ずっと君だけ。

しゅく

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春休み。


「っんー・・・今日であおるの部屋に来るのも最後か」

あおるのベッドに寝転んだ緑川は背伸びをしながら言った。

「え・・・?でも中学校違っても家には帰るよね・・・?」

「帰んねーよ。寮で暮らすから」

「そうなんだ・・・」

ほんとにほんとなんだ。
あおるは心が弾むのを緑川に悟られないように振る舞う。


「――・・・・・・離れるとかほんと無理・・・」

ベッドに仰向けのまま顔の上部に腕を乗せ、天井に向かってぽつりと呟いた緑川の声は小さく消えた。

「ん?緑川、何か言った?」

「・・・いや別に。せっかく来てんのに、寝て過ごすのはもったいないよなぁって」

そう言うと緑川はガバッと起き上がった。

「最後なんだからあおるの部屋を隅々まで物色でもするかなー。普通の本に混じって変な本とかあったりして」

ニヤリと笑う緑川。

「変な本って何!?・・・・・・ってそこは下着!」

タンスを緑川が引こうとしていたことに気が付き、慌てて制したが遅かった。

「・・・・・・ブリーフ派?」

「・・・っ!!か、返してよ!」

あおるはカァッと顔が赤くなり、白いパンツを持ってヒラヒラしているところを緑川の手から奪い取った。
体育の前などで下着姿は何度も見られていたが、だからと言って恥ずかしくないわけ無い。

「はぁ・・・」

あおるは呆れたとでも言うように小さくため息をつきながら下着をタンスの中に戻す。

「・・・ん?あおるここの引き出し、前まで鍵掛けてなかったよな?」

いつの間にか今度は机を物色していた緑川が訝しげに尋ねてきた。

「・・・・・・!」

あおるの心臓がドクンと跳ねた。

「開けてみて」

「べ、別に大した物はないよ・・・!」

「鍵は?」

「か、鍵失くして・・・」

「嘘はいいから・・・・・・開けろよ」

徐々に表情も言い方も怖くなる緑川に冷や汗が出てくる。

「こ、これ・・・」

結局緑川の圧に負けたあおるは鍵を渡すはめになった。
どうせ緑川が不機嫌になっても今日で終わりだ。そう思えば心が少し軽くなる。

「手紙・・・?」

容赦なくあおるの手から鍵を奪い取った緑川は、机の引き出しを開けて一つの封筒に気が付き、眉間に皺を寄せた。
すぐにベリッとシールを剥いで中を開ける。

あおるはあの時、美守にもらった手紙を大切に引き出しの中にしまっていたのだった。

「――――安心してねって緑川くんに伝えてくれると嬉しいです。だってよ、あおる?」

「・・・ご、ごめん」

「俺、あおるから何も聞いてないけど?それにこれ大分前のことだよな」

「う、うん・・・っ」

「・・・もう要らないだろ。こんな手紙」

吐き捨てるようにそう言うと、緑川は手紙で飛行機の形を作り、窓を開けて外に飛ばした。

「っやめ・・・!!」

咄嗟にあおるは遠くに飛ばされる前に拾おうと、部屋を出て外に行こうとしたが緑川に腕を掴まれた。

「あんなの要らないだろ?」

「いるよ・・・っ!!」

緑川の腕を掴む手に力が込められていて痛い。
早くしないと、遠くに飛んでしまったら見つけられなくなる・・・!

「は、離せっ・・・!」

今日さえ我慢すれば、明日からは緑川が居ない。
今日で最後なんだ。こんな嫌がらせをされるのも。

そう自分に言い聞かせるが、美守からの手紙を失いたくない思いの方がどうしても強かった。
立場も弱く、力でも振り払えず、大切なものを軽々と奪われる自分の情けなさに泣けてくる。

鼻がツンと熱くなって目に涙が浮かんだ。

「・・・っ、大切なんだよ・・・友達もいなかった俺には・・・だから、離してよ緑川・・・!」

自分がどれだけこの手紙に支えられたか緑川は知らない。
読む度に彼女のことを思い出して、クラスで一人でも頑張ろうって何度励まされたかなんてきっと緑川には分からない。

「うぅっ・・・っ離して・・・よ・・・・・・」

泣いて懇願しても顔色を全く変えず淡々としている緑川に怒りが湧いてくる。


きっと明日から居なくなることで気が大きくなっていたんだ。

だから言ったんだ。
初めて直接緑川に。


「・・・っ緑川なんて、大嫌いだ・・・・・・!」

「・・・・・・ああ、そう」

低い声で無表情のまま静かにそう言うと、緑川は乱暴にあおるを離した。

「・・・・・・っ痛」

離された勢いであおるはよろめき、尻餅をついた。
あおるは何もせず黙ったまま立っている緑川を恐る恐る見上げると、鋭く冷たい視線を向けられていた。

「・・・・・・っ」

迫力に圧され、動けずにいるあおると緑川に沈黙が流れる。
緑川から目を離せずにいると、ふと緑川の形の良い唇が動き、静かな部屋に低い声が響いた。

「・・・こんな感情を持ったのは初めてだよ」

「・・・え?」

「俺はあおるが憎いよ・・・メチャクチャにしてやりたいほど」


惨烈な言葉を残し、緑川は転校していった。

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