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水と花の都の疾風姫編
愉しみの裏側もまた愉悦
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──森で大爆発が起きた瞬間から二十分ほど遡った頃。
『おい、ボンクラ! 奴はいったいどこに潜んでいる!』
『ひ、ひぃっ! さっきから索敵スキルを使って探知してますけど、全然引っかかりませぇん!』
『うっせえ! せっかくなけなしのカネで雇ってやったんだ! つべこべ言ってねえで、曲者の一人や二人くれぇ炙り出せ!』
レイ伯爵という依頼主の別荘へ続く道にいる冒険者用の銃を装備した数名の人間たち。彼らに傍受のスキルを使うと、そんなやり取りをしているのがわかった。
雪をかぶった茂みに身を潜めているうえ、三日月が出ている程度の明るさの夜なので、スキル以外での探知は困難を極めるだろう。敵の殺意をトリガーに反応するシーフの索敵スキルを除くと、今の人類にはロクな索敵手段がないはずだ。
ちなみに、あんな弱気で臆病なシーフを狙撃する気はないので、俺はあのシーフの索敵スキルに引っかかることは二度とないだろう。そうなると、雇われのシーフが無能扱いされて虐められるだろうが、そこまでは俺の責任ではないのでスルー。
それより気になるのは、そもそもあの数名の人間が銃など装備して誰かを探しているのか、である。
ターゲットは誰なのか、なぜこの辺りを捜索しているのか。そのあたりの情報が欲しいところ。
俺が狙われていないのであれば速やかに場所を変えようと考えていたが、傍受した情報によって考えを改めさせられることになる。
『アオキとかいう野郎が狙撃を得意とするから俺らで潰せ、とレイ様から直々にご命令があったんだ。絶対に潰す』
やっぱり俺が狙いだったか。嫌だなぁ。
さっきまで森の中の魔物を狙撃していたから、なるべく消音していたとはいえ大まかな位置はバレていると考えるべきだろう。
今の俺が隠れているように、この辺は茂みの上に雪が被っているような身を隠す場所が多い。
交戦するなら隙をついてこちらから狙撃して、夜闇に紛れて茂み間を走り抜けて場所を移すのがセオリーだ。しかし、それは相手も同じで、見えているだけなら銃を装備したのが三人と憐れなシーフが一人だが、敵の誰かが既に茂みに身を潜めているのならもはや看破する術がない。
今度ソフィアに熱源感知スコープのような機能を持った魔法道具を作れないか聞いてみたいところだ。
そのためにもまずは安全に生き延びて、彼女らの援護射撃を再開しなければならない。
『仕方ねえ。数の利は俺らにある。野郎ども! 人が潜伏できそうな場所をくまなく──』
傍受のスキルで聞こえる声が途切れる。
なぜならされては困る指揮をとろうとした、まとめ役とみて間違いない男を狙撃したからだ。
──マズいことになった。
さっきの狙撃で銃持ちの三人を重傷に追い込んで、終始怯えていたシーフに回収させたところまではよかったのだ。だが、想定していた通り、既にその辺に俺を狙う奴が潜んでいたのだ。
不意の狙撃に被弾したものの、身に着けていた防具が弾いてくれた。
普段は防具類をあまり気にしていないせいで、着てきた安物の鎧が使い物にならないくらい千切れ飛んでしまった。こんなことになるならもっといい防具を装備していればよかったと思う半分、なぜこれだけ派手に千切れ飛んだのにその下にあった俺の左肩が無事だったのか不思議でならないのが半分。
そのタイミングでカウンタースナイプして先制してきた奴が派手に血を流して吹き飛んだのは見えたが、どうやらもう一名いるらしい。これが本当にマズい。
少し場所を移したとはいえ、元いた場所は当然バレているだろう。そうなれば、そのあたりをじっくり探されるとすぐ見つかってしまうはずだ。
