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その後
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「加藤ももかと申します。…誠一さんとは、真剣にお付き合いさせて頂いております」
二年半ぶりの、日本。
ガチガチに固まった私の隣で小鳥遊誠一さんがにこりと笑って私を引き寄せた。
「俺の婚約者です」
私が彼から逃げて二年半。
友人にも告げずに仕事も変えた私の居場所をどうやって見つけたか、誠一さんに聞くと彼は私をぎゅうっと抱きしめながら、
「ももかの親に聞いた」
と答えた。
「え、ぇえっ?!な、ウチに行ったんですかっ?!」
「うん、だってももかの友達…中島さん、だっけ、に聞いてもわからないって言うし、親に聞くしかないなって」
「でも、そこまでする必要は…」
「ももか」
柔らかい雰囲気が一転、誠一さんは真剣な眼差しで私の手を取った。
ぐっと握り込まれて、さらに見つめられる。
「俺はずっとももかと結婚するつもりだった。ただももかを混乱させたくないから待ってたんだ」
「……」
「…ももかからメールが来たとき、ゾッとしたよ。電話しても出ないし、その日のうちに家に行ってもいないし」
誠一さんの婚約者と名乗る女性と会い、別れた後はずっとホテルに泊まっていた。
費用はすべて彼女---長谷川真由さんが払ってくれた。
こちらでの当分の生活費も払うと言われたがそれだけは断った。新しく始めるはずの人生に、彼女の要素が少しでも入り込むのがどうしても嫌だった。
「…ごめんなさい、早とちり、して」
「…いいや、俺も悪かったよ。まさか真由に聞かれてるなんて…」
日本に帰るまでの間にいろんなことを教えてもらった。
まず、彼は小鳥遊財閥の御曹司だということ。私と会ったときにはただの小鳥遊誠一でいたかったから黙っていたと、言われた。
「小鳥遊って苗字は少なくないから、知らない人は気づかないよ」
社会人として財閥の御曹司も知らないと呆れられたのではと焦った私に誠一さんはずっと幸せそうに笑う。そばにいるのが嬉しいよ、とでも言うように。
「中島さんにもわからないとなるとももかの実家に行くしかない。そう思ったからすぐにももかの実家を中島さんに教えてもらって行ったんだけど」
私の親が、渋った。
理由も告げず海外勤務となった娘をただでさえ心配していたのに、娘さんの居場所を教えてくださいと言う男が現れたのだから当たり前だろうと。
「…さすがに毎日は通えなかったけど、毎週休みの日に行ったよ。お父さんよりお母さんの方がちょっときつくて、こんなに時間がかかった」
大切にされてたんだねと微笑んでくれる誠一さんにすごく申し訳なくなった。
長谷川さんとの婚約は嘘ではない。そういう話は確かに上がっていたが、断ったと。
「断ったの…?でも、いいお話だったんじゃ」
「俺は会社と結婚したいんじゃない。誰か好きな人と結婚したい。…俺の場合はそれがももかなんだよ」
「それでずっと、二年も探してくれたの…っ?」
「ももかだから、ね」
たくさん泣いて、たくさん謝って、たくさん好きだと言った。
誠一さんはそれにずっと微笑んで私を抱きしめてくれていた。
大好き、誠一さん。
「…ぅぅう、緊張した…」
「あんなにガチガチにならなくても大丈夫だったでしょ?」
「でも、誠一さんの家族にお会いするんですよ?…緊張します、ただでさえ、待たせていたんですから」
誠一さんのご実家への挨拶を終え、小鳥遊家から出た私と誠一さんは車を出してくれるという言葉に甘えて門前で待っていた。
