満州国馬賊討伐飛行隊

ゆみすけ

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お弁当の配達。

農繁期だ。

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 収穫の秋だ。 大豆や小麦の収穫で、農家はネコの手も借りたいほどだ。 いちいち、昼飯で家に帰る暇なぞない。 そこで、弁当を配るバイトがある。 そして、配るだけだから、娘らのバイトなのだ。 そして、バイトは日曜だけだ。 女学生は勉学が本分だ。 それで、休みの日しかバイトは認められないのだ。 お弁当配りは自転車だ。 ちなみに、満州国は新聞は壁新聞で、戸々への配達までは無い。 それで、お弁当配りならと女学生の、おこずかい稼ぎである。 その、行動を朝鮮馬賊に知られてしまったのだ。  ホウリ村のリンリン(パンダではない。)は16歳の花盛りだ。 しかし、父親は、半島の空挺部隊に殺られて、母親が故郷に帰り育てていた。 夏果は祖母だったが・・・ 母親は大豆の収穫などを手伝っていた。 あちこちの農家へ出稼ぎである。 そして、弁当はリンリンが自転車で、各戸の畑へ配達だ。 女学校は片親だから学費は無料だが、文具や細々した費用は必要だからだ。 セーラー服が高価で、買えない家庭には、卒業した生徒らからの寄付が定番だった。 それで、お古で、少し寸法が大きいがリンリンは、お下がりのセーラー服でランランだ。 朝、弁当をつめた箱が配送トラックで、届く。 そこから、定数を自転車のカゴに積んで配達だ。 自転車もバイトの道具だから、弁当会社からの支給である。 母子家庭では、とても買えないのである。 その可憐なリンリンに眼をつけたのが、朝鮮馬賊だ。 集団を狙えば、探索もきびしい、ひとりならと考えたのである。 だいたい弁当の配達は道順が決まっている。 その道順に待ち伏せするのは、カンタンだ。 立て札だけの国境を馬車で越えて、馬賊は農夫を装い、かねて決めていた場所に待ち伏せる。 そろそろか。 「来やしたぜ。」 と見張り役の馬賊だ。 「よし、おみぇは自転車を倒せ。」 「おみゃは娘に袋をかぶせろ。」 「ヘイ。」 3人の馬賊が待ち構える。 そうとは、知らないリンリンが自転車をコイデやってくる。 「それっ、いまだ。」 3人の馬賊はリンリンに襲い掛かった。 「アレ~。」 と定番の黄色い声だ。 ・・・ 「やけに、今日は弁当が来ないな。」 「もう、昼だぞ。」 「おい、様子を見て来い。」 そうして、リンリンが来るであろう道を行くと、自転車が転がってる。 荷物の弁当も散乱だ。 かんじんのリンリンの姿が無い。 「いない、リンリンがいない。」 そして、「自転車は転がってる、弁当もだ。」 「これは、さらわれたんじゃないか。」 「え、ひとりでも狙われるのか。」 「どうしょう。」 「馬車の轍があるぞ。」 「方向は。」 「村から出てる。」 「それなら、間違いねえ、ヤラれたんじゃ。」 「リンリンちゃん。」 可憐で清楚なリンリンは馬賊の餌食だ。 「どうする。」 「無線で、知らせるんだ。」 「あ、あ、集会所のアレか。」 昼飯どころではなくなり、村役人が無線機で・・・
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