元悪徳領主の娘ですが、蛮族の国に嫁いで割と幸せにやってます

みなかみしょう

文字の大きさ
1 / 14

1.

しおりを挟む
 大変ですわ! 大変ですわ! 悪徳領主の私の両親がついに捕まりましたわ。
 ……冷静に考えると世間的には良いことですわね。
 しかし、私こと、ルルシア・グランフレシアにとっては人生の一大事なのです。
 十歳より十八歳までの、ラインフォルスト王国の王立学院で学ぶ日々、楽しゅうございました。なにより一番の収穫は、私の両親が悪徳領主であるという疑惑が確信に至ったことでしょう。

 領地の中で育っている時も薄々感づいておりました。周りの人々から私と両親を見る時の時折覗かせる畏れの感情。歳を追って世の中の仕組みを学ぶ内、私腹を肥やしているように見える両親。
 ただ、籠の中の鳥である私にはそれを確かめる術はなく、ただあるがままの日常を受け入れる日々だったのです。

 淑女としての教養を身につけるため、王都の学院に入学したその時、私は籠から解き放たれたのです。ええ、強制的でしたわ。両親の評判、貴族の間で普通に悪かったので。

 王国の片隅で小狡い手を使って資産を蓄える新興貴族。それが我が家に対する世間の評価でしたの。小狡い、というのがポイントですわね。領民に重税を課すわけではなく、適度に利権を抑える。それでいて、民に還元しない。
 まさに小悪党。私の調べた範囲では、反社会的な団体を使った酷い手も時折使っているようでしたわ。

 家の評判が地に落ちた私の学園生活は……まあ、ぼちぼちでしたわ。同類みたいな貴族令嬢が自然と寄ってきましたの。性格はそれぞれ、親のようであったり、親が悩みの種だったり。
 私は結局、親が悩みの種になりましたわ。実家に帰った時、それとなく悪徳行為を控えたらと言ってみたら「お前はそんなことより、いい貴族の男を見つけろ。それが仕事だ」とバッサリでしたので。学院は婚活会場ではありませんのよ。……そういう側面もありますけれど。

 ともあれ、両親に絶望していた私は、接触を最小限に抑え、卒業後にどうにか距離を取るべく活動しておりましたの。いつ自分に官憲の刃が突きつけられるかわからない家など、無くなっても痛くありませんものね。

 家はともかく良識のある娘。そんな評価を得つつ、もうすぐ卒業。
 そのタイミングでこれですわ。最悪ですわ。思った以上にちゃんと仕事しましたわね、王国騎士団。

「申し訳ありません。ルルシア様。私の両親が迂闊なばかりに……」

 学院の一室。私の部屋で下級生が涙を流しています。親が私と同じようなタイプの生徒です。どうやら、彼女の両親から情報が漏れて、我が家まで波及したらしいですの。

「安心なさい。遅かれ早かれ、こうなっていたわ。貴方もわかるでしょう……」
「……ルルシア様」

 そう、わかっていたのです。これだけ悪評が広まれば、国だって目を付ける。隙あらば、つけいってくる。世の中そんなもんですわ。
 さしあたって、私がするべきは、ここで彼女を慰めることではありませんわね。

「まずは自分達が生きていくために動きましょう。馬車を用意するわよ」

 別に国外逃亡するわけではありません。
 まずは王都にある別邸に行くのです。私の両親も一年の半分は王都におりますので。田舎よりも贅沢な都会暮らしが好き。悪徳領主らしい生活をしておりますの。
 おかげで今、大変なことになっているわけですけれどね。親が王都で培った人間関係の賜物ですわね、この事件。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった

木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。 今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。 せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。 床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。 その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。 他サイトでもアップしています。

世界観制約で罵倒しかできない悪役令嬢なのに、なぜか婚約者が溺愛してくる

杓子ねこ
恋愛
前世の記憶を取り戻した悪役令嬢ヴェスカは、王太子との婚約を回避し、学園でもおとなしくすごすつもりだった。 なのに聖女セノリィの入学とともに口からは罵倒の言葉しか出なくなり、周囲からは冷たい目で見られる――ただ一人を除いては。 なぜか婚約者に収まっている侯爵令息ロアン。 彼だけはヴェスカの言動にひるまない。むしろ溺愛してくる。本当になんで? 「ヴェスカ嬢、君は美しいな」 「ロアン様はお可哀想に。今さら気づくなんて、目がお悪いのね」 「そうかもしれない、本当の君はもっと輝いているのかも」 これは侯爵令息が一途に悪役令嬢を思い、ついでにざまあするお話。 悪役令嬢が意外と無自覚にシナリオ改変を起こしまくっていた話でもある。 ※小説家になろうで先行掲載中

追放された悪役令嬢、辺境で植物魔法に目覚める。銀狼領主の溺愛と精霊の加護で幸せスローライフ!〜真の聖女は私でした〜

黒崎隼人
恋愛
「王国の害悪」として婚約破棄され、魔物が棲む最果ての地『魔狼の森』へ追放された悪役令嬢リリア。 しかし、彼女には前世の記憶と、ゲーム知識、そして植物を癒やし育てる不思議な力があった! 不毛の地をハーブ園に変え、精霊と友達になり、スローライフを満喫しようとするリリア。 そんな彼女を待っていたのは、冷徹と噂される銀狼の獣人領主・カイルとの出会いだった。 「お前は、俺の宝だ」 寡黙なカイルの不器用な優しさと、とろけるような溺愛に包まれて、リリアは本当の幸せを見つけていく。 一方、リリアを追放した王子と偽聖女には、破滅の足音が迫っていて……? 植物魔法で辺境を開拓し、獣人領主に愛される、大逆転ハッピーエンドストーリー!

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

処理中です...