小鳥遊家、意外と普通のおうちでした。純和風の一軒家で普通よりちょっと部屋数が多いくらいで外観からはわからないくらい普通だった。中はこれまた純和風の素晴らしいおうちでした。
誠一さんのご両親は快く結婚を承諾してくださった。息子がそこまでするのに了承しないわけがないと苦笑していた。
「…もう、逃げたりしませんから」
「ももか…」
「--誠一!」
女性の声が響いた。聞き覚えのある声だった。
長身の派手な美女が近づいていた。長谷川真由だ。
誠一さんの隣にいるのが私だとわかるとキッときつく睨めつけられた。
美人の睨みに思わず竦むと誠一さんが前に出て私を背に隠した。
「なんだ、真由」
「どこに行ってたの?ずっと連絡も取れないし心配してたのよ。おじさまもおばさまも教えてくれないし…」
「あたりまえだ、誰にも言ってなかったからな」
それは私も知らなかった。びっくりして誠一さんを見上げると目があって苦笑された。たぶん黙ってて、と言いたいんだろう。
「それに、ずっと前から上がってた縁談をどうして蹴るの?小さい頃からずっと一緒にいようって約束したじゃない!」
「よかったよ、結婚しようなんて言ってなくて。幼なじみだから強く出なかったけど---いい加減にしてくれる、真由」
雰囲気が凍った。
さすがの長谷川さんもかすかに怯えているようだった。
でも誠一さんは気にすることなく彼女に近づこうとして。
「待って、誠一さん」
私は引き止めた。
震える声の私に誠一さんはいくらか雰囲気を緩め、おとなしく下がってくれた。
誠一さんに関係がないなんてことは言わない。彼は立派な当事者だ。
でも、私は守られるだけのお姫様なんかじゃない。
私は誠一さんとは平等でいたい。
「長谷川真由さん、お久しぶりです。その節はお世話になりました」
「…っ別れるって言ったじゃない!そのためにあなたに協力だってした、仕事だって都合してあげたじゃない!どうして、どうして…ッ!」
「私は別れたつもりでした。二年半、あなたには時間がありました。あなたは彼を誘惑することも、無理やりにでも彼の妻になることだってできました。結果、これです。もう私は逃げません」
逃げないし、逃げたくない。
それはただ、誠一さんが好きだから。
「誠一さんは私のです。もう絶対に離したりしません…!」
長谷川さんは射殺さんばかりに私を睨む。
あまりの鋭さに震えそうになる足を叱咤して黙って彼女を見つめていた。
しかし彼女は意外にもぐっと唇を噛んでなにも言わずに踵を返した。
思わず息を吐いてしまう。
「わかってもらえたんでしょうか…?」
「--…そんなことより。ももか、今日はもう帰ろう。疲れたでしょ?」
「は、はい」
少し冷たい声が降る。申し訳なくなったのですぐに頷いた。
私の手を握って歩き出す誠一さんはどこか遠くを見ている気がした。
-------------------------------------------
ふかふかのクッションを苛立たしい気分のまま壁に叩きつけた。
でもこんなもので怒りが消えるわけがない。
どうしてあの女が日本ここにいるのよ!
「今更…ッ!」
二年半。
あの女の言った通り確かに私には時間があった。誠一を自分のものにすることだってできるくらいの時間。
でもその二年半、私は誠一に会うことすらできなかった。
年末年始の顔合わせにすら現れなかった。
どこかで捕まえようにもまったくというほど姿が見れなかった。
「なんで、なんでよっ…!」
ずっとそばにいたのは私。あの女じゃない。
なのにどうして私を選ばなかったの…?!
ずっとそばにいてって言ったら頷いてくれたじゃないっ!
