満州国馬賊討伐飛行隊

ゆみすけ

文字の大きさ
上 下
159 / 212
敵前、強攻着陸だ。

引き込み脚でない、強みだ。

しおりを挟む
 97式戦闘機は引き込み脚ではない。 それで、空気抵抗があり、速度の5パーセントほど損をしている。 時速400キロが380キロということだ。 しかし、平坦な滑走路は飛行場以外ないのだ。 満州草原は、おおむね平坦ではあるが、朝鮮半島は平原ではない。 荒れ野なのだ。 木は植わっていない。 ヒトが焚き物に使い、跡を植樹しないからだ。 まあ、禿山ばかりなのだ。 だが、短い距離でも平坦な場所はそれなりにあるのだ。 97式は軽い、翼面積が大きいから揚力が多い。 それで、ふんわりと着陸できるのだ。 まあ、STOL性能が高いのである。 97式は、海軍の96式の良いところをパクッて中島が造った戦闘機だ。 96式は海軍が空母の運用で設計したから短い距離での滑走である。 それが、基本なので、97式も短い距離で運用できるのだ。 だが、今回は距離がある。 それで、増槽をぶら下げている。 そして、二人乗りだ。 武装や突撃ライフルも積んでいる。 それで、幾分重いのだ。 空中勤務員(陸軍での言い方だ。)は慎重に降りる場所をさがす。 後ろの陸戦隊員が、伝声菅で、「おい、下では、いくさだぞ。」 と伝えてきた。 新たに胴体の横に窓を作ってある。 そこから、下を見たらしい。 「どうやら、献女の奪い合いの最中らしいぞ。」 「どうする。」 「ホンダ飛曹に問うてみる。」 「こちら、3番機、1番機どうぞ。」 「こちら、1番機どうぞ。」 「下はいくさだぞ。」 「あ、あ、このスキに奪還だ。」 「どこに、降りる?」 「まかせろ、全機続け。」 ホンダ飛曹は降りるところにアテがあるらしい。 地上では、馬賊同士の争いの最中だ。 互いに、モーゼル銃で撃ち合いだ。 そして、相手に罵声を浴びせている。 子供のケンカだ。 拳銃での撃ち合いだから、なお質ちが悪いのだ。 地上に馬賊どもは、空の日本軍を観る間もないようだ。 互いに相手を罵倒して、殺し合いしか眼に入らないのだ。 そこが、ヤツらの本質なのだ。 騙し、騙され、裏切り、裏切られる、繰り返しだ。 とても、日本人では相手ができないのだ。 宗主国である、シナ様なら、扱い方を知ってるのだ。 シナ様いわく、言うことを聞かない犬以下と思い、あつかうのだそうだ。 我ら、日本人は関わらず、スキを観て奪還するのみだ。 「先に、誘拐された、娘らを確保だ。」 と無線が入る。 人質にでもされたら、やっかいだからだ。 「陸戦隊を乗せた機が、先に降りる。」 「そして、娘らを奪還して、それから殲滅だ。」 「了解した。」 ホンダ飛曹の1番機が広場を示す。 そして、着陸体制になる。 砂塵をけたてて97式は降りた。 引き込み脚では、脚が弱いから折れそうだが、頑丈な97式の脚は強攻着陸に耐えた。 上えから見ると平坦でも、それなりに凹凸はある。 そこで、すこしバウンドするが問題ないようだ。 「全機、オレに続け。」 ホンダ飛曹に続いて、15機全機が無事に降りたのだった。 さすが、ここでヘマするヤツは討伐隊には皆無なのだ。 「三人が機体の警備に残れ。」 「おう。」 「そして、突撃隊が娘らの奪還だ。」 ・・・・・
しおりを挟む

処理中です...