日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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2日間、戦線を維持しろっ!

加藤戦車隊、到着!

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 奉天の戦車開発会社の鉄道引き込み線へ・・・無蓋車へ積まれた加藤戦車隊の戦車が到着した。
その数、予備車両の2両を足して、27両だ。
 順次、工場へ降ろして、最終点検である。
エンジンオイル交換やギアオイル交換、はてはグロープラグも点検して不具合があれば即、交換だ。
 最高に調整された戦車でないと・・・ソ連軍へ対抗ができないからだ。
なんせ、100両で500両余のソ連軍へ対抗するのだ。
 かなり無理をするのである。
それで、無理をしても耐えられるようにするための最終点検だ。
 チェツクシートに300項目以上の箇所があるのだ。
そこを、熟練した職人の眼が、手が、「良し。」の判断ができるまで責任を持ち点検するのだ。
 「おい、この変速機はダメだ。」「いまから、交換は時間が無いぞ。」
「うむ、予備車両と交換だ。」
 こうして、選別したり部品交換で・・・なんとか25両をそろえたのである。
「加藤中尉、準備できました。」「おう、待ってたぞ。」
 「全員、そろってるな。」「ハイ。」「ハイ。」・・・・
「では、ここからは鉄道は無い。」「ハルピンまで、進軍だ。」
 「無線で、その都度指示をだすからな。」「おう。」と、元気な掛け声だ。
「ハルピン付近まで行軍する。」「乗車だ。」「おう、いくぞ。」「おう、任されよ。」
 100名(1両に4名だ。)の隊員は自己の乗車車両へ駆け足だ。
そして、履帯の端で靴のドロを落とす。(癖になってる。)
 いままでの日本戦車は砲塔バスケットが無かった。
それで、砲塔が廻るに合わせて、体を廻さねばならなかった。
 しかし、車台が大きくなった九九式からは、砲塔の下部にバスケットがあるのだ。
日本戦車では初めて採用されたのである。
 そして、自動装填だが・・・問題が発生したのである。
連射すると、砲身が熱を持つ、その熱が自動装填装置を狂わせる危険があるらしいのだ。
 それで、自動装填装置は使えない、それで乗員は四名になったのである。

 ジーゼル・エンジンのヒーターが予備加熱で赤いランプだ。
「よし、エンジン始動。」と、スイッチを切り替える。
 クランクして、数回で・・・
「グワン、グワン。」と、エンジンが始動する。
 18気筒1000馬力のジーゼル・エンジンが咆哮をあげた。
車内がジーゼル・エンジンの振動で装甲が厚いが振動するのだ。
 つまり、低音が・・・すごいからだ。(排気ガスの黒煙も・・・)
動きだせば収まるが・・・防音パッドがないと・・・低音が耳に良くないのだ。(耳鳴りが治まらない。)
 「しかし、この1000馬力は・・・さすがだな。」と、感心しきりの加藤中尉だ。
いままでの九八式でも、500馬力だったんだが・・・その倍の出力だ。
 「しかし、それで燃費が300メートルだからな。」と、泣き所があるのだ。
燃料タンクは九九式はドラム缶1本分以上入るのだ。
 でないと、リッター300メートルだから・・・すぐにタンクがカラだ・・・給油トラックが・・・となりかねない。
いくら猛虎でも、燃料が切れたら単なる巨大なオブジェになり果てるからである。
 補給が無い軍隊は悲惨だ。
先の大戦の日本軍と同じだ。
 補給があれば負けなかった日本軍なのだ。
米軍の作戦は補給を絶つ作戦ばかりだった・・・(無抵抗な輸送船や運ぶ民間人を狙うのだ。)
 日本のアキレス腱を知ってる米軍なのである。(日本軍は米国の民間人は狙わなかったのだ。)

 満州国とシナの属国の朝鮮の国境付近で鉱脈が発見されて・・・日本陸軍が発見したのだが・・・
険しい山脈で、シナや鮮人は近寄らないのだ。
 まあ、日本の工作機械で、やっとできるほどである。
そして、そこから大連の精油所へパイプラインだ。
 そして、鉄道輸送で奉天の工場へ・・・
そこから精製した軽油がトラック輸送して・・・戦車へ給油である。
 ガソリンより取り扱いがカンタンな軽油(揮発性が薄い。)は戦車に向いてるのである。
ソ連軍が最近になりT34をジーゼルエンジンへ転換したらしいのだ。
 露スケもシナや鮮人と同じでパクるのだろうか・・・
戦車王国のドイツはガソリンの戦車ばかりなのだが・・・
 やがて、奉天の工場から続々と九九式戦車が轟音を蹴立てて進軍する。
加藤隊長が無線機で、「中継車、聞こえるか。」「え、え、よく聞こえます。」
 「ならば、ハルピンへ進軍中の今野隊へ中継できるか。」
「わかりました、ハイ。」「いいですよ。」と、中継車両の無線だ。
 それで、「加藤だ今野君、聞こえるか。」と、やる・・・すると・・・
「えー、えー、聞こえますよ。」「まさか、加藤隊長ですか。」と、声で聞き分けたらしい。
 さすが、明瞭な周波数変調無線機(FM式)だ。
「おう、そうだ、待たせたな。」と、答える加藤中尉だ。
 「う、う、う。」と、思わずオトコ泣きだ。
「どうやら、勝てそうですね。」と、今野少尉が・・・
 「なにを、情けないことを・・・ところで、オレ達の分は残しておいてくれよ。」
「わかりました、敵の数は多いので、いかほど・・・」と、今野少尉が要望を聞く。
 「そうだな、25両あるから250両ほどは残すように。」「わかりました、なるべく残しますです、ハイ。」
「うむ、では合流地点へ近づいたら、また入れるからな、以上だ。」「ハイ、了解です。」
 「あのう、今野隊長。」「なんだ、軍曹。」
「半分、残すんですか。」と、敵戦車の群れの中で聞いた。
 「リクエストは250だそうだ。」
「いま、ソ連軍は集まりつつありますから、どうしますか。」と、軍曹だ。
 「そうだな、せっかくだ、しばらく休戦だな。」と、余裕をカマス今野戦車隊である。
九八式魔改造改は、満州軍戦車隊の満州型とソ連軍を掃討していたのだが・・・
 「おい、隊長から休憩の無線だぞ。」「そうなのか。」
「でも、10両は破壊しないと・・・」「そうだが・・・無線で休憩しろって・・・」
 「うむ、指令なら、しゃあないな・・・」「よし、敵の動きに注意して、コーヒーでも飲むか。」
「賛成です。」「うむ、見張りを怠るなよ。」「ハイ。」
 特殊合金装甲がT34の75ミリ砲の砲弾を確実にハジクことからの余裕が生まれた日本軍である。
分断されたソ連軍は旗通信や伝令を出して、バラバラに分断された戦車を・・・再度の編成をするのに苦労してるようである。
 その間に、休憩をとるように無線が入ったのだ。
これが、日本、満州合同軍へ余裕と士気の維持に役にたったのだ。
 戦場でのひと時の安らぎはヒトとしての自分を取り戻すことができるからだ。
軍隊は休憩も指示でするからだ。
 砲撃も隊長が指示を出し、車長が号令なのだ。
勝手に砲撃なぞ、できない。
 もちろん、他が戦死して自分だけなら違うんだが・・・
しかし、この日本軍の沈黙がソ連軍へプレッシャーを与えたのだ・・・
 
 

 
 
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