けん者

レオナルド今井

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霧の都編

せせらぎの旗槍

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「暑い! 暑すぎるわ! もう限界よ!」

 屋敷の食堂で昼食をとっていると、突然立ち上がったソフィアが弱音を上げ始めた。

 貴族院のあれこれが落ち着いてから数日が立っており、確かに日々秋の便りを感じるのは俺だけか。

「別に過ごしやすいと思うのだが」

 屋敷の中に限って言えば魔法学に基づいて作られた空調器具が設置されているおかげで夏場でも快適だ。そうでなくとも、日本より涼しいせいか朝晩こそ肌寒いものの日中は過ごしやすい。

 そう思っていたのだが、他二名の反応を見るに俺の方がマイノリティらしい。

「確かに、今年は夏も暑う日が続いておりました。この時期になっても涼しくならないのはそれが原因でしょう」

「今年は規格外の暑さでしたからねえ」

 そうだったのか。

 俺がこっちに来たのが九月初頭で、その時点ではすでに茹だるような暑さには感じなかったのだが。地球温暖化で昼間に出歩くと死ぬかもしれない現代日本とは大違いなので文句はないのだが、地元民としてはそうではないのだという。

「そもそもアンタの恰好がもう暑いのよ! ジョージを見習ってクールビズに努めなさい!」

 あーあ、ついに暑さに対する怒りが俺に飛び火した。

「仕方ねえだろ。俺はここに来る前に着てた学生服と、最近倉庫で探し当てた使用人服しか持ち合わせてねえんだから。どっちも長袖長ズボンだよ」

 ただでさえ、ここでの暮らしは無給なのだ。

 経理担当を任されてからは経費である程度欲しいものが手に入るようになったのだが、ただでさえ破産一歩手前の当家に私物に無駄遣いする余裕はない。

 衣食住が満足に手に入っている今、薄手の服まで望むのは欲張りというものである。

 そう考えて口にした返事なのだが、ソフィアにとっては気に食わなかったらしい。そんな彼女はついに自棄になったのか、ビシッと指をさして宣言した。

「今日は水浴びができる依頼を受けに行くわよ!」

「おー!」

 間髪入れず賛同するマキに、俺はジョージさんと顔を見合わせる。そして、

「……ケンジロー殿。こうなったお嬢様は止められぬでしょう」

 なんとなく、そんな気はしていた。







 ──そういうわけで、食後の片づけを終えてすぐに冒険者ギルドへとやってきた。

「今日はジョージさんも一緒なんですね」

 普段通りであれば、屋敷にいて仕事に余裕があるとき限定で依頼現場まで馬車を走らせてくれるのだが、今回はそれだけではないらしい。

「今回のところは近くに宿泊用の山小屋があるのよ。周辺に住む魔物も開拓が進んで強力な魔物が住処を作れるほど自然が残っていないわ」

「その分掲示板に貼りだされる依頼の数も少ないんですけどね。今日は運よく三件も残ってました」

 ソフィアとマキが剥がしてきた依頼書がテーブルに並んでいる。

 説明してくれた二人の対面からすさまじい興奮を感じるのでそれほどすごいことなのだろうと考えておこう。

 特に深く疑うこともせず、手近な依頼書を無造作に手に取り読み上げてみた。

「どれ。……渓流にてプチガルダの群れが川魚を捕食している様子を目撃。群れは夫婦とその子ども二体で計四体と思われる。群れは、特に母親と思われる個体の気性が荒く、周辺の釣り人への被害を想定し速やかに討伐してほしい」

