【完結】あやかし街の看板娘

MURASAKI

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けん制し合う二人の間に入り、少し落ち着くように促す。


「すんません。どうしても紫狼しろうとはウマが合わんくて。板狩いたかりちゃんにいらん気ィを使わしてしまいましたね。」

「私はオファーをしているだけだ。狐崎おまえが急に割って入ったんだろう。」

「なんて!?正式にオファーするんなら、リーフ亭を通して欲しいって言うてるだけやん。」

「ああ!もう!お二人とも、私より年上で神様の眷属なのに、何やってるんですか。落ち着いてください。
 それから、紫狼しろうさん。私も狐崎こざきさんにお願いしていますので、正式なオファーであれば狐崎こざきさんにお問い合わせをお願いします。」


またヒートアップしていく二人を引き離し、一旦この場を収める提案をした。
狐崎こざきは私の方をちらっと見ると、小さな声で「僕のどこかに捕まってて」と呟く。
私は袖口の当たりをそっとつまんだ。


板狩いたかりちゃんもこう言うてくれてるわけやし、紫狼しろうが筋を通すんなら、僕かて仕事はちゃんとさせてもらいます。板狩いたかりちゃんが欲しかったら、リーフ亭に来たらええわ。ちゃんとおもてなししたるさかい。」


そう言うと、そのままドロン!と姿を消した。私も一緒に。
目を開けるとそこはリーフ亭だった。


「!!?」


混乱する私に向かって、狐崎こざきは「巻き込んでしもて堪忍」と謝る。


「そ、そんな!巻き込むだなんて。あの人は栗栖くんのお兄さんって話でしたけど・・・どういうご関係なんですか?」

「そうやね。ちゃんと話しておかんとね。お茶入れてくるから適当にかけといて。」


狐崎こざきはキッチンへ入ると、間もなくあたたかいほうじ茶を淹れて戻ってきた。
ほうじ茶のいい香りが気持ちをすうっと落ち着け、不思議な満足感が見も心も包み込んでいく。


「何から話したらええかな。栗栖の家は代々長い事続いてるかわら版屋なんやけど。」

「かわら版って、新聞のことですか?」

「うん、そうそう!板狩いたかりちゃんも知ってると思うよ。大映光新聞。」

「ええ!?大映光新聞社なんて、超大手じゃないですか!!?子会社も沢山あって、マスコミ関係者なら一度は大映光グループ系列のどこかに入ってみたいと憧れる、あの大映光新聞ですか?」

「ええ~?あそこって、そんな憧れの会社なんや。」


昔馴染みだからか、それとも業界が違うからか、狐崎こざきには「大映光新聞」への私の認識と少々ズレがあるようだ。
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