【完結】子供を作れない夫から、義兄に抱かれてほしいと頼まれました。

白滝春菊

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重なる想いと鼓動

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 広く、静かなベッドの中でシーツが汗でほのかに湿っている。セルジュのたくましい腕に包まれ、わたしは彼の広い胸に頬を寄せる。鼓動がゆったりとした波のように伝わり、わたしの心を静かに染め上げていく。

「ん……セルジュ……」

 セルジュの指先が、わたしの乱れた髪を愛おしげに撫で、背中に滑ると微かな疼きを呼び起こす。事後の火照りがまだ体を熱くし、愛液と彼の子種が内腿に残る感覚が甘い羞恥を呼び起こす。セルジュの熱がわたしを満たした記憶が体の奥で疼き、吐息をほのかに震わせる。

「ねえ、セルジュ……アリシア様とは……何もなかったの?」

 ためらいがちに口にしたその問い。自分でもわかるくらい、声がわずかに震えていた。

「何もございません」

 簡潔で潔い答え。その一言に彼らしさが滲んでいるのはわかっていても、それだけでは胸の奥のざわめきは消えてくれなかった。

「彼女と……親しそうに話していたのを見たの。どこか秘密めいていたというか……特別な空気があった気がして」

 わたしの言葉にセルジュは視線を外すことなく、真っ直ぐにわたしを見つめ返す。その瞳には曇りがなく、誠実な光が宿っていた。

「彼女とは国の未来について意見を交わしていただけです。クラウディア様を裏切るような行いは断じて、しておりません」

 その静かな声に込められた真摯な想いがわたしの胸にゆっくりと染み込んでいく。

「アリシア姫の国は貧富の差が少なく、人々が心から笑って暮らせる仕組みが整っている国です。その在り方には学ぶべき点が多々ありました。私はそれを自分の目で見て、心で受け止めました」

 セルジュもウィリアムと同じようにこの国に渦巻く貧富の差を嘆いていただなんて。そのことをわたしは今まで知らなかった。セルジュがそんな想いを胸の奥深くに抱えていたなんて。
 ただ忠誠を尽くすだけの騎士ではなかった。セルジュはこの国を本気で変えたいと。

「そのやり方を少しでもこの国に活かしたいと願ったのです。クラウディア様あなたと、そしてこの国の未来のために」

 彼はこんなにも国のことを考え、真摯に向き合っているのにわたしはどうだっただろう。隣にいながら、その歩みに何一つ寄り添えていなかったのではないか。そんな思いが心に影を落とす。

「……わたし、何も知らなかった」
「クラウディア様?」
「国のことも、国民のことも。結局わたしは何も知らずにただ王女としてそこにいるだけだった。セルジュのように何かを変えようなんて考えたことさえなかった……」

 恥ずかしくて、申し訳なくて、目を伏せたままそう言うと、セルジュの手がそっとわたしの頬に触れた。その手はあたたかくて、すべての不安をやさしく溶かしていくようだった。

「そんなことはありません。クラウディア様もこの国を支えておられます。私はそれを誰よりも近くで見てきました」

 その優しさに胸の奥が少しだけほぐれていくのを感じる。そしてセルジュはほんの一瞬、悲しげに目を伏せた。そして、まるで何かを決意するように深く息を吸い込み、わたしをそっと抱きしめた。

「……クラウディア様。謝らなければならないことがあります」

 その言葉にわたしは小さく息を呑む。セルジュはわたしの肩に額を寄せるようにして、低く、悔いるような声で続けた。

「私はクラウディア様から距離を置いてしまいました。貴女の気持ちに気づかぬふりをして、孤独にさせてしまった」

 ああ……あの時、感じていた孤独の正体が今になって名前を与えられた気がした。

「どんな理想も、どんな改革も、私は貴女と共に歩まなければ意味がない。クラウディア様のそばにいて、共に悩みながら、この国の未来を築いていきたい」

 わたしを包み込むセルジュの手が少しだけ震えていた。その温もりがまるで誓いのように心に届く。
 涙がこぼれそうになった。けれど、それは哀しみではなく、安心と希望に満ちた涙だった。
 わたしは頷き、そっと彼の胸に顔を埋めた。この温もりの中でなら、わたしも変われる気がした。いいえ、きっと二人なら、変えていける。未来も、国も、わたし自身も。
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