「--お嬢様、旦那様からお電話です」
「…お父様から?」
普段は優しいが仕事中は厳格な父からの電話に出ると、鳥肌が立ちそうなくらい低い声で訊かれた。
「…なにをした」
「え…?」
「小鳥遊財閥から手を切られた。向こうはお嬢さんがお世話になったと言っていたぞ。…お前はなにをした!なにをやらかしたんだ!」
私が悲痛な叫び声をあげるまで、あと数秒。
-------------------------------------------
「ん、ん、ん…っ!」
「ももか、頑張って」
「せ、いちさん…ッ、ぁあっ」
あぁ、綺麗だ。俺の上に乗って羞恥に震えながら腰を振るももかがいとおしい。
かわいがって大切にしたい、でも閉じ込めて俺だけのものにしたい。
どろどろに甘やかして、俺しか見えないようにしたい。
なのに彼女は勝手に俺の腕をすり抜けていく。そんな思い通りにならないところが愛しいのも彼女だからだが。
「ふ、んんぅ」
引き寄せて唇を重ねるとすぐに舌を絡めて、吸って、むしゃぶる。
素直に応えるももかは淫靡で、美しい。
だから、もっともっとと求めていじめたくなる。
「あん、せーいちさん、っイキたいの…おねがい…んぁッ」
「…どうしようかな」
「そ、んなぁ…っ」
真剣に悩んでいると俺のスマホが揺れた。どうやら電話のようだ。
ちょっとした悪戯心が芽生え、俺はスマホを取った。
「はい、誠一です」
「っ!?…ふ、ッ」
『誠一、長谷川コーポレーションから考え直して欲しいとメッセージが来ていたが』
「あぁ。それならお気になさらず、お父さん。もう俺に経営路線は任せてくれるんですよね?」
「ッぁ…!」
父との電話に出た俺に潤んだ目を向けながら必死に声を殺しているももかが愛らしい。
ぐっと突き上げてやると手で口を覆いながら仰け反る。
我慢している姿がいやらしくて目が離せない。
「…えぇ、はい。わかりました。それでは失礼します」
「ん、ぁ、…ぁぁあッ!!」
「っ…イッたね、ももか」
「あッ、だめ…っまだイッて、ひぁあっ!」
真由には相応とは言えないが報復を与えておいた。
根っからのお嬢様の彼女が父親から見放されて勘当同様の扱いを受けたという報告はすでにきている。
幼なじみの温情だ。
そんなことより、ももかが俺を「私の」って言ってくれたことの方が大事なことだ。
すごく、嬉しかった。
「も、ぁっ、せいいちさん、ッ、っふぁああ、ん」
「ここだね、ももかのいいところ」
子宮口を突きながら優しくキスすると蕩けたナカが締まった。
ももかがこれが好きなのは知ってる。からこそ、いま使った。
「んっ、はぃ…!」
「ももか、愛してるよ。…俺を離さないでいてよ?」
「っあ、はぃ、せーいちさ」
「ん?」
「ずっと、一緒にいて」
……ああ、本当に。
「…いいよ、ずっと俺を好きでいるんだよ?」
「すき。…っん、せいいちさん」
唇が降ってきた。
甘いキスがストレートな『好き』を表しているように感じた。
「もう、離さないから」
離せないから。
二年半ぶりの、日本。
ガチガチに固まった私の隣で小鳥遊誠一さんがにこりと笑って私を引き寄せた。
「俺の婚約者です」
私が彼から逃げて二年半。
友人にも告げずに仕事も変えた私の居場所をどうやって見つけたか、誠一さんに聞くと彼は私をぎゅうっと抱きしめながら、
「ももかの親に聞いた」
と答えた。
「え、ぇえっ?!な、ウチに行ったんですかっ?!」
「うん、だってももかの友達…中島さん、だっけ、に聞いてもわからないって言うし、親に聞くしかないなって」
「でも、そこまでする必要は…」
「ももか」
柔らかい雰囲気が一転、誠一さんは真剣な眼差しで私の手を取った。
ぐっと握り込まれて、さらに見つめられる。
「俺はずっとももかと結婚するつもりだった。ただももかを混乱させたくないから待ってたんだ」
「……」
「…ももかからメールが来たとき、ゾッとしたよ。電話しても出ないし、その日のうちに家に行ってもいないし」
誠一さんの婚約者と名乗る女性と会い、別れた後はずっとホテルに泊まっていた。
費用はすべて彼女---長谷川真由さんが払ってくれた。
こちらでの当分の生活費も払うと言われたがそれだけは断った。新しく始めるはずの人生に、彼女の要素が少しでも入り込むのがどうしても嫌だった。
「…ごめんなさい、早とちり、して」
「…いいや、俺も悪かったよ。まさか真由に聞かれてるなんて…」
日本に帰るまでの間にいろんなことを教えてもらった。
まず、彼は小鳥遊財閥の御曹司だということ。私と会ったときにはただの小鳥遊誠一でいたかったから黙っていたと、言われた。
「小鳥遊って苗字は少なくないから、知らない人は気づかないよ」
