ずっと君だけ。

しゅく

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「そんな事よりさ・・・」

緑川がスッと真顔になり、話を切り出す。

「・・・なに?あの態度」

教室でのあおるの態度が気に食わなかったらしく、緑川があおるに問い詰める。

「・・・っだから、それは謝るから・・・!も、もういいでしょ・・・!?」

肩に回された腕を振り払い、緑川から逃げるように足早にドアに向かった。
だが緑川に素早く腕を掴まれ、引っ張られたあおるはその勢い余って後ろに倒れ、ソファーに尻餅をついた。

「よくねーよ」

「・・・っ!?」

倒れたあおるの上に緑川が覆い被さってきて、耳元で囁いてくる。

「この俺にあんな態度とって・・・イメージ壊してやろうとか思ったわけ?それともあんなので俺から逃げれるとでも思った?」

優しい口調とは裏腹に緑川の声が低くなる。


もしかしたら逃げられると思ったんだ。
みんなの前で嫌がれば、優しい優等生の面を被った緑川は自分を無理やり引っ張るなんて事しないはず・・・そう思ったんだ。

「・・・っ、ど、どいてよ・・・!」

この体勢と必要以上に距離が近いせいで変に緊張してしまうし、なにより怖い。

「・・・ふっはは、そんな怯えないでよ。肩まで震えて」

「・・・だって、緑川が乗っかってくるからっ・・・!」

あおるの小さな反論はあっさりと無視される。


「・・・俺は本当に楽しみにしてたんだよ。またあおるに会えるのが。なのに・・・・・・・・・分かる?」

小学生の時のように従順じゃなかった自分を責めているのだろうか。
目を細めて言う緑川の真意がつかめず、あおるは不安に瞳を揺らす。

「・・・ね、あおる。あおるが強がっても良いことないよ。俺は不愉快だし、あおるは住む家失うし」

厭味なくらい綺麗な笑顔で脅しとも取れる事を言ってきた。
俺の言うとおりにしないとあの家を追い出す、そういう事だろう。

「だからあおる・・・高校でも仲良く振る舞えるよな?俺の言う事も聞けるだろ?」

「・・・・・・う・・・うん」

どこか楽しそうにゆっくりと耳元で囁く緑川に頷くしかなかった。


―――家を借りている限り緑川には敵わない、そんな現実を突き付けられただけだった。









「っどうしよう、霧丘絶対怒ってる・・・!」

あおるは鞄を取るべく教室まで走る。


高校でも言う事を聞くよう命令された後、運良く、一人の男子生徒が部屋に入って来たことであおるはすぐに解放された。

緑川に香村かむらと呼ばれたその男はあおるを見てひどく驚いた顔をしていたけれど、あおるは緑川が素で話している事にかなり驚いた。

緑川が自分以外の人に素で話しているのを見たのは初めてだったのだ。

教室へ着くと鞄を取り、すばやく時計に目をやると1時半過ぎ。
霧丘の事だから、昼食は一緒に食べようと待ってくれているだろう。
それどころか、連絡一つもよこさない自分に腹を立てていることだって大いにあり得る。

申し訳ない気持ちに駆られ、とりあえず連絡しようとスマホを手に取るとメッセージと着信3件。

あおるはすぐさま霧丘に電話をかけた。

「・・・あ、もしもし霧丘っ!?」

「あおる!?おせーよ、マジで腹減ったー」

今か今かとあおるからの連絡を待っていたのだろう。
1回目のコールですぐに霧丘は電話に出た。

「ごめん!今からすぐ部屋に行くから・・・!」

「いや、俺いま靴箱。あまりにも遅いから迎えに行こうと思ってたんだよ・・・とにかくすぐ来いよな」

そう言う霧丘の声はいつもより低く聞こえた。
あおるは分かったと返事をするとすぐに霧丘の待つ靴箱へと走った。


「っ・・・はぁっはぁっ・・・ごめん霧丘・・・!」

「おー・・・早く部屋行こうぜ」

「怒ってる・・・?霧丘・・・」

「・・・待ちくたびれただけ」

息を切らして駆け寄ってきたあおるに霧丘は背を向け、スタスタと歩き出した。


そんな霧丘の態度にあおるは大きな不安に駆られた。

いつもなら、謝る自分を笑顔で許してくれる。
もういいよ、そう言いながら頭をポンポンとしてくれる。

・・・・・・嫌われた・・・?


「・・・っ嫌だ!霧丘待って!!」

「うおっ!?あおる!!?」

玄関を出て、学園の中庭を歩く霧丘の背後からあおるはドンッとぶつかるように抱きついた。
霧丘はあおるの予想外の行動と衝撃に驚いて振り返る。

「本当にごめん霧丘・・・次からは遅れないようにするから・・・!だから・・・!」

「ちょ、ちょっと待て、あおる落ち着けって!」

霧丘に抱きついて縋るような目で訴えかけるあおるに霧丘は戸惑う。

「いや俺別にそこまで怒ってねえよ!?そりゃ、連絡なくて心配はしたけど・・・今のは俺の態度も悪かったよ」

「え、じゃあ俺のこと嫌いになったり、してない・・・?」

「はあ?んな事で嫌いになるか!つーか、俺が素っ気ない態度したせいで・・・まさかあおるがそんな・・・泣きそうな顔するなんて思ってもなかった」

だから俺もごめんな、あおるの頭に優しく手を置いて霧丘はそう言った。

「な・・・なんだぁ・・・よかった」

安堵したと同時に、嫌われていなかった嬉しさであおるの顔が緩む。

「そーかそーか、そんなに不安だったのかぁ~」

へらへらと笑ってくる霧丘にあおるは大袈裟にムッとむくれ、照れ隠しで霧丘の手をパシッと振り払った。

「もういい、お詫びに夕食でも作ろうと思ったのに・・・っ」

「わーあおるごめんって!あーあおるの夕食が楽しみだな~」

霧丘の寮の部屋も分からないのに一人で先に歩いて行こうとするあおるを霧丘は早歩きで追いかけた。




・・・中庭での光景を上から鋭い目で見下ろしていた彼に、二人は気付くはずもなかった。

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