 手に持っていた紙を丸めたくなる衝動をグッとこらえて、裏返して机に叩きつけた。

「強力な魔物がいないんじゃなかったのか?」

 プチガルダといえば、こっちに来て初めての依頼中に遭遇した魔物だ。

 とりあえず初心者が相手できるような敵ではなく、ソフィアと二人して苦戦したことを覚えている。

「ま、まあ。周辺地域には住んでなくてもよそから迷い込んでくることはあるわよね」

 冷や汗たらたらじゃねえか。

 ソフィアもソフィアでプチガルダには相当嫌な思いをしているようだ。

「じゃあ、これなんてどうですか? 魔物に襲われて置いてきてしまった投げ網を回収してきてほしいそうです。かかった魚は好きにしていいみたいですし、壊れてしまっていても報酬は貰えるみたいですけど」

 頭を捻っていたらマキが自信満々に依頼書を見せつけてきた。

 依頼現場は先ほどのヤバいヤツからそれなりに距離があるし、報酬量は難易度にしてはいいのでケチをつける点はないと思う。

「ちなみに、もう一件はプチガルダに住処を追われたイノワシの討伐ですな」

「イノワシは飛翔速度が遅いうえに、地上でも直線以外での速度が遅いっていう弱い魔物よ。でも、周辺環境が危険なうえに相場より報酬が安いし、受ける理由はないわ。騎士団行きの案件ね」

 三枚目の依頼書についてジョージさんとソフィアが説明してくれた。

 こうなれば一択だろう。言葉を交わさずとも意見が一致しているのは容易に理解できた。

「これにしましょう」

 そうして、思いがけず夏らしいことをすることになった。







 夜。

 満天の星空のもと、依頼現場からほど近いところにある山小屋に来ていた俺たちは、夕飯がてらバーベキューをしていた。

「やっぱ夜になると肌寒いな」

 そんな肌寒さも火を起こせば軽減されるもので、ついこぼした言葉ほど気分が落ち込んでいるわけではない。むしろ。

「アンタがそれ言う⁉ はっ倒すわよ!」

「ケンジローの血が何色か、アタシ確かめてみてもいいですか?」

 女性陣の怒りの眼差しすら、今の俺には心地いい。

 なぜなら、こいつらは俺の命令で水着を着せられているからだ。

「この前言っただろ。貸し一つだと」

 余談だが「だからってこれはないでしょ」とか「アタシまで巻き込まれるのは理不尽なのです」といった抗議は一蹴させてもらった。

 とはいえ、この俺にも身内に対する良心くらいは持ち合わせている。このまま薄着で過ごして体調を崩されたら誰も幸せにならないし、このまま放っておいても仕返しされるレベルで恨まれるだけなので、小屋を指さして一言。

「嫌なら着替えてきていいぞ」

 その言葉を聞いた二人が駆け足で小屋の扉へと手をかけ、なぜか静止。そのまま、壊れたおもちゃのようにこちらへ振り向いた。

 こいつらまさか!

