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第19話:クラム様とお話
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流血の神殿、三階から上がれる最上階。最後のフロアはまるごとクラム様の生活スペースになっている。白く冷たい石造りの応接に、泊まるものがいるのかわからない来客用の寝室、主に風景が飾られた絵画の部屋など、贅沢な作りの部屋が多く用意されている。各所にはクラム様に吸血された下僕が配置され、常に清潔に保たれているのも特徴だ。
その中でもオレ達は応接に通された。応接といっても、玉座に腰掛けるクラムに向かって話す、謁見の間みたいな部屋である。
「セバス、茶の用意をしてやってくれ。久しぶりの客人だ」
「かしこまりました。クラム様」
最上階に上がるなり横にやってきた、紳士然とした顔色の悪い男性が恭しく頭を下げて、退出する。彼はクラム様の世話係だ。たしか話すと意外と気さくで親切な男だったはず。
「では、茶の用意ができるまで、お前達の話を聞くとしよう。さあ、話すがいい」
玉座に膝を立ててだらしなく座ると、クラム様が悠然と言い放った。際どい格好で際どいポーズを取るのが好きな人だ。一瞬目を取られかけたが、ここは緊張感を持たねば。
「話すと言っても……」
「クラム様は外に出ないから本当に何でもいいから聞きたいだけなんだ。オレ達の学園の話からでも上手く話せれば楽しんでくれるはず」
「わかっているではないか。マイスの言った通り、あまり外にでなくて世事に疎いから何でも珍しく聞こえる。悪い聞き手ではないぞ」
「フォミナ、学園のこと話せるか? オレよりは上手く説明できると思うんだけど。できるだけフォローするから」
「じゃあ、私達が冒険者になる前のことを……」
状況に困惑しつつも、フォミナは学園時代のことを話し始めた。オレもゲーム記憶を頼りにできるだけ助けよう。
「なるほど。今の学校は貴族と庶民が混ざり合って通っておるのか、面白い。身分差があれば、色々と軋轢があるだろうに。わざわざ面倒なことをするとはのう」
「学園内で格差はありますが、たまにそういう垣根を越える人もいます」
「なるほど。いつの時代も変わり者はいるものだ。それよりも学園祭とやらが面白そうだのう。妾も見にいきたい」
「許可さえあれば誰でも入れるはずですよ。クラム様ならどうにかできるのでは?」
「ううむ、この体の事情さえなければ……」
一時間後、クラム様はフォミナの話す「ゆるふわ日常系学園生活」の虜になっていた。なんか、ゲーム以上にまったり過ごしていたらしい、この子。
最初は玉座にいたクラム様だが、セバスがお茶と菓子の用意が済んだことを告げると、テーブルを持ってこさせてティーパーティーの様になった。今は目の前で楽しそうにしている。持ってるのが銀色の杯で、中に入ってるのが誰かの血液だけど。
「最初に妾の宮殿を荒らしているのを見たときは軽く仕置きをしてやろうかと思ったが、なかなか良いものに出会えたのう」
「そんな。楽しんでいただけてよかったです」
胸をおさえながら心底安心した様子でフォミナが言った。危なかった、やっぱり最初の時はちょっと機嫌悪かったんだな。
「では、次はお前だな、マイス。お前の話を聞きたい。それも色々と。お前はなにをしている? 死霊が魔法で眠ったり麻痺したのは何の技術だ。ここに来たのもお前の判断だろう、目的はなんだ」
「えっと、それは……」
正直、クラム様相手ならオレのことを全て話してもいいと思っている。そのくらいの度量があるし、自身が超常の存在だから、荒唐無稽な話を受け容れてくれる可能性が高い。
「口ごもるか……。ふむ、訳ありだろうとは思ったが。よし、都合良くしてやろう。セバス、フォミナの相手をせよ。妾はマイスと二人で話す」
「承知いたしました。クラム様」
