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また変な夢を見た。今度はラスティに殺されそうになる夢だ。ラスティは殺気を込めた槍を突き刺して私を殺そうとしていた。
私に向けられる殺意に体が震える。怖い……と思うよりも前に私は何かを守るために大きな盾を持って防いでいた。
汗びっしょりで目が覚めると隣にはラスティが寝息を立てて眠っていた。
私よりも逞しい胸板や太い腕、太い足、男らしい肉体。無防備だな、今なら簡単に殺せそうだ。
……あんな夢を見たせいで物騒な考えが浮かんだようだ。
恋人を殺そうだなんて何を考えてたんだろう……早く記憶を取り戻して彼の為に戦わなければとラスティの顔をジッと見てみた。
右目の大きな傷を見ると何かを思い出しそうで何かが崩れるような、そんな気がした。
「どうした」
片目だけ開けると私を見つめる赤い瞳。
「ごめんなさい、起こしてしまって」
「……無理をさせすぎたか?だがお前はこのぐらいじゃくたばる女じゃないだろ?もう少し付き合え」
「ちょ、ちょっと……」
ラスティは私の体を抱き起こすと今度は向かい合うようにして膝に乗せる。まだ彼は元気で硬さを保ったままの男根が私の中に入ってきた。力強くて乱暴で激しい腰使いに私は何度も絶頂を迎えて、その度に屈辱感を感じる。
これが彼との行為のすべてだった。気持ちよくて、痛くて、苦しい。いつも私が彼よりも先に絶頂を迎えてしまう。また、負けるのだ……と思いながら夜を明かした。
それでも記憶が戻らないまま日々が過ぎていった日々をもどかしく感じていたある日の事だった。
部屋の中で大人しく寝ていると外の方から喧嘩をするような声がして、気になってこっそりと窓の方に近づくと窓からは二人の男女の姿が見えた。
ラスティと綺麗な紫の髪に褐色肌の小柄な綺麗なドレスを身に纏った触れたら壊れてしまいそうな華奢な令嬢だ。使用人も褐色肌が多かったが、やはり他の人も褐色肌が多いなと思いながらその光景を見つめる。
二人は何か言い争っているようで、内容が気になる。悪いと思いつつも窓を少し開けて声を盗み聞くことにした。
「わたくしという婚約者がいながら他の女に現を抜かすなんて最低ですわ!」
ヒステリックな声を上げる令嬢に私は思わず引いてしまう。
どういうこと?彼女がラスティの婚約者で私が浮気相手……?
「俺が誰と過ごそうがお前には関係のない事だろう」
「関係ありますわ!貴方はわたくしと結婚するんですのよ!?」
令嬢の言葉に私は動揺を隠せなかった。ラスティも私を浮気相手だと認めていて婚約者を蔑ろにしてるような発言もしている。
でも、それは事実なのかもしれない。使用人が冷たいのは私が浮気相手だからで、あの令嬢の言う事は間違っていないような気がしてきた。
もしかしたら記憶を失う前の私は最低なのは女だったのかもしれない……
騎士で、ラスティの部下でラスティの恋人なことしか情報が無いのに浮気相手だったなんて……でも……不思議とあまりショックは受けていない。
記憶喪失になったら都合が良いから捨ててしまえばいいのに、彼はそれをしない。私を恋人だと言って傍に置いている。今のラスティにとって私はどんな存在?
「どうしてあの女を……」
「これ以上は中で話してやるからもう黙ってろ……」
私が考えている間にも二人の口論はヒートアップしていく。あまりの醜さにもう見ていられなくて私は静かにその場から離れる事しかできなかった。
私に向けられる殺意に体が震える。怖い……と思うよりも前に私は何かを守るために大きな盾を持って防いでいた。
汗びっしょりで目が覚めると隣にはラスティが寝息を立てて眠っていた。
私よりも逞しい胸板や太い腕、太い足、男らしい肉体。無防備だな、今なら簡単に殺せそうだ。
……あんな夢を見たせいで物騒な考えが浮かんだようだ。
恋人を殺そうだなんて何を考えてたんだろう……早く記憶を取り戻して彼の為に戦わなければとラスティの顔をジッと見てみた。
右目の大きな傷を見ると何かを思い出しそうで何かが崩れるような、そんな気がした。
「どうした」
片目だけ開けると私を見つめる赤い瞳。
「ごめんなさい、起こしてしまって」
「……無理をさせすぎたか?だがお前はこのぐらいじゃくたばる女じゃないだろ?もう少し付き合え」
「ちょ、ちょっと……」
ラスティは私の体を抱き起こすと今度は向かい合うようにして膝に乗せる。まだ彼は元気で硬さを保ったままの男根が私の中に入ってきた。力強くて乱暴で激しい腰使いに私は何度も絶頂を迎えて、その度に屈辱感を感じる。
これが彼との行為のすべてだった。気持ちよくて、痛くて、苦しい。いつも私が彼よりも先に絶頂を迎えてしまう。また、負けるのだ……と思いながら夜を明かした。
それでも記憶が戻らないまま日々が過ぎていった日々をもどかしく感じていたある日の事だった。
部屋の中で大人しく寝ていると外の方から喧嘩をするような声がして、気になってこっそりと窓の方に近づくと窓からは二人の男女の姿が見えた。
ラスティと綺麗な紫の髪に褐色肌の小柄な綺麗なドレスを身に纏った触れたら壊れてしまいそうな華奢な令嬢だ。使用人も褐色肌が多かったが、やはり他の人も褐色肌が多いなと思いながらその光景を見つめる。
二人は何か言い争っているようで、内容が気になる。悪いと思いつつも窓を少し開けて声を盗み聞くことにした。
「わたくしという婚約者がいながら他の女に現を抜かすなんて最低ですわ!」
ヒステリックな声を上げる令嬢に私は思わず引いてしまう。
どういうこと?彼女がラスティの婚約者で私が浮気相手……?
「俺が誰と過ごそうがお前には関係のない事だろう」
「関係ありますわ!貴方はわたくしと結婚するんですのよ!?」
令嬢の言葉に私は動揺を隠せなかった。ラスティも私を浮気相手だと認めていて婚約者を蔑ろにしてるような発言もしている。
でも、それは事実なのかもしれない。使用人が冷たいのは私が浮気相手だからで、あの令嬢の言う事は間違っていないような気がしてきた。
もしかしたら記憶を失う前の私は最低なのは女だったのかもしれない……
騎士で、ラスティの部下でラスティの恋人なことしか情報が無いのに浮気相手だったなんて……でも……不思議とあまりショックは受けていない。
記憶喪失になったら都合が良いから捨ててしまえばいいのに、彼はそれをしない。私を恋人だと言って傍に置いている。今のラスティにとって私はどんな存在?
「どうしてあの女を……」
「これ以上は中で話してやるからもう黙ってろ……」
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