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第46話:対策を練る
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ラスボスである古代種を倒す。そのための算段を立てる。
急な話だが、こうなったらやるしかない。
「それで、どんな方法を取るの? あたしに出来ることなら協力するわよ」
「じゃ、魔法でオレをフォミナを帝都に連れて行ってくれ。それで皇帝に会わせてくれれば、正面から倒してみせる」
「……直接的すぎないか?」
あまりにも真正面すぎる作戦に、魔王が引いていた。
「それが一番早い。準備さえ整えれば、皇帝は倒せる。問題はそれ以外のことだ」
「あの、皇帝がいなくなったら、帝国はどうなるんでしょうか?」
おずおずと手を上げたフォミナの問いに、クリスが答える。
「多分、相当混乱するだろうな。戦争どころでは無くなる」
「だろうな。クリス、できたらそのままクーデターでも起こして政権を取れないか?」
「……なんか、あたしが凄く大変そうな気がしてきたんだけど」
ようやく気づいたか。帝国の政治中枢に深く関わってるんだから、全力で色々任せるつもりだ。というか、頼れるのがこの人しかいない。オレはラスボスは倒せるが、帝国の混乱を治めたり、戦乱ルートを完全に止める能力はないのだ。
「他国の政治問題はオレ達にはどうしようもない。皇帝がいなくなった後、できるだけ早く混乱を収拾。ついでに戦争も取りやめにしてくれ」
我ながら無茶な要求をしているとは思うが、責任を一人に全部押しつければ可能だとも思える。これさえできれば、オレは自分の死を含めたバッドエンドを回避できる。
「……ぬぅ」
「どうだ、クリス、できるのか? できないのか?」
クラム様に問いかけられて、考え込んでいたクリスは難しい顔をして口を開く。
「……なんとかなるでしょう。そもそも戦争自体が急な話なので、役人も民も疲弊しています。皇帝が自ら押し進めているのは広く知られているので、反抗は可能。しばらく、内乱状態になるかもしれませんね」
「クリス以外にも洗脳されている人が多くいるはずだ。彼らが一斉に正気に戻れば、いけるんじゃないか?」
オレの言葉に、クラムは表情を少し明るくした。
「そうか。その可能性は高いわね。行き当たりばったりになるけど……。いや、そもそも貴方達は皇帝と戦って大丈夫なの? いきなり洗脳を受けるかもしれないのよ?」
「この二人は三次職だ。神の加護を受けし者だから、生半可な洗脳など通じんよ。特に、そこのマイスなど、この時のために用意された節がある。白黒どちらかの神が守るだろう」
ゲームでも三次職になってないと、まともに戦えなかったけど、そう解釈されるのか。
たしかに、神と接触して得た力というのは納得がいく。フォミナなんか、ご神体みたいに拝まれてることがあるしな。
「マイス、妾の方で力になれることはあるか? 乗りかかった舟だ、協力しよう。あとで起きたことを話して聞かせてくれれば良い」
「宝物をいくつか賜ることができれば。それと、クリスの城にある武器も欲しい」
「む。あたしの城?」
「宝箱の中に、七悪の杖っていうのがあるはずだ。それをくれ」
「なんで知ってるのよ……気味が悪いな」
そういいつつも、クリスは了承してくれた。
ちなみに七悪の杖とは攻撃に複数の状態異常が乗るようになる杖である。毒、麻痺、眠り、幻覚、猛毒、衰弱、沈黙、の判定が一斉に行われる。魔法攻撃力の増加は少ないが、<貫通>と組み合わせると、とんでもなく強力になるアイテムだ。
杖で強化できない魔法攻撃力は、レベルアップとアクセサリで補えば良い。これで、ラスボスはほぼ完封できる。