セバスが現れて丁寧なお辞儀をしたと思ったら、クラム様が満面の笑みでこちらを見ていった。
「では、行くとしようか。妾の部屋に」
「マイス君っ!」
フォミナの焦りを帯びた叫びが聞こえたと思ったら、オレの意識は暗転した。
その中でもオレ達は応接に通された。応接といっても、玉座に腰掛けるクラムに向かって話す、謁見の間みたいな部屋である。
「セバス、茶の用意をしてやってくれ。久しぶりの客人だ」
「かしこまりました。クラム様」
最上階に上がるなり横にやってきた、紳士然とした顔色の悪い男性が恭しく頭を下げて、退出する。彼はクラム様の世話係だ。たしか話すと意外と気さくで親切な男だったはず。
「では、茶の用意ができるまで、お前達の話を聞くとしよう。さあ、話すがいい」
玉座に膝を立ててだらしなく座ると、クラム様が悠然と言い放った。際どい格好で際どいポーズを取るのが好きな人だ。一瞬目を取られかけたが、ここは緊張感を持たねば。
「話すと言っても……」
「クラム様は外に出ないから本当に何でもいいから聞きたいだけなんだ。オレ達の学園の話からでも上手く話せれば楽しんでくれるはず」
「わかっているではないか。マイスの言った通り、あまり外にでなくて世事に疎いから何でも珍しく聞こえる。悪い聞き手ではないぞ」
「フォミナ、学園のこと話せるか? オレよりは上手く説明できると思うんだけど。できるだけフォローするから」
「じゃあ、私達が冒険者になる前のことを……」
状況に困惑しつつも、フォミナは学園時代のことを話し始めた。オレもゲーム記憶を頼りにできるだけ助けよう。
「なるほど。今の学校は貴族と庶民が混ざり合って通っておるのか、面白い。身分差があれば、色々と軋轢があるだろうに。わざわざ面倒なことをするとはのう」
「学園内で格差はありますが、たまにそういう垣根を越える人もいます」
「なるほど。いつの時代も変わり者はいるものだ。それよりも学園祭とやらが面白そうだのう。妾も見にいきたい」
「許可さえあれば誰でも入れるはずですよ。クラム様ならどうにかできるのでは?」
「ううむ、この体の事情さえなければ……」
一時間後、クラム様はフォミナの話す「ゆるふわ日常系学園生活」の虜になっていた。なんか、ゲーム以上にまったり過ごしていたらしい、この子。
最初は玉座にいたクラム様だが、セバスがお茶と菓子の用意が済んだことを告げると、テーブルを持ってこさせてティーパーティーの様になった。今は目の前で楽しそうにしている。持ってるのが銀色の杯で、中に入ってるのが誰かの血液だけど。
「最初に妾の宮殿を荒らしているのを見たときは軽く仕置きをしてやろうかと思ったが、なかなか良いものに出会えたのう」
「そんな。楽しんでいただけてよかったです」
胸をおさえながら心底安心した様子でフォミナが言った。危なかった、やっぱり最初の時はちょっと機嫌悪かったんだな。
「では、次はお前だな、マイス。お前の話を聞きたい。それも色々と。お前はなにをしている? 死霊が魔法で眠ったり麻痺したのは何の技術だ。ここに来たのもお前の判断だろう、目的はなんだ」
「えっと、それは……」
正直、クラム様相手ならオレのことを全て話してもいいと思っている。そのくらいの度量があるし、自身が超常の存在だから、荒唐無稽な話を受け容れてくれる可能性が高い。
「口ごもるか……。ふむ、訳ありだろうとは思ったが。よし、都合良くしてやろう。セバス、フォミナの相手をせよ。妾はマイスと二人で話す」
「承知いたしました。クラム様」
セバスが現れて丁寧なお辞儀をしたと思ったら、クラム様が満面の笑みでこちらを見ていった。
「では、行くとしようか。妾の部屋に」
「マイス君っ!」
フォミナの焦りを帯びた叫びが聞こえたと思ったら、オレの意識は暗転した。
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