ゲームの世界に転生したら、いきなり全滅ルートに突入した件〜攻略知識を活かして、なんとかして生き延びる〜

みなかみしょう

文字の大きさ
46 / 51

第46話:対策を練る

しおりを挟む
 ラスボスである古代種を倒す。そのための算段を立てる。
 急な話だが、こうなったらやるしかない。

「それで、どんな方法を取るの? あたしに出来ることなら協力するわよ」
「じゃ、魔法でオレをフォミナを帝都に連れて行ってくれ。それで皇帝に会わせてくれれば、正面から倒してみせる」
「……直接的すぎないか?」

 あまりにも真正面すぎる作戦に、魔王が引いていた。

「それが一番早い。準備さえ整えれば、皇帝は倒せる。問題はそれ以外のことだ」
「あの、皇帝がいなくなったら、帝国はどうなるんでしょうか?」

 おずおずと手を上げたフォミナの問いに、クリスが答える。

「多分、相当混乱するだろうな。戦争どころでは無くなる」
「だろうな。クリス、できたらそのままクーデターでも起こして政権を取れないか?」
「……なんか、あたしが凄く大変そうな気がしてきたんだけど」

 ようやく気づいたか。帝国の政治中枢に深く関わってるんだから、全力で色々任せるつもりだ。というか、頼れるのがこの人しかいない。オレはラスボスは倒せるが、帝国の混乱を治めたり、戦乱ルートを完全に止める能力はないのだ。

「他国の政治問題はオレ達にはどうしようもない。皇帝がいなくなった後、できるだけ早く混乱を収拾。ついでに戦争も取りやめにしてくれ」

 我ながら無茶な要求をしているとは思うが、責任を一人に全部押しつければ可能だとも思える。これさえできれば、オレは自分の死を含めたバッドエンドを回避できる。

「……ぬぅ」
「どうだ、クリス、できるのか? できないのか?」

 クラム様に問いかけられて、考え込んでいたクリスは難しい顔をして口を開く。

「……なんとかなるでしょう。そもそも戦争自体が急な話なので、役人も民も疲弊しています。皇帝が自ら押し進めているのは広く知られているので、反抗は可能。しばらく、内乱状態になるかもしれませんね」
「クリス以外にも洗脳されている人が多くいるはずだ。彼らが一斉に正気に戻れば、いけるんじゃないか?」
 
 オレの言葉に、クラムは表情を少し明るくした。

「そうか。その可能性は高いわね。行き当たりばったりになるけど……。いや、そもそも貴方達は皇帝と戦って大丈夫なの? いきなり洗脳を受けるかもしれないのよ?」
「この二人は三次職だ。神の加護を受けし者だから、生半可な洗脳など通じんよ。特に、そこのマイスなど、この時のために用意された節がある。白黒どちらかの神が守るだろう」

 ゲームでも三次職になってないと、まともに戦えなかったけど、そう解釈されるのか。
 たしかに、神と接触して得た力というのは納得がいく。フォミナなんか、ご神体みたいに拝まれてることがあるしな。

「マイス、妾の方で力になれることはあるか? 乗りかかった舟だ、協力しよう。あとで起きたことを話して聞かせてくれれば良い」
「宝物をいくつか賜ることができれば。それと、クリスの城にある武器も欲しい」
「む。あたしの城?」
「宝箱の中に、七悪の杖っていうのがあるはずだ。それをくれ」
「なんで知ってるのよ……気味が悪いな」
 
 そういいつつも、クリスは了承してくれた。

 ちなみに七悪の杖とは攻撃に複数の状態異常が乗るようになる杖である。毒、麻痺、眠り、幻覚、猛毒、衰弱、沈黙、の判定が一斉に行われる。魔法攻撃力の増加は少ないが、<貫通>と組み合わせると、とんでもなく強力になるアイテムだ。
 杖で強化できない魔法攻撃力は、レベルアップとアクセサリで補えば良い。これで、ラスボスはほぼ完封できる。

「そうだ。貴方達二人を帝都に連れて行くのはいいけど、さすがに変装が必要よ。そのままだと謁見の間までいけないかも」
「では、そこは妾が幻術をかけてやるとしよう。古代種の宿った皇帝以外なら、見破れる術者はいまい」

 これはありがたい。身を隠すアイテムを確保しなきゃいけないかと思ったけど、手間が省けた。

「あの、戦力ですがエリアさんはどうでしょう? そろそろ三次職になれると思うんですが」
「おお、もうそこまで来てるのか。どうするかな……」

 メタポー狩りの成果が著しいのは嬉しいが、悩み所だ。イベントを重ねて、武器が神剣イフリートになってるなら、かなり頼りになるんだが。

「エリアというのは辺境伯の娘だな。町にいた方がいいと思うぞ。十日以内に帝国軍が集結し、開戦する。その時に領主の親族は必要だろう」
「いやまて、それを早く言え」

 十日以内に開戦? マジか。思った以上に差し迫ってた。というか、以内ってなんだ。もっと時間ははっきりとしてくれ。

「……マイス君」
「十日以内ってことは、明日にも開戦する可能性があるのか?」
「さすがにそれはないけど、五日後とかだとわからないわね」

 全然時間がなかった。できるだけレベルを上げてから挑みたいのに。
 もし、帝国と王国の戦端が開いてから皇帝を倒したら、その後どうなるか、ますますわからなくなる。下手をすれば、王国が帝国に逆侵攻しかねない。
 なんでこんなギリギリな状況なんだ。いや、ギリギリなだけマシか……。元々普通に戦乱ルートを切り抜けるつもりだったんだし。

「できるだけ急ぐ。そしてクリスはできるだけ戦端を開くのを遅らせてくれ。あらゆる力を使うんだ」
「む、無茶をいうわね。あたしでも限度が……いや、そうね。なんとか六日は確保するわ」
「六日か、マイスよ、それでいけるものか?」

 クラム様に問われたが、不確定要素が多くて何ともいえない。
 だから、オレははっきりしていることだけ答えることにした。

「とりあえず、皇帝……古代種だけはしっかり倒してみせます」

 ラスボスを倒した後の事までは責任を持てない。できるだけ穏やかにことが収まることを祈るのみだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

処理中です...