日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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満州国の防衛とは・・・

ソ連邦の野望を阻止する防波堤なのだ。

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 「うむ、これで何とかソ連軍の侵攻は防げることができそうだ。」と、今野少尉が戦車をながめる。
以前の八九式改より、かなり高さが低くなってるようだ。
 「あ、あ、それは戦車が敵から狙われないようにですよ。」と、いう斎藤主任だ。
「なんせ、戦車隊員は補充がきかないですから。」と・・・
 装填手から砲手、操縦手と・・・数ヶ月の訓練が・・・下手すると数年だ。
「とても、まだ満州の国民では・・・」と、いう主任である。
 「言葉の問題もありますが、一番は国民性ですよ。」と、重ねる主任技師の斎藤君である。
「内地から、なかなか補充が来ないんで・・・前の戦車隊長の加藤君が・・・」と、苦労話が・・・
 (加藤中尉を君呼びなのは、主任技師は軍属として大尉と同等クラスだからだ。)
「一度、満州国軍の兵を訓練したことがあるんですが。」と、思い出話だ・・・
 「そいつは、日本語が片言ができて、重宝してたんですよ。」
「本人もヤル気はあってようですが・・・」
 「それで、はじめは装填手から・・・使ってみようと・・・」
と、斎藤主任は当時を振り返るのだった。

 「そいつは、名前を・・・確か猛(モウ)という名前で、モウ君と呼んでました。」
「訓練は砲弾をラックから主砲の装填口へ入れて、遊底が閉まったら・・・砲手の肩を・・・」
 「それの、繰り返しです。」
それは、戦車隊長の今野君は・・・黙って聞いていた、なかなか加藤戦車隊当時の苦労話は聞けないからだ。
 「それで、モウ君は馬賊崩れですか。」と、聞いてみた。
今野戦車隊にも馬賊崩れのヤツを便利屋としてつかってるからだ。
 「え、え、そうです。」「馬賊も、それなりに統率が執れないと、単騎では戦えないですからな。」
と、納得の意見だ。
 「加藤中尉は採用したモウ君を部下の軍曹へ・・・」
とても、隊長が個人では教育や訓練は暇がない・・・からだ。
 幹部ほど、余暇時間は無いのだ。
「軍曹は、面倒見がイイやつでして、手取り足取り、教えていたんですよ。」と、主任だ。
 「じつは、工場でも満州人を使役したことはあったんですが・・・」
「常識が日本人とは・・・あまりに、かけ離れていて・・・」
 「幼児から教育をしなければ、日本人の工員と同じようには・・・」と、後悔する顔の主任だ・・・
「満州というか、シナには平民を教育する学校が無いんですよ。」
 「言葉は、しゃべれるし・・・でも、筆記はできない。」
「それで、取説が読めない。」「取説が読めない工員なんて、ゴミ以下の害悪です。」
 
 「軍曹は、常識から教えていたのですが。」「なかなか、うまくはいかなくて。」
「馬賊でも、上下の区別は厳しくて体罰なんて、あたりまえなので。」
 「そいつは、日本陸軍の法外な訓練や体罰にも耐えて・・・モノになりそうでしたが・・・」
今野少尉は・・・黙って聞いていた・・・
 「馬賊は部族が基本なんですよ。」「国家というか、国の概念がないんですよ。」
「馬賊だけではない、満州国の国民が満州国を愛してないんですよ。」と、言い切る主任だ。
 「馬賊単位の部族は血のつながりもあり・・・結束は固いんです。」
「それが、根本にあるんですよ。」と、言いきる主任だ。
 「国家というものを、国というモノを考えてないんですよ。」
「シナなんて、軍閥は日本が真の敵ではないんですよ。」
 「軍閥の将軍は・・自分の領土の国民が敵なんですよ。」と、トンデモない話を・・・
「まさか、日本が敵なんじゃないかと・・・」と、今野少尉は・・・
 「建前ですよ。」「本音は自国の民が敵なんですよ。」
「いつ、自分を滅ぼす軍閥の親玉が自国から生まれるか・・・」
 「それが、シナという国なんですよ。」と、言い切る主任技師である。
 日本は、神武建国の2600年前からの民主的君主国家だ。(日本は、古代から会議ばかりの国なのだ。)
我が国の神話には神様の合議の場面が多いのだ。
 天照大明神(我が最高神の女神様だ、アマテラスオオミカミと発音する。)様が、弟のスサノウの件で、お隠れ遊ばしたとき・・・神様連中が会議を開いて打開策を練ったのだ。(天の岩戸)

 そういえば、加藤中尉から・・・便衣兵に注意しろと・・・道で会った農民がすれ違いざまに・・・機関銃で・・・それで、殺された日本兵も・・・
 つまり、軍服を着ていない国際法違反の軍隊だ。
「シナ人に国際法とか約束、規則は通用しませんから。」と、いう斎藤主任である。
 「加藤中尉も絶対に疑えと。」と、思い出す少尉だった。
「それに、シナ兵はシナの国民を殺すことが当たり前なんですよ。」
 「それで、シナの民間人は日本兵は信用するんです、日本兵は先に民間人を撃たないですから。」
「それで、いきなり殺される、我が兵も少なくないんですが・・・」
 「でも、軍規を守る我が軍は民間人を先に攻撃はできません。」
「相手が便衣兵だと、わかってから攻撃しますから、攻撃が遅れるんです。」
 「それで、私は戦車ならと思ったんですよ。」と、しみじみな話である。
確かに、戦車なら便衣兵やゲリラは相手にならない。
 なぜ、日本軍が装甲車や戦車を大陸で運用して、歩兵がいないのか納得した少尉であった。
なんせ、今野少尉は便衣兵の話しか・・・経験はないからだ。
 あれっ、モウ君の話が・・・いつの間にか・・・
 
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