満州国馬賊討伐飛行隊

ゆみすけ

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偶然の神と運命の神が・・

神とは、頼ってはいけないものだ。

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 神頼み、なんて言葉があるが。 まあ、運任せということに近い。 私は、偶然の神は居るが、運命の神は居ないと思うのだ。 すでに、運命が決まっているのでは、おもしろくないからだ。 しかし、偶然の神は居ると、神ではないかもしれないが。 突撃する、倉田飛曹だが、彼は空中勤務員だ。 そう、陸戦の猛者ではない。 空戦の猛者だ。 そして、いまは陸戦の突撃だ。 ここには、陸戦の猛者が居ないからだが・・・ それで、それでだ。 腕に馬賊の銃弾が・・・ もんどりうって倒れる、倉田飛曹だ。 距離は、まだ半分あるが。 しかし、偶然にも倒れた場所は地面がくぼんでいた。 そこに、体を隠すことで、馬賊の銃弾を避けることができたのだ。 「ヤッタにだ。」 「倒れたニダ。」 「この調子でヤルにだ。」 と勝手なことをホザク馬賊らだ。 馬賊どもの人数が多いから、逃げる馬賊はいない。 腕の負傷は感じないが、これでは袋のネズミだ。 引くも、押すもできない。 鉄カブトに再度、銃弾が跳ねる。 飛行中は鉄カブトなぞ、かぶらないが、倉田の命を守ってくれるのだ。 鉄カブトに当たる銃弾も、跳弾は上に跳ねる。 それで、仲間を殺すことは少ないのだ。 隣の鉄カブトの跳弾で、死んでは救われない。 「くそっ。」 おもわず、自身の不甲斐なさに・・・ もう、残りの弾は、少ない。 これでは、娘らを守りきれない。 運命の神は、オレたちを見放したのか。 途方にくれる倉田飛曹だ。 馬賊どもは調子に乗って、撃ちまくる。 あいつら、どんだけ銃弾があるのだ。 まあ、そんなことを馬賊は考えていない。 感情で、動くヤツらは、調子に乗るとトコトン行ってしまうのだ。  そのころ、別方向に検索に飛んでいた97式が、やっとのことで飛来したのだ。 ここには、現在8機の97式が着陸したいる。 検索には、15機だ。 討伐隊本部のモールス信号で、娘らを誘拐した馬車の場所を聞いて、遠方であるから飛来するのに、まあ時間がかかったのである。 もう、増槽の燃料も少ない。 倉田飛曹が頭を低くして、馬賊の銃撃に耐えているとき、それはやってきた。 そう、戦闘機の機銃掃射だ。 倉田の頭の上を97式が飛んで、「ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ。」 と13ミリ機関銃弾が朝鮮馬賊に襲い掛かったのだ。 「うわっ、これはいかんニダ。」 「まて、逃げるな。」 「逃げるニダ。」 モーゼル銃を放り出して、逃げる馬賊どもだ。 もう、蜘蛛の子を散らすようだ。 15人の馬賊は、15丁の機関銃を放り出して、スタコラと逃げ出した。 朝鮮馬賊は、逃げ足だけは世界イチなのだ。 そう、偶然の神は倉田に微笑んだのである・・・・・(ヤツらの、逃げる速さは現実の朝鮮戦争で、実証づみだ。)
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