社会人として財閥の御曹司も知らないと呆れられたのではと焦った私に誠一さんはずっと幸せそうに笑う。そばにいるのが嬉しいよ、とでも言うように。
「中島さんにもわからないとなるとももかの実家に行くしかない。そう思ったからすぐにももかの実家を中島さんに教えてもらって行ったんだけど」
私の親が、渋った。
理由も告げず海外勤務となった娘をただでさえ心配していたのに、娘さんの居場所を教えてくださいと言う男が現れたのだから当たり前だろうと。
「…さすがに毎日は通えなかったけど、毎週休みの日に行ったよ。お父さんよりお母さんの方がちょっときつくて、こんなに時間がかかった」
大切にされてたんだねと微笑んでくれる誠一さんにすごく申し訳なくなった。
長谷川さんとの婚約は嘘ではない。そういう話は確かに上がっていたが、断ったと。
「断ったの…?でも、いいお話だったんじゃ」
「俺は会社と結婚したいんじゃない。誰か好きな人と結婚したい。…俺の場合はそれがももかなんだよ」
「それでずっと、二年も探してくれたの…っ?」
「ももかだから、ね」
たくさん泣いて、たくさん謝って、たくさん好きだと言った。
誠一さんはそれにずっと微笑んで私を抱きしめてくれていた。
大好き、誠一さん。
「…ぅぅう、緊張した…」
「あんなにガチガチにならなくても大丈夫だったでしょ?」
「でも、誠一さんの家族にお会いするんですよ?…緊張します、ただでさえ、待たせていたんですから」
誠一さんのご実家への挨拶を終え、小鳥遊家から出た私と誠一さんは車を出してくれるという言葉に甘えて門前で待っていた。
小鳥遊家、意外と普通のおうちでした。純和風の一軒家で普通よりちょっと部屋数が多いくらいで外観からはわからないくらい普通だった。中はこれまた純和風の素晴らしいおうちでした。
誠一さんのご両親は快く結婚を承諾してくださった。息子がそこまでするのに了承しないわけがないと苦笑していた。
「…もう、逃げたりしませんから」
「ももか…」
「--誠一!」
女性の声が響いた。聞き覚えのある声だった。
長身の派手な美女が近づいていた。長谷川真由だ。
誠一さんの隣にいるのが私だとわかるとキッときつく睨めつけられた。
美人の睨みに思わず竦むと誠一さんが前に出て私を背に隠した。
「なんだ、真由」
「どこに行ってたの?ずっと連絡も取れないし心配してたのよ。おじさまもおばさまも教えてくれないし…」
「あたりまえだ、誰にも言ってなかったからな」
それは私も知らなかった。びっくりして誠一さんを見上げると目があって苦笑された。たぶん黙ってて、と言いたいんだろう。
「それに、ずっと前から上がってた縁談をどうして蹴るの?小さい頃からずっと一緒にいようって約束したじゃない!」
「よかったよ、結婚しようなんて言ってなくて。幼なじみだから強く出なかったけど---いい加減にしてくれる、真由」
雰囲気が凍った。
さすがの長谷川さんもかすかに怯えているようだった。
でも誠一さんは気にすることなく彼女に近づこうとして。
「待って、誠一さん」
私は引き止めた。
震える声の私に誠一さんはいくらか雰囲気を緩め、おとなしく下がってくれた。
誠一さんに関係がないなんてことは言わない。彼は立派な当事者だ。
でも、私は守られるだけのお姫様なんかじゃない。
私は誠一さんとは平等でいたい。
「長谷川真由さん、お久しぶりです。その節はお世話になりました」
「…っ別れるって言ったじゃない!そのためにあなたに協力だってした、仕事だって都合してあげたじゃない!どうして、どうして…ッ!」
「私は別れたつもりでした。二年半、あなたには時間がありました。あなたは彼を誘惑することも、無理やりにでも彼の妻になることだってできました。結果、これです。もう私は逃げません」
逃げないし、逃げたくない。
それはただ、誠一さんが好きだから。
「誠一さんは私のです。もう絶対に離したりしません…!」
長谷川さんは射殺さんばかりに私を睨む。
あまりの鋭さに震えそうになる足を叱咤して黙って彼女を見つめていた。
しかし彼女は意外にもぐっと唇を噛んでなにも言わずに踵を返した。
思わず息を吐いてしまう。
「わかってもらえたんでしょうか…?」
「--…そんなことより。ももか、今日はもう帰ろう。疲れたでしょ?」
「は、はい」
少し冷たい声が降る。申し訳なくなったのですぐに頷いた。
私の手を握って歩き出す誠一さんはどこか遠くを見ている気がした。
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ふかふかのクッションを苛立たしい気分のまま壁に叩きつけた。
でもこんなもので怒りが消えるわけがない。
どうしてあの女が日本ここにいるのよ!
