ずっと君だけ。

しゅく

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入学式初日は授業は無く午前中で終わった。


「掛田くん、お話しようよ~」

LHR後すぐ、宮野があおるの席まで駆け寄ってきた。

「えっと、あの・・・」

緑川のことが好きだって言ってるし、さっきも敵意むき出しにしてきた宮野に警戒心を持ってしまうのは当然だと思う。
それに今から昼食を持って霧丘の部屋に行く約束がある。

「ほんのちょっとでいいんだけど・・・ダメかなぁ?」

大きな瞳を揺らし、可愛く首を傾けて尋ねてくる。

「す、少しなら・・・」

やっぱりというか、可愛らしい顔立ちの宮野も非常に目立つ。
宮野から話しかけられて、他のクラスメート達からジロジロと視線を感じて居心地が悪い。
たぶん宮野はそれを分かってわざと可愛らしく振る舞っているような気さえした。

何を言われるのだろう・・・そう思っていると横から別の声がした。


「あおる、ちょっといい?」

「あっ、緑川くん~」

「ああ、宮野と話し中だった?ごめんね、あおるに用があるから2人にしてもらってもいい?」

謝るのは口だけで、緑川は笑顔で宮野にたずねた。
直接的に席を外してくれと言われた宮野はあまりの悔しさに拳を握り締め、あおるを睨んだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・うん、じゃあ掛田くんまた話そうねっ」

「お、俺は緑川と話すことなんてないっ・・・!」

「あおる、まだ根に持ってる?そんな意地張らないでよ・・・もう仕方ないなー」

場所を変えよう、と溜め息混じりに微笑むと緑川はあおるの手首を掴んで歩き出した。
連れて行かれまいと踏ん張ったり、手を振り払おうとするが効果は無く、緑川は笑みを浮かべたままあおるを連れて行く。

「あ、宮野またね」

緑川は顔だけ少し振り向いて、優しく微笑む。

「・・・うんっ!緑川くんまた明日ねっ」

宮野は胸の前で小さく手を振って答えた。
緑川に手首を掴まれ、連れて行かれるあおるに対しての怒りを必死に抑えながら。









「み、緑川・・・どこ行くの・・・!?」

歩き進むにつれて徐々に人が居なくなり、階段を上って校舎の最上階に行くと、通行人は一人も見当たらなくなった。
さっきまで浮かべていた緑川の優しそうな笑顔も、人が居なくなるにつれて消えていった。

「・・・ねぇ・・・っ緑川・・・!?」

再度聞いても緑川は黙ったままあおるを引っ張って歩く。


も、もしや人気のない所で脅されるんじゃ・・・!?

そう思うとあおるは不安に駆られた。

いまだにあおるの頭1つ分以上の身長差がある緑川と一対一では勝てる気がしない。
小学生の頃に返り討ちにあった記憶が脳裏を掠める。

だから周りに人が居ないと強気な態度も取れない・・・そんな自分が本当に情けない。


「ご、ごめん、緑川・・・!俺の態度・・・良くなかったの認めるから・・・っ!」

だからもう解放してくれ、とあおるは抵抗していた力を抜くと、ふと緑川が扉の前で足を止める。
制服のズボンのポケットからひとつの鍵を取り出し、扉を開け、あおるを部屋の中に引き込んだ。

「・・・入って」

「・・・っここ、なに?」

「私室」

「し、私室・・・?」

「授業がめんどくせぇ時に使うんだよ」

さっきまでの教室での柔らかい口調が嘘みたいだ。
あおるは余計に不安になった。

「・・・そ、そうなんだ」

あおるは挙動不審におどおどして部屋中を見回す。
なかなか綺麗で広い部屋だ。

大きな窓があり真っ白いレースのようなカーテンが掛けられている。
部屋の中央にはガラス製のローテーブルがあり、それを囲むように高級そうなソファーが向かい合って置かれている。
エアコンも完備され、ローテーブルにはノートパソコンが置かれ、冷蔵庫まである。

ここが学校というのを忘れてしまいそうな部屋だ。

「え、でも・・・なんで緑川が鍵持ってるの・・・?」

「自分ちの学校だから」

「・・・・・・い、今なんて・・・?」

信じがたい事が聞こえてきてあおるは思わず聞き返した。

「・・・正確には、この学園は俺の父さんの学校なんだよ。まあ、俺のも同然だ」

わずかに口角を上げ、不遜な笑みを向けられる。

「な・・・・・・っ!そん・・・な、俺知らなかった」

お先真っ暗、とでもいうのだろうか。
あおるは言葉を失ってしまった。

「そうだろーなぁ・・・あおるは。今まで・・・俺のこと何も聞いて来なかったもんね」

肩に手を回され、耳元でゆっくり囁かれる。


自分はなんて学校に来てしまったんだと後悔したのは今日で何度目だろうか・・・

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