ずっと君だけ。

しゅく

文字の大きさ
19 / 93

18

しおりを挟む
家に帰ると玄関には上品に揃えられた緑川の靴があった。
母親も既に帰宅し、夕飯の準備をしていたようで台所からトントンと包丁で食材を切る音がする。
ただいまと言ってもまな板に視線を向けたままお帰りという言葉だけ返ってきて、あおるは緑川が居るだろう2階の自室に向かった。

「あおる、ほんっとに本好きだな」

自室のドアを開けると、我が物顔であおるのベッドに寝そべっている緑川から呆れたように言われた。
学校に戻っていたなんて少しも勘付かれてはいないようだった。

「うん、休み時間することも特にないから、読書くらいしか・・・」

「うわー、寂しいやつ」

「だってもともとは・・・っ!」

ハッとなって口をつぐむ。

「んー?今なんて言おうとしたんだよ」

緑川はゆっくりベッドから起き上がり、ベッドの前に立っていたあおるに近づくと肩に腕を回して耳元で囁いた。

「気になるだろ。・・・ほら、言えよ」

後から脅されるよりも、優しく聞かれている今のうちに言ってしまった方が賢明だ。

「だ、だって緑川が友達とったから!だから俺は・・・」

「人聞き悪いなぁ。何、あおるは俺だけじゃ不満?」

不満は山ほどあるが直接言えるはずもなく。

「別にそんなわけじゃ・・・、ただ他の人とも仲良くしたいってだけで・・・」

「暗い、ダサいって陰口言うような奴らと?」

「・・・・・・っ」

つまりは仲良くなりたいと思ってくれる人なんて居ないという事なのだろう。そんなこと自分でも薄々分かっていたが、面と向かって言われると傷つく。
だが、今日は美守が自分の話を聞いてくれたし、自分に笑いかけてくれた。
クラスの全員がそうじゃない。それがとても心強く感じた。



「・・・あおる、なんで平然としてんの?」

緑川が顔を近づけてあおるの目をまじまじと見て言った。

「え・・・?」

「あおるいつもすぐ泣きそうな顔するじゃん」

確かにあおるは少々涙腺が緩い。それは自覚しているが、今日は別にそれほど悲観的な感情にはならなかった。

「う、打たれ強くなった」

「それはそれで・・・つまらないな」

そう言うと緑川はあおるから離れた。


何なんだ・・・。
緑川は自分を泣かせたいのだろうか。泣いたら泣いたで早く泣き止めとかウザいとか言うのに。緑川の思考は理解できない。

「っあー・・・ねむ・・・。あおる、夕食できたら絶対起こせよな」

そう言って再びあおるのベッドにボフッと横たわる。まるで自分の家とも同然なくつろぎ具合だが、いちいち気にしてたら身が持たない。

「うん、わかった」

残りの2日も置き手紙をしていこう、綺麗な寝顔の緑川を横目に見てあおるは思った。
そうすれば放課後は美守とたくさん話せる。

あおるは美守と話していくうちにもっと仲良くなりたいと思うようになっていた。

緑川が寝て夕飯ができるまで特に何もすることが無かったため、あおるは今日学校で習った漢字の復習をすることにした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

【短編+連載版】一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた

BL
サクッと読みたい方は短編版(約5000字)をどうぞ! ◇◇◇ 「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。 ◇◇◇ いいね、エールありがとうございます!嬉しいですー!

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

可哀想は可愛い

綿毛ぽぽ
BL
 平民、ビビり、陰キャなセシリオは王立魔術学園へ入学を機に高校デビューを目指したが敢え無く失敗し不良のパシリをさせられる毎日。  同室者の男にも呆れられ絶望するセシリオに天使のような男が現れるが、彼もかなりイカれた野郎のようで……?セシリオは理想の平和な学園生活を送る事が出来るだろうか。また激重感情を抱えた男から逃げられるだろうか。 「むむむ無理無理!助けて!」 ━━━━━━━━━━━ ろくな男はいません。 世界観がごちゃごちゃです。余り深く考えずに暖かい目で読んで頂けたら、と思います。 表紙はくま様からお借りしました。

好きなタイプを話したら、幼なじみが寄せにきた。

さんから
BL
無愛想美形×世話焼き平凡 幼なじみに好きバレしたくない一心で、真逆の好きなタイプを言ったら……!?

きみが隣に

すずかけあおい
BL
いつもひとりでいる矢崎は、ある日、人気者の瀬尾から告白される。 瀬尾とほとんど話したことがないので断ろうとすると、「友だちからでいいから」と言われ、友だちからなら、と頷く。 矢崎は徐々に瀬尾に惹かれていくけれど――。 〔攻め〕瀬尾(せお) 〔受け〕矢崎(やざき)

処理中です...