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第23話:気になる出来事
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流血の宮殿二階の収入は八〇〇万シルバーだった。凄い。半日も戦ってないのにこの収入。クラム様が現れずに更に高収入な三階で狩りまくっていたら、一体オレ達の財産はどのくらいまで膨らんでいたのだろうか。
大量の魔石から換金された現金は即座にギルド併設の銀行に預けられ、今回も新人らしい担当の子が震える手でオレ達に通帳を渡してくれた。
とりあえず、ギルドでの用件は終わったオレ達はそのまま流れるように神殿へ。フォミナの視力治療は一〇万シルバーと高額なので、何度か念押しされたりもしたが、穏やかな心でやってもらった。
「貯金の余裕は心の余裕。セアラ姉さんの口癖ですが、ちょっとわかる気がします」
「まあ、当面の生活を心配しないでいいのは気持ちとして楽だよね」
神殿近くにあった、川沿いのオープンカフェでのんびりカフェオレを飲みながら、オレはフォミナとのんびり話していた。しかし嫌な口癖の親族だな。
「本当に視力は問題ないの? あっさり終わったけど」
「はい。眼鏡無しでマイス君の顔もよく見えますよ。魔法的にはちょっと特殊な回復魔法らしいですから。一瞬な上で事務的なのはありがたみにちょっとかけますね」
今回も神殿の対応は事務的だった。フォミナは何枚も書類に記入した上、待合室で椅子に座って並び、呼び出されたら診察室……じゃなくて儀式室に入って三分くらいで帰ってきた。 神殿の組織、滅茶苦茶お役所みたいにシステム化されてるな。効率的にはいいことなんだろうけど、なんだこの納得しがたい気持ちは。
オレ達はそのまま魔法屋にも立ち寄り、封技石を使って<超越者>のスキルを付与。オレの成長プランも一歩前進だ。
「こうして落ち着けて良かったです。昨日は色々気が気じゃ無かったですから」
しみじみと語りながら、パフェを食べるフォミナ。なお、直前にパンケーキも平らげている。甘い物がとても好きらしい。
「あれはびっくりしたな。結果的には良かったけれど。でも、次の予定を考えなきゃいけないし」
「私はマイス君についていきますよ。事前に情報を共有してくれればもっと良いですけれど」
「それはもう、これから話しますとも。ああ、でもその前に、帝国と商業連合の戦争の様子とか、国境付近の情報ってどうやれば手に入るかな?」
遠い北方の戦争の話は、殆ど聞こえてこない。ゲームよりも早く開戦してるのが気になるし、そろそろ情報を仕入れておきたいんだが。
「うーん……。私の実家みたいな、そこそこ程度の規模では無理なんじゃないでしょうか。それこそ、国政に直接関われるくらいの偉い人と繋がりがないと。大商人とか、大領主とか、王族とか……」
「そうか。そうだよな……。下手をすれば国家機密だろうしな」
まだ夏にもなっていないが、帝国の動きはできるだけ把握しておきたい。連中が開戦するタイミングで遠くのダンジョンにいました何てことにはしたくない。
ゲーム知識を使って個人のレベルを上げまくることは可能だけど、情報力はどうすればいいんだろうか。それなりの品質の情報にアクセスできるような状況を作っておきたいんだけど。
「これから西に移動することになるんだけど、それに合わせて情報も拾えるようにしたいな」
「学園時代に頑張ってコネクションを作っておけば良かったかもですね。あそこは偉い人の子息令嬢が沢山いましたから」
「だなぁ……」
本当に今更気づいてももう遅い。オレもフォミナも学園で将来を見据えてコネ作りをするタイプでなかったのが悔やまれる。
「クラム様もあんまり頼れないだろうしなぁ。従僕も含めて殆どあそこから出れないだろうから」
「こ、これから頑張りましょう。落ち込むことはないですよ! 今のところ、上手くいってるんでしょ?」
