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しおりを挟む最悪だ。
なんでこうタイミングが悪いんだろう。
夕食を作るべく、学校の近くのスーパーまで霧丘と二人で買い出しに行ったその帰りだった。
「・・・あれ?なんであおるが寮に居るの?」
「・・・っ緑川・・・・・・!」
霧丘の部屋に向かう途中、偶然にも緑川と鉢合わせてしまったのだ。
たずねてきた緑川は一瞬本気で驚いた顔をしたが、横にいる霧丘を見てすぐに綺麗な笑顔に変わった。
「・・・あおるの知り合いか?」
固まっているあおるに霧丘がボソリと耳打ちする。
その時ほんの僅かに緑川の眉間にしわが寄った気がした。
「え・・・っああ、うん、知り合いって言うか・・・」
「幼稚園からの仲だよね?あおる」
語弊があるかも知れないが、幼稚園から一緒なのは事実だ。
「う・・・うん、まあ・・・」
「俺は緑川修。どうぞよろしく」
緑川は霧丘に社交的な挨拶をし、手を伸ばす。
「俺は霧丘 暁名!こちらこそよろしく!」
霧丘もそれに答え、爽やかな笑顔を見せて握手を交わしたのをあおるはハラハラと落ち着かない気持ちで見ていた。
一番大きかったのは、霧丘を取られるんじゃないかという心配だった。
「もしかしてこれから夕飯?・・・作るの?」
霧丘が持っている買い物袋と、袋に入りきれていない小ネギをちらりと見た緑川があおるの目を見て尋ねてくる。
「・・・うん」
「わざわざ作らなくても寮にはレストランあるのに」
奢るよ?と緑川があおるに微笑んで言う。
学校では自分を脅していたのに、この変わりよう・・・
「い、いいよ・・・!奢ってもらうなんて申し訳ないし・・・!」
と言うよりも、極力一緒に居るのは避けたい。
「今日は昼にあおるが作ってくれるって約束してたんだ」
なっあおる!と霧丘が横から割って入る。
「う、うん」
「・・・へぇー・・・。それはいいなぁ~、俺ずっと学食だからもう飽き飽きで・・・」
緑川が溜め息をつき、困ったように笑いながら言う。
「あ、よかったら一緒に食う?俺の部屋なんだけど」
な・・・!!!霧丘!?
バッと横に居る霧丘の顔を見ると人の良さそうな笑顔を緑川に向けている。
霧丘・・・人が良すぎるよ・・・!!
「えっと、いいの?俺もお邪魔して」
ここぞとばかりに便乗する緑川。
「霧丘・・・っ!」
あおるは断ってくれと必死になって目で訴えかける。
だが、それは霧丘には通じなかったようで。
「あおるの幼稚園からの友達なら俺も仲良くなりてーしっ!」
「・・・・・・俺も仲良くなりたいな」
楽しそうな笑顔を浮かべる霧丘と何を考えているか分からない笑みを浮かべている緑川にあおるは何も言えなかった。
◇
「わぁ・・・すご・・・」
霧丘の部屋へ着き、あおるは小さく驚きの声を上げた。
以前パンフレットで見たとおり、豪華で広くて綺麗で・・・ホテルみたいな部屋だった。
「お邪魔します」
同じく寮生活の緑川は驚きもせず、きちんと靴も並べると、礼儀正しく部屋へ入る。
「まあ、二人ともてきとーに座っててくれ」
緑川とあおるに霧丘が言う。
「あ、おいあおる!そっちは寝室」
「・・・霧丘なにこのベッド!すっごいふかふか」
勝手にふらりとドアを開け、寝室へ入ったあおるが手でベッドを軽く押しながら声をあげる。
「ああ、それわざわざ家から持ってきたんだ。特別に・・・寝てみるか?」
フフンっと誇らしげに言う霧丘にあおるは目を輝かせ、上着を脱ぐと遠慮無くボフッとベッドへ飛び込んだ。
「っんー・・・きもちー・・・」
「ぷっ、お前の顔緩みすぎ」
全身が沈み込むようなふわふわな感覚を堪能するあおるを見て、霧丘が笑う。
「へぇー・・・ほんと、このマットレス良さそうだね」
部屋に入ってきた緑川が、ベッドの感触を確かめるように手で軽く触りながら二人の会話に割って入る。
「そうなんだよ!緑川も寝てみていいぞー」
「ううん、俺はいいよ。ありがとう」
ニカッと笑う霧丘に緑川は丁寧に断ると足元に落ちているあおるの上着を拾い上げて、あおるに近づく。
「はい、あおる。そろそろ起きたら・・・?」
「あ、うん・・・ありが」
手渡してくる上着を受け取ろうとした時。
「・・・あいつになんて顔見せてんの?」
「・・・っ!?」
自分にしか聞こえない声でそう呟かれ、あおるは思わず言葉を飲み込んだ。
怒りを含んだような、咎めるような声色にあおるの頬が一気に引き締まった表情になる。
「?どうかしたか」
二人の様子を見ていた霧丘がたずねてくる。
「あおるがこのまま寝そうになってたよ」
緑川が可笑しそうに目を細めて言う。
「ぶはっ、いくら心地良いからって!なあ、晩飯の約束は!?」
緑川の言葉を真に受けた霧丘も笑ってあおるを見る。
「あ・・・ははは、今からするよ」
あおるはベッドから起き上がり、笑顔を作った。
―――緑川の事なんて霧丘は何も知らない。
分かってくれ、頑張って作り笑いしてるって気付いてくれ、そう一方的に願うのは間違ってる。
霧丘との仲を壊される、そんな気がしてならなかった。
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