シークレットベイビー~エルフとダークエルフの狭間の子~【完結】

白滝春菊

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反抗期編

疑われる仲

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 その頃、シリウスは近日この国で行われる祭りのため、数日前から同僚のアルムと騎士の仕事で王都の見回りをしていた。もう昼間なので既に多くの民たちが街に繰り出しているようだ。

「平和だなぁ、何かでっかい事件でも起きてくれないと暇で仕方がねぇよな?」
「そんなこと言うんじゃない」
「だってそうだろ?俺らはただ見回りをするだけか、書類仕事ばっか、魔物や盗賊は誰かさんが張り切って倒しまくるから全然出てこなくなったし」

 確かに最近は大きな事件は起こっていないし、犯罪の数や魔物の出現率も下がっている。これはいいことだとは思うのだが、そのせいで騎士団には暇を持て余す者が出てきている。
 何か武術大会を開いてもくれてもいいかもしれない。そうすれば少しは騎士や兵士の士気が上がるだろう。

「んで、最近できた家族はどうなんだ?」
「ステラは幼いのにもう読み書きができるんだ。俺が言うのもなんだが天才……」
「そうじゃねぇよ。家族と仲良くやっているのかって聞いてんだよ」
「……ああ、ステラはまだ俺が苦手なようだ」

 シリウスは少し考えてから答えた。アステルとは上手くいっているがステラはまだシリウスを警戒をしている節があるが時間をかければいずれ打ち解けられるだろうとは思っている。

「お前がちゃんと父親になれるのか俺は心配だよ」
「なれるかじゃなくてなるんだ。アステルが一人でステラを育てたのに俺が何もしないわけにはいかない」

 彼女の妊娠に気づかずに勝手に離れてしまったせいでアステルが女手一つでステラを育てなければならなかった。だから今度は自分が二人を幸せにする。そのためにできることは全てやるつもりだ。そしていつか、ステラに本当の父だと認めてもらいたいのだ。

「まあ、頑張れよ」

 先に話を振ったアルムが他人事のように言うのでシリウスは呆れたように彼を見る。
 しかし、この男も結婚して子供ができればきっと変わるだろうと、そんなことを思いながらシリウスは見回りを続けた。


 そして見回りのルートである学校の前を通りかかった時、子供達が校庭で遊んでいるのを目にした。
 ステラが学校に通うなら彼らと学ぶのだろうかと眺めていると、一人の少年と目が合い、走って近寄ってくる。
 その少年はシリウスにとっても馴染みのある人物。獣人と人間のハーフの子供のレオだった。彼は人間の男の子の姿に獣の耳と尻尾がついているのが特徴だ。

「あ、シリウス!シリウスだ!」

 少年の声に反応をして他の子供たちもその声に振り向く。

「ほんとだ、シリウスさまだ!」
「シリウスさま、こんにちは!」
「俺は?」
「ねえ、今日は何しに来たの?」
「無視かよ」

 少年少女はアルムを無視してシリウスを取り囲んだ。
 シリウスはこの国で開かれる武術大会で何度も優勝しているため、この国に住む者たちにとっては英雄のような存在なのだ。特に子供達はシリウスに憧れを持っており、こうしてシリウスが来るたびに集まってくることが多い。

「シリウス様、暇なの?一緒に遊ぶ?」
「あー、悪いが仕事中なんだ。また今度な」

 シリウスの代わりにアルムが答えると、彼らは残念そうな顔をする。

「そうだよ。シリウスは忙しいんだから……な、シリウス!」

 レオがそう言って同意を求めるとシリウスは困ったように笑う。
 この少年はずっと前から父親になってほしいとシリウスに頼んでは何度も断っても諦めず、しつこく言ってきて困っていたところ、一緒にいたガレッドやアルムが毎回助け舟を出してくれた。
 最近、妻子がいるから絶対に無理だと伝えれば大泣きされてしまったのは記憶に新しい。そのせいか、シリウスは少し罪悪感を感じている。

「俺達、昼飯食いに行くから行くぜ」
「え、シリウス、弁当作ってもらえないの?」

 アルムがそう言えばレオが悲しそうに見上げてくる。騎士団長のガレッドが妻に愛妻弁当を貰っているとよく聞くが、それは民にも有名な話なので目の前の少年を見ると妻がいるのに弁当を持ってきていないシリウスが可哀想に見えるのだろうか?

「アステルが忙しいから……」
「あ、きょーさいかって奴?」
「そうでは……」
「シリウスかわいそー」

 シリウスが言い訳をしようとすると、学校のチャイムが鳴り、子供達は名残惜しそうな顔をしながら解散していく。
 アステルはどちらかと言えば無駄に甘やかしてくるタイプで恐妻家とは真逆だ。それを言われるのは心外だがこれ以上反論をすれば時間も掛かるし、余計に面倒なことになるとわかっているので黙って昼食を食べに行くことにした。

 ◆

 今回もアルムのお気に入りの食堂での昼食。ここの料理は珍しいものが多くて味も美味しい。シリウスもこの前、アステルとステラをここに連れて来たが、二人は初めて食べるものに目を輝かせていた。
その時のことを思い出していた。

「お前の奥さん、そんなに怖いのか?美人で大人しそうに見えたけど人は見かけによらないんだな」

 食堂に入り、テーブル席につくと早速アルムが余計なことを言い出した。その言葉を聞いたシリウスは思わず眉間にシワを寄せ、不機嫌になったことに気づいたアルムは慌てて弁解をする。

「い、今のは冗談だって、怒るなって」
「怒っていない」
「じゃあ、なんでそんな怖い顔をしているんだよ」
「生まれつきだ」

 シリウスは不機嫌さを隠さずに言うと、適当な料理を注文した。

「エル……嫁さんはプライドが高いとかそういう種族なのか?」

 アステルがエルフであることはまだ公にはなっていないのでアルムは言葉を濁して言った。質問の内容に対して妙な気遣いである。

「プライドが高い奴もいれば高くない奴もいる。人間と同じだ」
「なるほどねぇ……あ、でも性欲が薄いから大変だよな」
「性欲……?」
「ほら、エル……妖精みたいなもんだから性欲が薄いってよく言うじゃん。お前の所もそうだろ?」
「……そうだな」

 アルムは騎士なのに猥談が好きらしく、下品な話題に事欠かない。だから、こういう会話には慣れているが、アステルがそのネタにされるのはあまりいい気分ではない。適当に同意をしておくことにした。

「勿体ねぇ、あんなに美人でスタイルもいいのに」
「それよりも今度の祭りなんだが……」

 さっさと話題を切り替えてしまおうとシリウスは別の話を振った。

(実はアステルは性欲が薄かったのか?)

 アルムと雑談をしながらシリウスはふとそんなことを考えた。
 いつもアステルはシリウスに付き合ってくれるが、もしかしたら我慢をしているのかもしれない。もし、それが本当なら……申し訳なく思う。
 それならアステルの方から誘われない限りは手を出すべきではないだろう。体力的にはシリウスの方が圧倒的に上なので、無理に求めてしまうと彼女が壊れてしまいそうだからだ。
 ステラが生まれる前と今では事情が変わっているのだから。
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