幼い子が父に会いたいと夫を訪ねてきました。この国は不倫はご法度の国。これから先起こることは全部ご自身のせいですよ？

1年後……（ジョシュエル）①

あれから1年後……
僕は平民となった家族からも受け入れられず、仕事口も見つけれられないまま、困窮者用の炊き出しを食べて生活していた。毎日は出されない炊き出しを待ちながら生活する日々。
住む場所もなく、路地裏で寝るしかなかった。
どうしてステファニーを大事にしなかったのか。そうすれば侯爵家にいられ、こんな生活をおくるなんてことありえなかったのに……

今さらそんな後悔をしても遅すぎる。
そう思っても後悔しない日はなかった。

僕が平民として仕事も得られないままでいたある日、仕事を探しに求職の張り紙がある場所に行くとある伯爵家の下男の仕事を紹介された。
キルン伯爵家。

マリーの家だ……マリーなら俺を見かければ採用してくれるよう手を回してくれるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に抱き採用面接に向かうと、その場で採用が決まった。
マリーが裏から手を回してくれたんだと思った。
だから嬉々としてその仕事を受け入れた。

そして地下室だが部屋まで使っていいと言ってくれた。
住み込みで働いていいと。
やったー！！マリーには感謝してもしきれないな！
そう思っていたんだ。
だがその夜突然伯爵とマリーが現れた。

どうして主人がわざわざ下男の部屋など尋ねるのだろうと思ったが、せっかく来てくれたのだ。
お礼を言わなければ。

「キルン伯爵、伯爵夫人。今日からお世話になります。ジョシュエルです。
この度は採用いただき、またこのような部屋もお貸し頂きありがとうございます。
お二人のご期待に応えられるよう必死に働きますので、どうぞよろしくお願いします」

そう言いながら僕は深々と頭を下げた。
だが、数秒経っても返事は返ってこない。

不安げに頭を上げると、顔を青ざめたマリーの姿が目に入った。それに貴族の夫人にしてはやけに軽装な気がする。下男とは言え、男性の前に現れるのにあんな寝間着のような服でいいんだろうか。
それにどうしてマリーはあんなに不安そうな顔をしているんだろう？
そう思って、伯爵の顔を見ると穏やかそうな顔をしながらも、険しい目つきでこちらを見ていた。
その腕にはとても幼い子を抱いている。