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再婚編
11※
そしてヴィクトル様の指がショーツにかかる。その感触にさえ体が反応してしまった。私の腰は自然と持ち上がり、彼の動作を受け入れる。恥ずかしさと期待が入り混じったまま、私は両手でシーツをきつく掴んでいた。視界は潤み、世界がぼやけていた。
「大丈夫だ……優しくする」
ショーツがゆっくりと膝を越え、太腿へと下ろされる。そして足首から完全に引き抜かれ、外気に晒された肌がひやりとする。その直後に感じたのはヴィクトル様の手が私の内股を撫でるぬくもりだった。
ヴィクトル様が身を寄せ、私の体にさらに近づく。ヴィクトル様の動きは行為を進めようとしていることを示していた。心の奥で、受け入れたいと強く願った。ヴィクトル様と心も体も結ばれたい。この夜を過去の傷を越えて新しい一歩にするために。
でも、胸の奥でトラウマが疼く。あの日の恐怖、初夜を迎えられなかった記憶がまるで暗い影のように蘇る。
ヴィクトル様が私の上に覆い被さり、たくましい筋肉が私の体に触れる瞬間に恐怖を感じてしまった。
怖くない、受け入れなさい、ヴィクトル様ならもう大丈夫だから。
「あ……や……」
ヴィクトル様の手が私の腰を掴み、そっと体を密着させると私の体は反射的に石のように強張り、脳裏に過去の光景が鮮明に蘇る。
あの時、何も言えなかった。彼の体重が、声が、すべてが圧力だった。抵抗する術なんて、私にはなくて。
私が感じたのは大きな体格が持つ圧倒的な威圧感だった。体が震え、一気に呼吸が浅くなる。
「いや……!」
私は無意識の内にヴィクトル様の胸を押し返してしまった。
そして拒絶の声が出た瞬間、私は自分の言葉に凍りついた。ヴィクトル様の手がぴたりと止まり、青い瞳が私の顔を見つめる。表情にわずかに驚きと気まずさが混じる。
「ち、違うんです……!」
私は慌てて首を振った。声が震え、涙が滲む。嫌な記憶が勝手にあんな言葉を言わせてしまった。私の体が勝手に動いてしまったのだ。
「無理をしなくていい」
ヴィクトル様はそう言うと、私を解放した。そして、覆いかぶさっていた体をゆっくりと……完全に離した。彼はベッドの縁に腰を下ろし、私に背を向ける。
彼の体温が私の肌から遠ざかる。安堵ではなく、深い喪失感に襲われた。
「ちがっ……違うんです、ヴィクトル様……!」
私は起き上がるとヴィクトル様の腕にしがみつき、必死で言葉を紡いだ。
「受け入れたかったんです……本当に貴方と一つになりたいから……あれは体が……体が勝手に……」
声が詰まる。自分の無意識の拒絶がヴィクトル様を傷つけたのではないかと恐れた。こんなにも愛してくれてるのに私の心がまだ過去に縛られているなんて。
「今日はもう休め。まだ十分な時間が必要なようだ」
「ごめんなさい……でも、もう一度……試したいです。ヴィクトル様と、ちゃんと……最後まで……」
言葉を絞り出すたび、昔の影が私を抑えつける。あの日々がまるで冷たい鎖のように私を縛っていた。だから私はその鎖を断ち切りたかったのに。
ヴィクトル様はそっと私の手を解いてからベッドから離れ、立ち上がり、シーツを私にかけてくれた。その動作はまるで私を守るように慎重だ。
「まだ片付けていない仕事がある。それを終わらせたら戻る」
表情は陰になって見えないが、微かに漂う諦めのような気配を感じ取れる。私の拒否が彼を傷つけてしまったのだとわかった。
「何かあれば遠慮なく呼べ。すぐに行く」
彼はそう言って、私を見ずに、静かに部屋の扉の方へ向かう。突き放すような響きではない。でも、私との間に距離を置こうとしているようにも聞こえる。
「あ……待って……」
扉が静かに閉まり、カチリと錠が下りる音がした。彼の去った後の静寂の中で私はシーツを握りしめる。
悔しい。恐怖に打ち勝てなかった自分自身への深い後悔と、ヴィクトル様の優しさを無駄にしてしまった悲しみが、胸の中で渦巻いていた。
私はベッドに横たわり、月を見つめた。体はまだ熱く、ヴィクトル様の触れた感触が肌に残っている。でも、心の奥では恐怖と愛情がせめぎ合っていた。