 この小屋は外から覗かれることを想定していないようで、窓はすべて透明で着替えスペースなどないので屋内が丸見えなのだ。

 なんかもう色々察せてしまったのだが、自分が蒔いた種とはいえこれ以上関わって女性陣の逆鱗に触れたくないので耳を塞いで背を向ける。

 俺はもうなにも知らないので片手で耳を塞ぎつつ雑音を聞き流し、焼きあがった肉を頬張る。あーおいしいなー。

 それが気に障ったのか、ダンダンと足音を立てて誰かが背後へ寄ってきたようで、次の瞬間目を覆われた。

「やめろソフィア。そのまま魔法で何か悪さする気だろ」

「しないわよ! あと手の感触だけで誰か特定するな変態!」

 誰が変態だと抗議すべく振り向こうとしたら、瞼に鋭利で硬質な感触を覚えて体を制止させる。

「今マキが着替え中よ。振り向こうとしたら目に爪を食い込ませるから」

「こええよ! やめろよ妖怪マカロン飲み女」

 この女は本当にやりかねないから恐ろしい。

「あら、なにか言ったかしら」

 一言余計だったかもしれない。

 上機嫌な時と声のトーンがあまり変わらないのに、身が凍るような冷気を感じる言葉に全身に怖気が走った。

 まずい。ここ一ヶ月で培った勘が、これ以上変なことを言ったらヤバイと警鐘を鳴らしている。

「……いいや、なんにも」

 そんなくだらないやり取りをしていると、後ろのほうで扉が開閉する音が鳴った。

 どうやら着替え終わったらしい。見習いたい早着替えである。同時に目が解放された。

「次はソフィアが着替える番なのです。ちなみに見ようとしたら瞼の隙間に爪を食い込ませます」

 考え方の程度がソフィアと一緒なんだが。

「見ねえっつの。外見で人を判断してないつもりではいるんだが、さすがの俺も覗き見するならもっとスタイルのいい女性がいい」

 溜息を吐きながらそう溢す。

 今のところ、俺の周りの女性たちはみんなロリっ子みたいな容姿をしている。美少女なのでまだそれでも華があるのだが、やっぱり女性らしい柔らかさというものは大事だろうと主張したい。人間の本能を利用したリラックス効果を期待できる人材が欲しいものである。

「それ、ソフィアの前で言っちゃダメですよ」

 俺の考えなど微塵も察せていないらしいマキが、まるで自分は関係ないかのように言ってのける。

 それがあまりにもおかしく感じたので聞いてみると。

「だってアタシ、まだ成長してますし」

「お前ナチュラルにひどいな。まるでソフィアにはもう未来がないみたいな言い草じゃないか」

 この辺の容赦のなさは年相応と言うべきか。

 矛先が俺に向いてないので気にしないが。

「ケンジローもたいがいですよね。アタシあえて言わなかったことを全部言い切るんですから」

 言いながら、二人そろって笑い合う。

 気を利かせたジョージさんがごみ捨てに行ったのをいいことに言いたい放題である。自分でこんなことを考えるのもなんだが。

「もしかしたら、ソフィアに聞かれてるかもしれませんよ?」

 ひとしきり笑ったマキが、恐ろしいことを言い出す。

「やめろマキ。おっかないこと言うんじゃない」

「聞こえてるわよ」

 瞬間、場が一瞬にして凍り付いた気がした。

 正確には、気がしたのではなく本当に足元から冷気に包まれ始めたのだが。

 これは終わったわ。

 マキと顔を見合わせ、どう言い訳しようか考えていたその瞬間だった。

「──大変ですお嬢様! プチガルダの群れが現れましたぞ!」

 初めて見るジョージさんの焦り方に、お仕置きモードだった雰囲気が一転した。



 夜半過ぎ。

 俺たちはジョージさんの報告を受けて、山小屋近くのごみ捨て場までやってきていた。

「うわぁ、本当にいますよ。あれどうします?」

 茂みに身を潜めながら観察している隣からマキの小声が耳に届く。

 敵までの距離はざっくりと二十メートルくらいだろうか。大小の異なる四体のプチガルダはこちらに気付いている様子は見られない。

 気づかれる前に不意打ちで一体落としてから交戦するのだろうが、狙撃銃ではこの間合いから二発目を命中させるのはまず無理だろう。この前みたいに突撃されたら反撃どころではなくなるはずだ。

 であればどのように立ち回ろうかと考えていると、誰かに背中を軽く蹴られた。

 何事かと思い振り向くと、先ほどのことを根に持っているのか若干不機嫌なソフィアが耳打ちしてきた。

「あいつらを全員撃ち抜きなさい。これは命令よ、ケンジロー」

「無茶言うな」

 ボルトアクションなめんな。

「というか、お前こそなんかそれっぽい範囲魔法で一網打尽にできないのか?」

 何を隠そう、この少女はうちらの中どころか街が誇る魔法のエキスパートだ。出来ないなんてことはないだろうと思い返してみたが、しかし何言ってんだコイツといった眼差しを向けられた。

「そんなことしたら私たちも巻き込まれるわよ」

 さも当然のように言われて一瞬言葉を失う。

「付け足すと、魔法は準備段階に発せられる魔力で居場所がバレます」

 そんなに都合が悪いことがあるのかと思いジョージさんに目を向けると、二人の言葉を肯定するようにうなずかれた。

「マジかよ」

「マジよ」

「マジです」

「マジでございます」

 適当なつぶやきに揃ってそう返された。

 というかお前らノリいいな。さては余裕があるな?