「そうだ。貴方達二人を帝都に連れて行くのはいいけど、さすがに変装が必要よ。そのままだと謁見の間までいけないかも」
「では、そこは妾が幻術をかけてやるとしよう。古代種の宿った皇帝以外なら、見破れる術者はいまい」
これはありがたい。身を隠すアイテムを確保しなきゃいけないかと思ったけど、手間が省けた。
「あの、戦力ですがエリアさんはどうでしょう? そろそろ三次職になれると思うんですが」
「おお、もうそこまで来てるのか。どうするかな……」
メタポー狩りの成果が著しいのは嬉しいが、悩み所だ。イベントを重ねて、武器が神剣イフリートになってるなら、かなり頼りになるんだが。
「エリアというのは辺境伯の娘だな。町にいた方がいいと思うぞ。十日以内に帝国軍が集結し、開戦する。その時に領主の親族は必要だろう」
「いやまて、それを早く言え」
十日以内に開戦? マジか。思った以上に差し迫ってた。というか、以内ってなんだ。もっと時間ははっきりとしてくれ。
「……マイス君」
「十日以内ってことは、明日にも開戦する可能性があるのか?」
「さすがにそれはないけど、五日後とかだとわからないわね」
全然時間がなかった。できるだけレベルを上げてから挑みたいのに。
もし、帝国と王国の戦端が開いてから皇帝を倒したら、その後どうなるか、ますますわからなくなる。下手をすれば、王国が帝国に逆侵攻しかねない。
なんでこんなギリギリな状況なんだ。いや、ギリギリなだけマシか……。元々普通に戦乱ルートを切り抜けるつもりだったんだし。
「できるだけ急ぐ。そしてクリスはできるだけ戦端を開くのを遅らせてくれ。あらゆる力を使うんだ」
「む、無茶をいうわね。あたしでも限度が……いや、そうね。なんとか六日は確保するわ」
「六日か、マイスよ、それでいけるものか?」
クラム様に問われたが、不確定要素が多くて何ともいえない。
だから、オレははっきりしていることだけ答えることにした。
「とりあえず、皇帝……古代種だけはしっかり倒してみせます」
ラスボスを倒した後の事までは責任を持てない。できるだけ穏やかにことが収まることを祈るのみだ。
急な話だが、こうなったらやるしかない。
「それで、どんな方法を取るの? あたしに出来ることなら協力するわよ」
「じゃ、魔法でオレをフォミナを帝都に連れて行ってくれ。それで皇帝に会わせてくれれば、正面から倒してみせる」
「……直接的すぎないか?」
あまりにも真正面すぎる作戦に、魔王が引いていた。
「それが一番早い。準備さえ整えれば、皇帝は倒せる。問題はそれ以外のことだ」
「あの、皇帝がいなくなったら、帝国はどうなるんでしょうか?」
おずおずと手を上げたフォミナの問いに、クリスが答える。
「多分、相当混乱するだろうな。戦争どころでは無くなる」
「だろうな。クリス、できたらそのままクーデターでも起こして政権を取れないか?」
「……なんか、あたしが凄く大変そうな気がしてきたんだけど」
ようやく気づいたか。帝国の政治中枢に深く関わってるんだから、全力で色々任せるつもりだ。というか、頼れるのがこの人しかいない。オレはラスボスは倒せるが、帝国の混乱を治めたり、戦乱ルートを完全に止める能力はないのだ。
「他国の政治問題はオレ達にはどうしようもない。皇帝がいなくなった後、できるだけ早く混乱を収拾。ついでに戦争も取りやめにしてくれ」
我ながら無茶な要求をしているとは思うが、責任を一人に全部押しつければ可能だとも思える。これさえできれば、オレは自分の死を含めたバッドエンドを回避できる。
「……ぬぅ」
「どうだ、クリス、できるのか? できないのか?」
クラム様に問いかけられて、考え込んでいたクリスは難しい顔をして口を開く。
「……なんとかなるでしょう。そもそも戦争自体が急な話なので、役人も民も疲弊しています。皇帝が自ら押し進めているのは広く知られているので、反抗は可能。しばらく、内乱状態になるかもしれませんね」
