ずっと君だけ。

しゅく

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やっぱり、勢いに任せて連絡なんてしなければよかった・・・


緑川からの返信通りに私室とかいうこの部屋のソファーに腰掛けて待っていたあおるはそう後悔せずにはいられなかった。

だってこの部屋・・・
運良く香村が来て助かったが、以前押し倒されかけた場所だ。
他の生徒が来ないらしいこの部屋に来いということは、少なからず素の緑川なわけで。

・・・いい予感はしない。
早くさっさと渡して教室に戻ろう・・・!

そう意気込んだ時、ガチャッと扉が開かれ緑川が姿を見せた。


「へぇー、ちゃんと待ってたんだ」

意外だとでも言いたげな緑川にあおるはムッとした。

「だいたい緑川が作って来いって言ったんじゃないか・・・っ!なのに、宮野君とあんな・・・」

「そう、食堂行ってたのに・・・連絡くれて嬉しかったなあ」

そんなに俺に食べて欲しかったんだ?と甘く囁かれるが、まるで自分から望んで作ってきた、みたいな言い方に聞こえてあおるは反論する。

「違うっ・・・!このまま捨てるなんて勿体無いと思っただけだよ・・・!」

「ふーん?」

午前中、話しかけて来ないくらい不機嫌なのかと思いきやむしろ今、目の前にいる緑川はからかうのが楽しくて仕方ないって表情だ。
小学生の時からそうだったけれど、気分屋な緑川の思考は理解できない。


「・・・っもういい!はい、これ」

緑川にグイッと弁当を押し付けてその場を離れようとした時、肩を掴まれ、阻止される。

「なに、怒ってんの?」

「べ、別にそんなこと・・・!用が済んだから教室に戻ろうと・・・」

「なんで?それ、弁当なんだろ?」

そう言って緑川はあおるが持っていた鞄に目を向けた。

「ね、せっかくだから久しぶりに二人で食べようか」

緑川はにっこりとクラスで振りまいている綺麗な笑顔を作り、あおるの両肩に手を置くと、有無を言わさずソファーに座らせた。







半強制的に緑川の向かい側に座らせられ、あおるは大人しく弁当を食べるはめになった。
もうそれは仕方ないとして・・・


「ふっ・・・見た目フツー」

蓋を開けて開口一番にこれだ。
一体どんな弁当を想像していたのかとあおるは内心憤る。

「・・・普通で悪かったな・・・っ」

「やっぱ器用だけど、あおるも男だなって・・・ほら女子とかやたら細部まで細かいだろ?」

「・・・そんなこと知らない」

彩り豊かで盛り付けも可愛らしいお弁当のイメージが頭に浮かんだ。
そんなお弁当を女子から貰ったことがあるのにわざわざ自分に作らせるなんて・・・どういうつもりなのかと正面に座る緑川を睨みつつ、あおるは自分の作ってきた弁当を食べ始める。

ついでに作ったのだから、緑川の弁当のおかずは自分と一緒。

別に味もそこまで不味くない、むしろ良く出来たと思うけれど・・・女子から貰っているらしいし、学内レストランで舌の肥えてそうな緑川には口に合わないかも知れない。


「でも俺はこっちが好き」

「え・・・?」

空耳かと顔を上げると、緑川は箸でおかずを口に運んでいた。

「ん、美味いじゃん」

不意に褒められ、急にどぎまぎし出す。

「・・・っ、そ、れはよかったです」

「ふはっ、なんで急に敬語なんだよ」

口元に軽く手を添え、食べながらも可笑しそうに笑う緑川。
教室とは違う、素で笑うこんな緑川を見たのは本当に久しぶりだった。




緑川と二人きりで居てめずらしく流れる穏やかな時間。


ふと緑川があおるに向かってボソリと呟いた。

「あおる・・・・・・わざとかなこれ・・・」

「・・・え、なに?何か不味ものあった?」

よく聞き取れなかったあおるは聞き返す。

「いや・・・そうじゃなくて」

緑川が言いながらアスパラガスをベーコンで巻き焼いて作ったおかずをまじまじと見ている事が気になる。

「もしや、裏側こげてた・・・?」

「・・・・・・・・・別になんでもない」

そう言うと緑川はパクリと一口で食べきった。
無言で咀嚼している顔を見てどうしたのか気になったが、あおるはそれ以上の追求はしなかった。


「ごちそーさま」

緑川が食べ終えた事を告げ、あおるはちらりと弁当箱を見る。
中身は空っぽ。

全部食べたんだ・・・・・・

作って来いと言ったのは緑川なんだから、それが当然ではあると思うけど。
あおるは胸にじんわりとした嬉しさを感じた。
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