 まあ、それならそれでいいか。下手に怯えて予想外の行動をとられるよりはずっとマシである。

 それはそうとして、なにかいい策はないかとソフィアに聞いてみる。

「なにかいい策って。アンタがお手上げなんて、ついに化けの皮が剥がれたわね」

「まるで俺の素が全手動無策特攻フィジカル全振りマシンみたいに聞こえるじゃねえか」

 労いの言葉かと思いきやただの悪口だった。

「お嬢様。ここは一度離れ、我々が巻き込まれないところから魔法を放つべきでしょう」

 今回珍しく依頼についてきたジョージさんがそう提言する。

 確かに俺も第一感はそう思っていたのだが。

「地形が乱れるからやりづらいわ。この辺は私有地だし、大穴開けようものなら報奨金どころか賠償金騒ぎよ」

 だから悩ましいのだと、俺の考えていることと全く同じことをソフィアが口にした。

 ベテランの執事でも戦闘面は専門外なのだと思うと、事務作業における超人ぶりとのギャップが生まれて親しみやすいか。

 そんなことを話していると、今度はポンと自分の手を叩いたマキが提案してくれた。

「ふっふっふ。今日はアタシのお気に入りのククリを持ってきているのです。撃ち漏らしはすべて錆にしてくれます」

 なので、俺には不意討ちで数を減らし、ソフィアには魔法でサポートしてほしい。マキはそう言葉を続けた。

 やはり初撃で数を減らし、残りを総力戦で削るというのが無難か。

 今回はマキのアイデアを採用しようと思ったその瞬間、何か言いたげだったソフィアが口を開いた。

「まあ、方針としてはそれがセオリーでしょうけど。……マキ、アンタ投げナイフなんてやったことあるの? アイツら飛ぶわよ」

 そんな言葉に、自信満々だったマキが座り込む。

「ご、ごめんね。別にマキの考えが悪いってわけじゃないの。今回は相手が悪いだけよ」

 少し落ち込んでしまったらしいマキを慌てて抱きしめるソフィア。

 百合百合しいのは結構だが、このプチガルダをどう対処するかを早く決めなければいけない。

「まあ、あの群れを無理して倒さなくてもいいんだ。今日はもう帰って寝よう。場合によっちゃ、明日もっと遠い場所から狙撃すればいいさ」

 それに、帰り際によさそうな狙撃ポイントがあったら、一体だけ数を減らして明日また今のような状況にすればいいだろう。

 荷物を担ぎ直す俺に誰も反論しなかった。

 さあ帰ろう。

 そう思って……最初の一歩目が踏み出せなかった。

 我先に帰ろうとした俺の様子が急変したことに怪訝そうな視線を向ける三人。

「……やっぱり、こんなおいしい不意討ちチャンスは見逃せない。のんきに川魚食ってるプチガルダだが、あの小さい個体を見てみろよ。魚の腹の部分だけ器用に最後の一口にしてるじゃねえか」

