満州国馬賊討伐飛行隊

ゆみすけ

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15人対1人。

神様のイタズラか?

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 鉄カブトに馬賊の銃弾が跳ねる。 「キャ。」 と黄色い声だ。 跳弾が馬車の横板を貫いたのだ。 「しっかり、頭を下げてろ。」 退役兵は叫ぶ。 「ダ、ダ、ダ。」 「まずは、ひとり。」 これで、14対1だ。 3発でひとりなら、45発は弾が必要だ。 しかし、今日は初日だ。 それで、正直なところ、弾が20発しかないのだ。 馬賊は、ひとり倒して14人だ。 弾は、あと17発だ。 どうする、どうすんだ。 仕方なく銃のレバーを単発に切り替えた。 馬賊どもは、モーゼル連発銃で、好き放題撃ちやがる。 鉄カブトじゃなければ、とうに死んでる。 これを考えた独逸人はすごいと感心している場合ではない。 こちらが、あまり弾を連発しないので、馬賊どもは、「ヤツは弾がないぞ。」 と近づいてくる。 これでは、殺られるのは時間の問題だ。 「南無八幡大菩薩様・・・」 信心なぞ無い癖に、拝む退役兵だ。 「ズキューン。」 しまった、ハズれた、1発無駄だ。 これで、16発しか無い。 「おい、ヤツは、本当に弾なしだぞ、一気に攻めるぞ。」 「生娘を奪えば、値千金だ。」 馬賊どもは、こちらが劣勢だとわかったので、多数が一度に攻めてきた。 「いかん。」 もう、単発では、連射に切り替えて、「ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ。」 と連発だ。 突撃してきた馬賊が半分ほど倒れた。  しかし、いまの連射で、弾倉がカラだ。 あわてて、予備の最期の弾倉と入れ替える。 あと、9発しか銃弾はないのだ。 仕方がない、ここは自身が突撃して、散るしかない。 負けて、娘らを奪われるくらいなら、戦って死にたい。 御者に、「突撃する、娘らを連れて逃げろ。」 と最後の通告だ。 「時間をかせぐから、出来るだけ逃げおおせ。」 と叫んで馬車から飛び降りた。 突撃ライフルを腰だめに、「ウオッー。」 と叫んで突撃だ。 これが、戦場だ、これが教え子たちが死んでいった戦場だ。 思い残すことはない。 何発か当たった。 しかし、痛みを感じはしなかった。 ただ、突撃だ。 腰だめにしたライフルが吠える。 馬賊どもが・・・ 足が・・ 上が下だ。 天地がさかさまだ。 眼がみえん。 ・・・・ 気が付いたら、天井がみえた。 白い天井だ。 あれっ、どこの天井だ。 「気が付いたか。」 白衣のヤツが言った。 「オレは、どうして。」 「あ、あ、なんとか持ち直したようだ。」 「痛い。」 「それは、そうだ、まだ糸は取れないからな。」 「ここは、どこだ。」 「まあ、休め。」 白衣のヤツが言った。 そこは、あとでわかったのだが、奉天の陸軍病院だった。 山奥村の通学路から運ばれたようだ。 しかし、奉天までは遠い。 「え、え、飛行機で運んだから。」 「えっ、飛行機。」 「まあ、運ばれてきたときは、助からないかと思ったわ。」 看護婦が、包帯を替えながら教えてくれた。 つまり、後日談だ。 それは・・・・・ 
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