ずっと君だけ。

しゅく

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やはり今でも良く思われてないらしい。
自分が目の前で幸せそうな顔をしているのが気に入らなかったのだろう。


しばらくあおるはしゅん・・・っと縮こまっていたが、霧丘から話しかけられて喋っているうちにまた明るさを取り戻した。

緑川が猫被っている時は平穏に過ごせるため、3人で会話が弾むこともあった。
緑川は自分が楽しそうに笑っているのが気に障るのかと思ったけれど、他には何も言って来なかった。

裏表さえなければ、もしくは知らなかったら、きっと自分も緑川のこと話しやすくていい人で、好きだったんだろうな・・・ふとそう思った。






「あっおるー!」

フライパンで生姜焼きを作っていたあおるに霧丘が上機嫌で肩に腕を回してきた。

「っうわあ!!霧丘っ、危ないよ・・・!!」

フライパンを持つ手元が狂い、あおるは慌てる。

「ははっ、ごめんって。あと何分でできるかなーって」

空腹で夕食が待ちきれないといった様子の霧丘はあおるの肩に腕を回したままフライパンの中身を覗き込んでたずねてくる。

「あと5分くらい、かなぁ。もう少し焼かないと・・・あ、霧丘よかったらそこに置いてる小ネギを刻んでてくれないかな」

空腹で早く食べたいのはあおるも同じだった。
少しでも早く出来るようにと、あおるは霧丘に頼む。

「おう、まかしとけ!包丁使うのにあんま自信は無いけどな」

霧丘はあおるの肩に回していた腕を離し、横に移動して意気込んで包丁を手に持つ。

「ちゃんと小さめに刻んでね」

あおるはふっと笑いながら霧丘に言った。


そんな霧丘との楽しい会話はいつも緑川によって邪魔される。

「・・・あおる、そろそろ出来そう?さっきから我慢できなくて・・・色々と」

リビングのソファーで寛いでいたはずの緑川の声が突然耳元で聞こえたかと思った瞬間、背後から腹部に腕を回され、グイッと引き寄せられた。

「っわ!?み、緑川・・・っなに!?」

「いい匂いだね。生姜焼きとマカロニサラダかな?あと・・・そっちの鍋はなに?」

「緑川、は、離れ・・・っ動けないから!」

早く離れて欲しい。
わざとかってくらい、緑川がしゃべる度に吐息が耳元にかかってゾワゾワして仕方が無い。

「・・・答えたら離れてやるよ」

意地悪そうに微笑んで緑川はあおるの首筋に顔をうずめた。
あおるはくすぐったいような変な感覚にゾクリと鳥肌が立ち、慌てて答える。

「っ・・・!!味噌汁!味噌汁だってば・・・!」

「ふーん、楽しみだなぁ」

「う、うんだから・・・」

離してくれと言っても緑川は全く離そうとしない。

小学生の時からたまにボディタッチが激しいと思ったこともあったが、今のはまるで横に居る霧丘に見せ付けてるかのよう。

「なぁーちょっと・・・お前ら何やってんの?」

一生懸命小ネギを刻んでいた霧丘が手を止め、不満そうな表情でこちらに訴えかける。

「幼稚園からの仲、だからね?いつもこんなだよ」

「はぁー?俺も混ぜろよな!ひとり寂しくなんだろー」

ニコッと綺麗な笑顔を向ける緑川に霧丘は口を尖らせた。

「いや霧丘、違うから!真に受けないでよ・・・っ!」

「え、あおる照れてる?」

緑川があおるの肩に顎を乗せて聞いてくる。

「だから、違う・・・っ!」

「あーもう分かったから!緑川、さっさとあおる離せよな」

「はいはい」

仕方ないな~と笑ってあおるの腹部に回していた腕を離す。


離れ際、

「・・・・・・取られないように仲良く見せとかないとなぁ」

「っ・・・!?」

自分にしか聞こえない声で囁かれ、耳にそっとキスされた。












「ふぅ~食ったぁ」

「ごちそうさま」

霧丘が大きくなった腹を手で擦りながら言ったのに続き、緑川も食べ終えた事を告げた。
二人の空っぽになった食器を見て、あおるは嬉しくなる。

「全部食べてくれて嬉しい・・・ま、また作るよ・・・!」

自分でよければ・・・とあおるは言った。

「マジで!?約束だからなー!」

「うん!」

霧丘の反応にさらに嬉しくなって返事をした。

緑川は無言のまま二人の会話を聞いていた。


夕飯も食べ、一息ついた後、あおると緑川は帰る支度をする。

「いいのか?このまま泊まってってもいいのに」

霧丘があおるにたずねる。

「今日は帰るよ。明日も学校だし」

「今日は誘ってくれてありがとう、楽しかったよ」

あおるの言葉の後に緑川が続いた。

「おう!また3人で飯食ったりしよーな」

あおるを介して二人とも少し仲良くなったらしい。
明るく笑う霧丘に「そうだね」と緑川が微笑み返す。

「じゃあまた明日な!あおる、気をつけて帰れよ」

「うん、大丈夫だって」

明るい笑顔で手を振る霧丘に見送られ、緑川と部屋を出た。



「じゃ、じゃあ・・・これで」

緑川と二人きりになったあおるは気まずくなり、足早に帰ろうとしたが腕を掴まれ、引き止められた。

「あおる」

「な、なに・・・!?」

「俺の部屋に泊まれば?もう遅いし」

遅いとは言っても21時過ぎ。
電車はまだ十分通っている時間だ。

「いや、すぐ帰るから・・・大丈夫だよ・・・」

「ね?そうしよう」

あおるの言い分は無視。
腕をグイッと引っ張られ、連れて行かれそうになるのを踏ん張る。

「や・・・帰るよ・・・っ!」

「あんまり意地張ってると・・・本当に帰る家無くなったら困るんじゃないの?」

「っ・・・!」

笑顔な緑川に脅され、あおるは言葉無く緑川に腕を引かれて連れて行かれた。


途中、すれ違う人から羨ましがられたり、「あいつ誰!?」とでも言いたげな鋭い視線を容赦なくぶつけられたりした。
緑川は声を掛けられた時には丁寧に手を振って返事を返していた。


どうして気が付かないのだろう・・・とあおるは不満に思っていた。
みんなこの上っ面の良さに騙されてるんだ。


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