「クリス以外にも洗脳されている人が多くいるはずだ。彼らが一斉に正気に戻れば、いけるんじゃないか?」
オレの言葉に、クラムは表情を少し明るくした。
「そうか。その可能性は高いわね。行き当たりばったりになるけど……。いや、そもそも貴方達は皇帝と戦って大丈夫なの? いきなり洗脳を受けるかもしれないのよ?」
「この二人は三次職だ。神の加護を受けし者だから、生半可な洗脳など通じんよ。特に、そこのマイスなど、この時のために用意された節がある。白黒どちらかの神が守るだろう」
ゲームでも三次職になってないと、まともに戦えなかったけど、そう解釈されるのか。
たしかに、神と接触して得た力というのは納得がいく。フォミナなんか、ご神体みたいに拝まれてることがあるしな。
「マイス、妾の方で力になれることはあるか? 乗りかかった舟だ、協力しよう。あとで起きたことを話して聞かせてくれれば良い」
「宝物をいくつか賜ることができれば。それと、クリスの城にある武器も欲しい」
「む。あたしの城?」
「宝箱の中に、七悪の杖っていうのがあるはずだ。それをくれ」
「なんで知ってるのよ……気味が悪いな」
そういいつつも、クリスは了承してくれた。
ちなみに七悪の杖とは攻撃に複数の状態異常が乗るようになる杖である。毒、麻痺、眠り、幻覚、猛毒、衰弱、沈黙、の判定が一斉に行われる。魔法攻撃力の増加は少ないが、<貫通>と組み合わせると、とんでもなく強力になるアイテムだ。
杖で強化できない魔法攻撃力は、レベルアップとアクセサリで補えば良い。これで、ラスボスはほぼ完封できる。
「そうだ。貴方達二人を帝都に連れて行くのはいいけど、さすがに変装が必要よ。そのままだと謁見の間までいけないかも」
「では、そこは妾が幻術をかけてやるとしよう。古代種の宿った皇帝以外なら、見破れる術者はいまい」
これはありがたい。身を隠すアイテムを確保しなきゃいけないかと思ったけど、手間が省けた。
「あの、戦力ですがエリアさんはどうでしょう? そろそろ三次職になれると思うんですが」
「おお、もうそこまで来てるのか。どうするかな……」
メタポー狩りの成果が著しいのは嬉しいが、悩み所だ。イベントを重ねて、武器が神剣イフリートになってるなら、かなり頼りになるんだが。
「エリアというのは辺境伯の娘だな。町にいた方がいいと思うぞ。十日以内に帝国軍が集結し、開戦する。その時に領主の親族は必要だろう」
「いやまて、それを早く言え」
十日以内に開戦? マジか。思った以上に差し迫ってた。というか、以内ってなんだ。もっと時間ははっきりとしてくれ。
「……マイス君」
「十日以内ってことは、明日にも開戦する可能性があるのか?」
「さすがにそれはないけど、五日後とかだとわからないわね」
全然時間がなかった。できるだけレベルを上げてから挑みたいのに。
もし、帝国と王国の戦端が開いてから皇帝を倒したら、その後どうなるか、ますますわからなくなる。下手をすれば、王国が帝国に逆侵攻しかねない。
なんでこんなギリギリな状況なんだ。いや、ギリギリなだけマシか……。元々普通に戦乱ルートを切り抜けるつもりだったんだし。
「できるだけ急ぐ。そしてクリスはできるだけ戦端を開くのを遅らせてくれ。あらゆる力を使うんだ」
「む、無茶をいうわね。あたしでも限度が……いや、そうね。なんとか六日は確保するわ」
「六日か、マイスよ、それでいけるものか?」
クラム様に問われたが、不確定要素が多くて何ともいえない。
だから、オレははっきりしていることだけ答えることにした。
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