから逃げたのでしょうね………
「ごめん!ステフごめんね……
でも僕にはどうしてもステフ以外のプリンセスなんか現れないんだ。
いや、ステフ以外はいらない。
だからステフ、僕のプリンセス。僕と結婚して。
ずっと僕だけのプリンセスでいて」
いつからか、涙を流す私の事を優しく、傷つけないように抱きしめながら、頭の上でそんな言葉を囁くダグラス。
「いや……
いやよ…だって私は離婚歴のある女性よ。ダグラスならもっと他の女性を選べる……その方が将来もきっと明るいわ……
だから私なんか選んじゃ」
「ステフ!
離婚歴があったって、なくったって、僕は君以外の女性を望まない。
そんな事どうだっていいんだ。ただ君がいいってこと以外はどうだっていいことなんだよ。
ステフが好きなんだ。君じゃなきゃダメなんだ。
だからどうかお願いだ。僕のお嫁さんになるって言って」
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