 そう言って指をさす俺につられて仲間たちが子供と思われる個体に視線を向ける。

 よほどおいしいのか、最後のお楽しみにしているように思える。

 これは嫌がらせスコアが高そうだと思い続きを口にしようとしたら、ソフィアに口をふさがれた。

 そして、正義感あふれる面持ちで。

「みなまで言わせないわ。アンタどうせ『最後のお楽しみを食べる直前で魚を掴んでる前足ごと撃ち抜こう』って魂胆でしょ。これ以上は身内の恥よ」

 もしアンタがその気なら私が一人で戦うから。そう続けるソフィアに、やっぱりコイツは甘ちゃんだと、思わずため息をついた。

 解放された口でソフィアの言葉を訂正する。

「ああ、恥だな。なぜなら、俺の考えはそんなちゃちなもんじゃないからだ」

 ソフィアとマキはいよいよドン引きしているが、そんなことは関係ない。

「ターゲットは最後の一口を食べる直前の子供だが、しっかり脳天を撃ち抜くさ。その方が、近くで微笑ましく見守ってる親個体のメンタルをズタズタにできるだろう」

 言いながら荷物にしまい込んだ銃を再び取り出す。

 逸る気持ちをそのままに照星を合わせようとして、ソフィアに妨害された。

「やらせないわよ!」

「ナイスですよソフィア! アタシも加勢しますよ!」

「あっ、コラ! やめろお前ら!」

 絶対に撃たせまいと両側から掴まれた!