「今更…ッ!」
二年半。
あの女の言った通り確かに私には時間があった。誠一を自分のものにすることだってできるくらいの時間。
でもその二年半、私は誠一に会うことすらできなかった。
年末年始の顔合わせにすら現れなかった。
どこかで捕まえようにもまったくというほど姿が見れなかった。
「なんで、なんでよっ…!」
ずっとそばにいたのは私。あの女じゃない。
なのにどうして私を選ばなかったの…?!
ずっとそばにいてって言ったら頷いてくれたじゃないっ!
「--お嬢様、旦那様からお電話です」
「…お父様から?」
普段は優しいが仕事中は厳格な父からの電話に出ると、鳥肌が立ちそうなくらい低い声で訊かれた。
「…なにをした」
「え…?」
「小鳥遊財閥から手を切られた。向こうはお嬢さんがお世話になったと言っていたぞ。…お前はなにをした!なにをやらかしたんだ!」
私が悲痛な叫び声をあげるまで、あと数秒。
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「ん、ん、ん…っ!」
「ももか、頑張って」
「せ、いちさん…ッ、ぁあっ」
あぁ、綺麗だ。俺の上に乗って羞恥に震えながら腰を振るももかがいとおしい。
かわいがって大切にしたい、でも閉じ込めて俺だけのものにしたい。
どろどろに甘やかして、俺しか見えないようにしたい。
なのに彼女は勝手に俺の腕をすり抜けていく。そんな思い通りにならないところが愛しいのも彼女だからだが。
「ふ、んんぅ」
引き寄せて唇を重ねるとすぐに舌を絡めて、吸って、むしゃぶる。
素直に応えるももかは淫靡で、美しい。
だから、もっともっとと求めていじめたくなる。
「あん、せーいちさん、っイキたいの…おねがい…んぁッ」
「…どうしようかな」
「そ、んなぁ…っ」
真剣に悩んでいると俺のスマホが揺れた。どうやら電話のようだ。
ちょっとした悪戯心が芽生え、俺はスマホを取った。
「はい、誠一です」
「っ!?…ふ、ッ」
『誠一、長谷川コーポレーションから考え直して欲しいとメッセージが来ていたが』
「あぁ。それならお気になさらず、お父さん。もう俺に経営路線は任せてくれるんですよね?」
「ッぁ…!」
父との電話に出た俺に潤んだ目を向けながら必死に声を殺しているももかが愛らしい。
ぐっと突き上げてやると手で口を覆いながら仰け反る。
我慢している姿がいやらしくて目が離せない。
「…えぇ、はい。わかりました。それでは失礼します」
「ん、ぁ、…ぁぁあッ!!」
「っ…イッたね、ももか」
「あッ、だめ…っまだイッて、ひぁあっ!」
真由には相応とは言えないが報復を与えておいた。
根っからのお嬢様の彼女が父親から見放されて勘当同様の扱いを受けたという報告はすでにきている。
幼なじみの温情だ。
そんなことより、ももかが俺を「私の」って言ってくれたことの方が大事なことだ。
すごく、嬉しかった。
「も、ぁっ、せいいちさん、ッ、っふぁああ、ん」
「ここだね、ももかのいいところ」
子宮口を突きながら優しくキスすると蕩けたナカが締まった。
ももかがこれが好きなのは知ってる。からこそ、いま使った。
「んっ、はぃ…!」
「ももか、愛してるよ。…俺を離さないでいてよ?」
「っあ、はぃ、せーいちさ」
「ん?」
「ずっと、一緒にいて」
……ああ、本当に。
「…いいよ、ずっと俺を好きでいるんだよ?」
「すき。…っん、せいいちさん」
唇が降ってきた。
甘いキスがストレートな『好き』を表しているように感じた。
「もう、離さないから」
離せないから。
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