ヴィクトル様の言葉が頭に響くのだ。
「お前が死ねばよかった」と。
「大丈夫だ……優しくする」
ショーツがゆっくりと膝を越え、太腿へと下ろされる。そして足首から完全に引き抜かれ、外気に晒された肌がひやりとする。その直後に感じたのはヴィクトル様の手が私の内股を撫でるぬくもりだった。
ヴィクトル様が身を寄せ、私の体にさらに近づく。ヴィクトル様の動きは行為を進めようとしていることを示していた。心の奥で、受け入れたいと強く願った。ヴィクトル様と心も体も結ばれたい。この夜を過去の傷を越えて新しい一歩にするために。
でも、胸の奥でトラウマが疼く。あの日の恐怖、初夜を迎えられなかった記憶がまるで暗い影のように蘇る。
ヴィクトル様が私の上に覆い被さり、たくましい筋肉が私の体に触れる瞬間に恐怖を感じてしまった。
怖くない、受け入れなさい、ヴィクトル様ならもう大丈夫だから。
「あ……や……」
ヴィクトル様の手が私の腰を掴み、そっと体を密着させると私の体は反射的に石のように強張り、脳裏に過去の光景が鮮明に蘇る。
あの時、何も言えなかった。彼の体重が、声が、すべてが圧力だった。抵抗する術なんて、私にはなくて。
私が感じたのは大きな体格が持つ圧倒的な威圧感だった。体が震え、一気に呼吸が浅くなる。
「いや……!」
私は無意識の内にヴィクトル様の胸を押し返してしまった。
そして拒絶の声が出た瞬間、私は自分の言葉に凍りついた。ヴィクトル様の手がぴたりと止まり、青い瞳が私の顔を見つめる。表情にわずかに驚きと気まずさが混じる。
「ち、違うんです……!」
私は慌てて首を振った。声が震え、涙が滲む。嫌な記憶が勝手にあんな言葉を言わせてしまった。私の体が勝手に動いてしまったのだ。
「無理をしなくていい」
ヴィクトル様はそう言うと、私を解放した。そして、覆いかぶさっていた体をゆっくりと……完全に離した。彼はベッドの縁に腰を下ろし、私に背を向ける。
彼の体温が私の肌から遠ざかる。安堵ではなく、深い喪失感に襲われた。
「ちがっ……違うんです、ヴィクトル様……!」
私は起き上がるとヴィクトル様の腕にしがみつき、必死で言葉を紡いだ。
「受け入れたかったんです……本当に貴方と一つになりたいから……あれは体が……体が勝手に……」
声が詰まる。自分の無意識の拒絶がヴィクトル様を傷つけたのではないかと恐れた。こんなにも愛してくれてるのに私の心がまだ過去に縛られているなんて。
「今日はもう休め。まだ十分な時間が必要なようだ」
「ごめんなさい……でも、もう一度……試したいです。ヴィクトル様と、ちゃんと……最後まで……」
言葉を絞り出すたび、昔の影が私を抑えつける。あの日々がまるで冷たい鎖のように私を縛っていた。だから私はその鎖を断ち切りたかったのに。
ヴィクトル様はそっと私の手を解いてからベッドから離れ、立ち上がり、シーツを私にかけてくれた。その動作はまるで私を守るように慎重だ。
「まだ片付けていない仕事がある。それを終わらせたら戻る」
表情は陰になって見えないが、微かに漂う諦めのような気配を感じ取れる。私の拒否が彼を傷つけてしまったのだとわかった。
「何かあれば遠慮なく呼べ。すぐに行く」
彼はそう言って、私を見ずに、静かに部屋の扉の方へ向かう。突き放すような響きではない。でも、私との間に距離を置こうとしているようにも聞こえる。
「あ……待って……」
扉が静かに閉まり、カチリと錠が下りる音がした。彼の去った後の静寂の中で私はシーツを握りしめる。
悔しい。恐怖に打ち勝てなかった自分自身への深い後悔と、ヴィクトル様の優しさを無駄にしてしまった悲しみが、胸の中で渦巻いていた。
私はベッドに横たわり、月を見つめた。体はまだ熱く、ヴィクトル様の触れた感触が肌に残っている。でも、心の奥では恐怖と愛情がせめぎ合っていた。
ヴィクトル様の言葉が頭に響くのだ。
「お前が死ねばよかった」と。
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