 ジョージさんも黙ってみてないで助けてほしいんだが⁉

 あっこれだめなやつだ。言葉にしないながらもジョージさんもあっち側だ。

「おいお前らホント待て! 暴発するだろ」

 足元を撃とうものなら大惨事になる。

 慌てて安全装置だけでも起動させようとしたその瞬間。

「ああっ!」

 いったい誰の声だろうか。ほぼ同時に発せられたソフィアとマキの声は、しかし銃声にかき消された。

 発砲音とともに銃を持つ手に反動を受ける。

 一方、長いバレルから放たれた弾丸は、今まさに最後の一口を口に運ぼうとしたプチガルダの翼膜を貫き、奥へと飛んでいった。

「アンタ人の心ってないの⁉ プチガルダとはいえあの子は子供なのよ⁉」

「そうですよ! あんなに可愛らしい目をしていたというのに!」

「……つらい役目を負ってくださったこと、感謝申し上げますぞ。ケンジロー殿」

 セリフは三者三様。どれをとっても褒められているようには思えないが。

「まるで俺が鬼畜か何かみたいに聞こえるんだが」

 納得がいかないので反論すると、それはもう物凄い形相のソフィアに掴みかかられた。

「黙れ鬼畜生! ああもう、プチガルダの親子だってあまりの衝撃に固まって──なんで?」

 唾がかかる至近距離で叫ばれて耳が痛いのだが、なぜだかプチガルダの群れを見たまま言葉を失ってしまった。

 つられて視線を向けると、確かに様子が変だ。

 仲間が撃たれたにも関わらず、あの気性の荒いプチガルダが一向に襲い掛かってくる気配がないのだ。

 これにはソフィアだけでなくマキやジョージさんも異変を察知したようで深く考え込んでいる。

「あれ、たぶんですけど弱ってます」

 プチガルダの様子を見てマキがそう言う。

 言われてみれば確かに動きが鈍いように見える。

「なるほど。じゃあ、ほかの三体も」

「やらせないわよ」

 ついでなので撃とうかと思ったら、またしてもソフィアに妨害された。

「なんでだよ」

「こっちのセリフです! そうですよね、ソフィア!」

「もちろんよ!」

 主に女性陣から猛抗議を受けて渋々攻撃をやめる。

「本当にケンジローは。あなたの故郷は修羅の国なんですか?」

「んなわけないだろ」

「お里が知れるわ」

「やかましい」

「想像を絶する修羅場を乗り越えてこられたのかもしれませんな」

「七十年以上戦争してねえ国の出身だよ」

 仲間から反応が惨憺たるものでさすがに少ししょげそうだ。

 そんなことを考えていると、プチガルダの群れのさらに奥から人影が現れた。

 こんな時間に街から外れたところを一人で出歩くやつなど普通はいないし、なにより今日この地域の依頼を受けているのは俺たちだけだったはずだ。

 怪しすぎる。

 先ほどまでのふざけた雰囲気をすぐに切り替え武器を取り出す。

 そんな俺たちを見てもなお歩み寄る人影は、お互いの表情が見えるところまで来ると足を止めた。

「ごきげんよう、紳士淑女の皆さん。某は妖魔教団の幹部が一人『旗槍』である」

 体中に黒い影を纏う大柄な人型生物は、そう名乗ると一礼した。



 ──かつて経験したことのない凄まじいプレッシャーを放つ人影は、しかし今すぐ俺たちに危害を加えるつもりはないようだ。

 妖魔教団の幹部だと名乗る人影は身長が二メートルを超えていそうで、それでいながら声は女性的というおとこ女みを感じる。

「これはこれはどうもご丁寧に。俺はケンジローと申す者だ。用があるなら、悪いが明日出直してくれ。既に定時を過ぎているのでな」

 もちろん嘘である。

 これは口から出任せであり、実際は定時どころか労基法という概念すら存在しないブラックカンパニーである。

 気づかぬうちに顔に出ていたのか、俺を見る長身の人影は怪訝そうな様子を見せる。

「……労働階級の人間か。さぞ疲れているのだろう。なに。某も理解できぬ立場ではない」

 悲壮感漂う『旗槍』の言葉に、場の空気がややコミカルなものに変わる。

 登場時の幹部らしい威厳は一瞬にしてぶち壊れてしまった。

 しかし、もはやそんなことはどうでもいいらしい幹部さまは更に愚痴を吐き出す。

「なあ、人間よ。働き方改革って、いったいなんなのであろうな」

 それは日本出身の俺でもよくわからねえよ。

「あんなの偉い人の戯言だぜ、きっと。さっきは定時なんて言ったが実際はそんなもんはなくって、なんだったら休日すらないんだぜ。ちなみにアレが雇い主のオワコン貴族」

 ソフィアに指をさしながら言う。

 つられて視線を向けた『旗槍』に、当の本人は猛抗議しはじめた。

「あーあ、悲しいわー。心に傷を負ったせいで、私ったらなにかとんでもないことをやらかしちゃうかしら。でもしょうがないわよね、私オワコン貴族だし」

「棒読みやめろ」

 口元に手を当てて宣うソフィアをみて、これはうちの待遇は変わらないものだと再確認。

 さきほどから社畜トークに花を咲かせる俺たちを冷めた目で見ていたマキが一言。

「でも、うちの経理担当はケンジローですよね」

「あぁ。だが、言っておくが無給だぞ」

 実際には必要最低限の生活費を経費という形で落としているので問題ないのだが。

 しかし『旗槍』にとって俺は貴重な話を分かる人間なのだろう。影に覆われて見えないはずの目が心なしか輝いているような気がする。

 ……ここまで上げて落としたら、コイツのメンタルぐちゃぐちゃにできないだろうか。

「まあ、やろうと思えば悪用できるんだがな。例えば、管轄地域から得た税金で私腹を肥やしたりとか」

 さすがにやらないが。

 しかし、効果てきめんだったようで、唐突な裏切りを受けた『旗槍』はガックリと項垂れる。

 ……計画通り!

 思わず口元が歪む。

「まあ、そういうことだ。俺たちは帰るからお前も帰れ」

「……某は幹部であるぞ」

 帰り支度を始めようかと考えていると、そんな言葉とともに再び威圧してきた。それに伴って纏った影が溢れるように広がるので視覚的にも圧がすごい。

 なにか面倒な予感がするな。

 同じように危機を察したらしいソフィアたちが一歩、また一歩と後退する。

 よし、俺も全速力で逃げよう。

 そう考えて一歩目を踏み出したまさにその時だった。

「某は幹部であるぞおおおーっ!」

 影のオーラを迸出させる旗槍は社会への怒りを爆発させた!