あからさまに落ち込んだオレを心配したのか、フォミナが握りこぶしで大げさに励ましてくれた。……頑張ろう。今度、こっそり伊達眼鏡買ってプレゼントしたら喜ぶかな。駄目だな、別のものにしよう。
「三次職を目指しつつ、今度は情報入手についても考えなきゃなんだけど……ん? なんだあれ?」
二人で腕組みして考えていると、川向こうの大通りが妙にキラキラしてるのに気がついた。
「あれは神聖騎士団ですね。向こうに本部がありますから。でも、おかしいですね。あの人数と装備、まるでどこかに出陣するみたいです」
「なにかあったのかな?」
そう思って周囲に気を配ってみると、他の客達にも対岸の神聖騎士団を見ているのがチラホラいた。会話に耳をそばだてると、「大討伐」「旧大聖堂」といった単語が聞こえてくる。
「旧大聖堂の大討伐とかみんな言ってるな」
「アンデッドが大量発生したんでしょうか? 滅多にないことなんですが……」
ミレスの町でアンデッドが大量発生するようなイベントはオレも覚えはない。あのゲーム内が世界全ての出来事というわけじゃないので当然ではある。
滅多にないことか……。これからこの国で色々と起きることを考えると、気になるな。
それに、フォミナも他人事じゃない雰囲気を出している。なんだかんだでお姉さんがいるわけだし、当然か。
「冒険者ギルドに、大討伐絡みの仕事がないか見にいこうか。フォミナも気になるみたいだし」
「いえ、そんなことは……嘘です。セアラ姉さん、口では調子がいいけど、実力がちょっと心配なんですよね」
そういうタイプなのかあの人。それを知らされると、動かないわけにもいかないな。時間もできちゃったことだし。
「じゃ、とりあえずギルドで聞いてみよう。上手くすれば、神聖騎士団の偉い人から情報を貰えるかもしれないし。フォミナの心配事も減るしね」
「ありがとうございます。マイス君」
「気にすることじゃないよ。オレも気になるし」
急ではあるが、次にやることが決まったオレ達は、手早く目の前の食事を片づけてカフェを後にした。
考えてみれば、換金以外の本来の用件で冒険者ギルドに行くの、初めてだな。
大量の魔石から換金された現金は即座にギルド併設の銀行に預けられ、今回も新人らしい担当の子が震える手でオレ達に通帳を渡してくれた。
とりあえず、ギルドでの用件は終わったオレ達はそのまま流れるように神殿へ。フォミナの視力治療は一〇万シルバーと高額なので、何度か念押しされたりもしたが、穏やかな心でやってもらった。
「貯金の余裕は心の余裕。セアラ姉さんの口癖ですが、ちょっとわかる気がします」
「まあ、当面の生活を心配しないでいいのは気持ちとして楽だよね」
神殿近くにあった、川沿いのオープンカフェでのんびりカフェオレを飲みながら、オレはフォミナとのんびり話していた。しかし嫌な口癖の親族だな。
「本当に視力は問題ないの? あっさり終わったけど」
「はい。眼鏡無しでマイス君の顔もよく見えますよ。魔法的にはちょっと特殊な回復魔法らしいですから。一瞬な上で事務的なのはありがたみにちょっとかけますね」
今回も神殿の対応は事務的だった。フォミナは何枚も書類に記入した上、待合室で椅子に座って並び、呼び出されたら診察室……じゃなくて儀式室に入って三分くらいで帰ってきた。 神殿の組織、滅茶苦茶お役所みたいにシステム化されてるな。効率的にはいいことなんだろうけど、なんだこの納得しがたい気持ちは。
オレ達はそのまま魔法屋にも立ち寄り、封技石を使って<超越者>のスキルを付与。オレの成長プランも一歩前進だ。
「こうして落ち着けて良かったです。昨日は色々気が気じゃ無かったですから」
しみじみと語りながら、パフェを食べるフォミナ。なお、直前にパンケーキも平らげている。甘い物がとても好きらしい。
「あれはびっくりしたな。結果的には良かったけれど。でも、次の予定を考えなきゃいけないし」
