ずっと君だけ。

しゅく

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「やけにあっさりだったな」

帰り道、緑川があおるの顔を覗いて話しかけて来た。

「だって昨日・・・」

「そうだな、約束守ってえらいじゃん」

放課後になってすぐ、緑川に帰るよう促されて素直に応じたのがよかったらしく、緑川はまあまあ上機嫌だった。

―――考えている事を悟られてはいけない。
もしバレてしまったら、全部ダメになるどころかどんな目に遭うか・・・。

あおるは不自然な態度にならないようにいつも通り、いつも通りに、と心の中で唱えながら帰った。


緑川と別れて家に入ると、母親は仕事で居なかった。
2階の部屋へ上がってランドセルを下ろし、再び学校へ戻る準備を始める。

「これで・・・・・・よしっ!」

図書館に行ってきます。
そう一言メモ用紙に書き、短く切ったセロハンテープですぐ目に付くよう、リビングのテーブルにぺたりと貼り付けた。これで万が一母親が帰ってきて緑川を家に上げても大丈夫だろう。読書が好きなことくらい緑川は知っているはずだ。

約20分後、あおるは念のため図書館のカードをポケットに入れ、家を出て足早に学校へ向かった。




「美守さん・・・!」

「あれ?掛田くん早かったね」

「うん、すぐ来れたから・・・!」

学校へ戻り、花壇に行くと先に水撒きをしている美守があおるに気付いた。

「私あんまり話すほうじゃないけど、なんか・・・やっぱり一人じゃ寂しいね」

水を撒く準備をしていたら思いもよらない言葉が聞こえた。

「・・・え?」

えへっと笑う美守の言葉にドキッとした。
今まで誰かに自分が居ないことで、寂しいと言われた事なんてない。あおるはカァッと熱くなるのを感じながら、精一杯答える。

「お、俺もきっと美守さん居なかったら・・・寂しい」

美守のようにえへっと冗談っぽく笑えなかった。
友達とのコミュニケーション能力が高くないあおるは一杯一杯で、気持ちに余裕がなかった。


それからはいつものように他愛ないことを話して笑い合い、水を撒き終わると途中まで一緒に帰った。

楽しい時間はあっという間だった。人と話す事への苦手意識も徐々に薄れていくようだった。
緑川の命令に背いてでも、学校へ戻って良かった。
美守と話すと心が温まる。心から良かったと思えた。

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