 その怒りたるや、感情全開雄たけびは衝撃波を伴い周囲の地形を破壊する。

 当然、最も近くにいた俺もその衝撃波に巻き込まれ──

「これは、想定外だ」

 気づくと衝撃波に靡く木々より高く体が舞い上がっており、思わず浮かんだのは己の身に差し迫る死の確信と既に手の打ちようがないことだけを理解した。

 全身の激痛を感じるころには高所に飛んだ体は地面すれすれまで落下しており──







 ──深海のように暗い場所から急速に浮上するような感覚を味わった次の瞬間、視界の大部分を泣き腫らしたマキの顔が占めていることに気づいた。

 遅れて硬い地面に背中が触れている感覚と、膝枕されているという視覚的情報を認知する。

「ケンジロー殿。お身体に差支えはございませんか」

 ジョージさんの声だ。

 どうやら、倒れている間に相当心配かけたようだ。

 それはそうとして。

「……マキ」

 もう目を覚ましたというのにいまだ膝枕をやめるつもりがないらしい彼女に。

「子供っぽくて弾力が足りない。膝枕チェンジっていたたたた」

 あまりにも高さが低くて枕にすると首が痛い。

 そう考えていたのだが、急に両耳を引っ張られた。

「デリカシーの欠片もない人ですね。手を出しますよ」

 もう出てるんだよ、手が。

 凶暴なマキの手を振り払って立ち上がる。

 立ち眩みする感覚があるが、まあ戦えないこともないだろう。そう考え荷物に手を伸ばそうとして、こけた。

「っ⁉ ……これは予想外だな」

 身体を構成するありとあらゆる組織が破壊されているのではないかと感じるほどの痛みである。もっとも、あれだけ派手に落下してこの程度で済んでいるなら儲けものだが。

 急いで駆け寄るマキとジョージさんに、大丈夫だとアイコンタクトを送る。

 それより、遠くで『旗槍』と対峙しているソフィアを助けてやらないと。

 再び立ち上がろうとしたが、今度はジョージさんに阻まれた。

「安静になさってください、ケンジロー殿」

「無理は禁物なのです。ソフィアも『とりあえず死なない程度までしか治せなかった』と言ってましたし、ここはアタシたちに任せてください」

 二人がかりで止められたので体から力を抜く。

 体は正直で振り払うだけの体力すら惜しいのだ。

 ここは素直に仲間を頼るとしよう。

「そこまで言うなら動きはしないが。代わりにマキが援護射撃を行ってくれ」

 幸い、装備していた狙撃銃は壊れておらず、引き金を引くだけなら誰でもできる。

 反動がデカいので、普段から戦闘に慣れており意外と膂力のあるマキにやってもらおう。

「いやいや待ってください! アタシには無理ですよ! 学園時代も弓術だけは本当に無理だったんです!」

「照準は俺が合わせる。マキは銃身がブレないように引き金を引くだけでいい。ジョージさんは救援信号的なものがあればそれを使って助けを呼んでくれ」

 言いながら、二脚で支えられた狙撃銃を微調整する。

 口をパクパクさせているマキをよそに援護射撃の準備をしていると、ジョージさんが荷物から何かを取り出し、俺の手元に置いた。

「そちらは結界石でございます。魔力鉱を加工したもので、一度限りあらゆる衝撃から身を守りますぞ」

 なんだそのめちゃくちゃ便利なアイテムは。でもお高いんだろう?