「私はマイス君についていきますよ。事前に情報を共有してくれればもっと良いですけれど」
「それはもう、これから話しますとも。ああ、でもその前に、帝国と商業連合の戦争の様子とか、国境付近の情報ってどうやれば手に入るかな?」
遠い北方の戦争の話は、殆ど聞こえてこない。ゲームよりも早く開戦してるのが気になるし、そろそろ情報を仕入れておきたいんだが。
「うーん……。私の実家みたいな、そこそこ程度の規模では無理なんじゃないでしょうか。それこそ、国政に直接関われるくらいの偉い人と繋がりがないと。大商人とか、大領主とか、王族とか……」
「そうか。そうだよな……。下手をすれば国家機密だろうしな」
まだ夏にもなっていないが、帝国の動きはできるだけ把握しておきたい。連中が開戦するタイミングで遠くのダンジョンにいました何てことにはしたくない。
ゲーム知識を使って個人のレベルを上げまくることは可能だけど、情報力はどうすればいいんだろうか。それなりの品質の情報にアクセスできるような状況を作っておきたいんだけど。
「これから西に移動することになるんだけど、それに合わせて情報も拾えるようにしたいな」
「学園時代に頑張ってコネクションを作っておけば良かったかもですね。あそこは偉い人の子息令嬢が沢山いましたから」
「だなぁ……」
本当に今更気づいてももう遅い。オレもフォミナも学園で将来を見据えてコネ作りをするタイプでなかったのが悔やまれる。
「クラム様もあんまり頼れないだろうしなぁ。従僕も含めて殆どあそこから出れないだろうから」
「こ、これから頑張りましょう。落ち込むことはないですよ! 今のところ、上手くいってるんでしょ?」
あからさまに落ち込んだオレを心配したのか、フォミナが握りこぶしで大げさに励ましてくれた。……頑張ろう。今度、こっそり伊達眼鏡買ってプレゼントしたら喜ぶかな。駄目だな、別のものにしよう。
「三次職を目指しつつ、今度は情報入手についても考えなきゃなんだけど……ん? なんだあれ?」
二人で腕組みして考えていると、川向こうの大通りが妙にキラキラしてるのに気がついた。
「あれは神聖騎士団ですね。向こうに本部がありますから。でも、おかしいですね。あの人数と装備、まるでどこかに出陣するみたいです」
「なにかあったのかな?」
そう思って周囲に気を配ってみると、他の客達にも対岸の神聖騎士団を見ているのがチラホラいた。会話に耳をそばだてると、「大討伐」「旧大聖堂」といった単語が聞こえてくる。
「旧大聖堂の大討伐とかみんな言ってるな」
「アンデッドが大量発生したんでしょうか? 滅多にないことなんですが……」
ミレスの町でアンデッドが大量発生するようなイベントはオレも覚えはない。あのゲーム内が世界全ての出来事というわけじゃないので当然ではある。
滅多にないことか……。これからこの国で色々と起きることを考えると、気になるな。
それに、フォミナも他人事じゃない雰囲気を出している。なんだかんだでお姉さんがいるわけだし、当然か。
「冒険者ギルドに、大討伐絡みの仕事がないか見にいこうか。フォミナも気になるみたいだし」
「いえ、そんなことは……嘘です。セアラ姉さん、口では調子がいいけど、実力がちょっと心配なんですよね」
そういうタイプなのかあの人。それを知らされると、動かないわけにもいかないな。時間もできちゃったことだし。
「じゃ、とりあえずギルドで聞いてみよう。上手くすれば、神聖騎士団の偉い人から情報を貰えるかもしれないし。フォミナの心配事も減るしね」
「ありがとうございます。マイス君」
「気にすることじゃないよ。オレも気になるし」
急ではあるが、次にやることが決まったオレ達は、手早く目の前の食事を片づけてカフェを後にした。
考えてみれば、換金以外の本来の用件で冒険者ギルドに行くの、初めてだな。
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