 今まで出し惜しみしてきた代物だということで身構えてしまう。そんな仕草から察したのだろうか。ご安心ください、とジョージさんは続ける。

「そちらの結界石は一つあたり百四十万シルバーでございます故。決して、命より重いようなものではございませぬ」

 百四十万、だと⁉

 まさかの額に、俺もマキも思わず言葉を失う。

 日本円換算で一億四千万円。確か去年の当家が管轄する領地の総生産が百五十万シルバーを少し超えるくらいだったと聞いているので、その額には驚きを禁じ得ない。

 できるだけ温存して街に持ち帰り、さっさと換金してしまおう。

 悪知恵を働かせつつ、どこかへ退避するらしいジョージさんの言葉に耳を傾ける。

「山小屋に戻れば警報装置がございます。わたくしはそちらを起動し、周辺地域の危険度上昇と救難要請情報を発信してまいりますぞ」

「ああ、任せた」

 そんな便利な装置があるならぜひ活用してほしい。

 駆けてゆくジョージさんに『旗槍』の注意が向いていないのを確認し、狙撃銃の銃口を少しずらす。

 銃口の向く先では、どこにしまっていたのかわからない長大な薙刀を振り回す『旗槍』と、その猛攻を魔法を駆使して耐え凌ぐソフィアがいる。

 動きは激しいが『旗槍』の攻撃後を狙えばいいだろう。エイム系スキルのレベルは上げてあるので精度は大丈夫だろう。問題があるとすれば。

「撃て」

 短い指示にマキは引き金を引いて応じる。

 すさまじい発砲音とともに、地面に伏せるマキが後ろに滑った。

 これで完全に位置バレを起こした。

 狙撃銃の性質上、今の一撃でこちらはしばらく攻撃不能。銃弾を受けた『旗槍』も被弾箇所を手で押さえて静止。たった一人動けるソフィアはすぐに発砲音による動揺から我に返り、大型の魔法を詠唱し始めた。

「大丈夫か、マキ」

 反動によって派手に地面を擦ったマキを気遣い声をかけるが、帰ってきたのはやり切った表情とサムズアップであった。

「やりました。……ところで、リロードってどうやるんですか?」

「コッキングレバーを……って、そんなことしてる余裕はなさそうだ」

 熱を持った薬莢は故障の元なのでいち早く排莢したいのだが、残念ながら状況が許してくれないようだ。

 たった今被弾した『旗槍』が既にソフィアへ攻撃を再開しているではないか。

 ソフィアもバカではないので詠唱前には必ず防壁魔法を展開しているらしい。それも何重にも重ねているらしいが、防壁は先ほどから一撃で破壊されているので長くはもたないだろう。

「射撃中止だ。マキはコイツをもってソフィアを支援してこい」

 結界石をマキへパスする。

 換金したい気持ちは山々な代物であるが、ソフィアの命には変えられないので迷いはない。

 こんなところでアイツを死なせたらおそらくこの先俺はしばらく後悔することだろう。それだけは避けたいところだ。

「わかりました。ケンジローはそこで休んでてくださいよ」

 言われなくてもそのつもりだ。

 そう返してやると、マキはそれでよろしいとでも言いたげな様子で頷き駆けていった。

 さて。全員いなくなったので体を動かし狙撃銃に触れる。

 排莢し、次の弾を装填しようとして、ふと気づく。

 罠の投擲系スキルは素手で投げずとも、紐に括り付けて投げても発動した。

 であれば、罠効果付与スキルを銃弾に使ったら、疑似グレネードランチャーが出来上がるのではないだろうか。

 失敗したら引き金を引いた瞬間自爆に終わるが、成功すれば着弾した瞬間敵の体内でドカンとなるだろう。

「……面白くなってきたな。ともに破滅しようではないか」

 改造に次ぐ改造により一発しか装填できなくなった弾倉に銃弾を込める。

 詠唱中のソフィアに猛攻を仕掛ける『旗槍』に照準を合わせて引き金を引く。

 強烈な破裂音とともに爆発が起こった。

 狙い通り『旗槍』に命中し、同時に爆発したようだ。

 それにしても、茂みに隠れて撃ったにしては状況を確認しやすい。何故だろうかと考え始めたほんの数瞬の間に体の浮遊感と血の味を感じ取った。

 ああ、どうやら自爆したらしい。

 血を失って意識が落ちていく中で、周辺一帯を巻き込む大爆発が起こったような気がした……
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【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
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第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
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冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
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9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

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