荷物から爆発する罠を取り出しておもむろに投擲してみる。以前も使った、銃で起爆して光と音に紛れて逃げるという方法。今回もそれを狙っていたのだが、俺が銃を構えるよりもずっと早く罠が起爆した。
凄まじい反応速度と射撃精度に肝を冷やす。
少しでも何かが動けば抜かれるというわけだ。
しかも、わざわざ設置するタイプの罠を投げた時点で手の内は割れたはず。これもまたマズい。
ソフィアに持たされたお手製の携帯食料もついでにマズいので、これでマズいの数え役満だ。
ダークマターを思考から追いやり次の一手を考え始めたその瞬間、音を立てて近くの岩に弾痕が付いた。
弾痕が付いた岩の向きからして街道を挟んでずっと奥の延長線上、それも緩やかながら邪魔になりそうな起伏がある中唯一狙撃に使えるはずの木陰を望遠する。すると、体こそ見えないが今まさに銃身を隠そうとしている瞬間を目撃した。
距離にして二キロメートル強。射撃精度系、それも必中クラスのものを使ったとしても銃や弾の状態が悪ければ当てにくい距離だ。
先ほどの敵と装備が同じなら弾はさほど物を貫通しないだろう。射撃精度系のスキルは手振れや風、敵の動きに対して弾道補正をかけることで精度を上げるが、そもそも狙いを澄ましていないと発動しなかったり効果が中途半端になるらしい。
今まで単発で一回ずつ丁寧に狙いをつけてきたので気にしていなかったが、精度が悪いサブマシンガンとかを持ったら、必中スキルを習得している俺でさえ的に当たる自信がない。
だが、それはそれとして今使っている魔法銃は、霧の国でも有数の実力を持つ賢者が改造した装置付きの優れものだ。それが自信を与えてくれる。
「甘い!」
ものすごく光って目立つので控えていた電磁射撃装置に魔力を吸わせて、敵が潜伏した樹木ごと極超音速の弾丸でぶち抜いた。
発砲後ごくわずかな時間で弾丸がプラズマ化するので見た目に反して射程が短いが、それでも高速なので二キロメートルくらいならギリギリ届く。
生き残ろうと思うとそれこそ射程ギリギリでかつ、賢者が張るような高位のバリアを使わないと無理だろう。バリアで軽減しながら急所が外れるように祈り、そのうえで大怪我した患部の回復が間に合えば耐えられるだろう。
まず耐えられないだろうが生きているかもしれないので地面がえぐれてしまった着弾点を眺める。すると、血を流しながらもわずかに動く伏せた敵を発見した。もはやあれだけ血を流していると放置しても死にそうなものだが、道連れにしようと撃たれても困るのでもう一発撃ってみる。
……目標沈黙。
他に敵がいないか確認してみるが、茂みは倒した敵がクリアにしているし、他は堂々と魔物が闊歩しているので俺を狙う敵はいないと見てよさそうだ。
そうなるとソフィアたちの援護射撃に戻るべきだが、その前に比較的近くで倒した奴の持ち物を漁ってみようと考えて遺体のそばまでやってきたのだが。
「黒い鱗? コイツ、人間じゃないな」
思わずそう呟きながら、何者を倒したのか冒険証の討伐履歴を見て確認する。どうやらコイツはリザードマンだったようだ。
傍受したやり取りからしてレイ伯爵の配下で間違いないが、アイツは魔物まで囲っていたのか。
そうなると持ってる食料品が人間の食える物か怪しいが、一応荷物を漁ってみよう。
かばんはほぼ無傷だったので中を見てみると、やけに水が多かった。
その中に林檎を干したような保存食があったのでありがたく頂戴する。ソフィアが作る料理はどれも焦げてて美味しくないのだ。
本人は自信作だと言っていたのでありがたく受け取るように振る舞ったが、マズいものはマズいのでしかたない。
小腹を満たして眠気を飛ばしていると、森の中が突然光り出すのが見えた。
あの辺りは依頼現場だったはずなので、ソフィアたちが交戦しだしたのだろう。
飲食を中断して狙撃態勢に入るが、ここからではよく狙えない。場所を移そう。
──移動開始から数分経った頃。
今のところ、魔法戦特有の激しい光や、間違いなく『月夜見』がスキルを使ったであろう明るすぎる月明りが辺りを照らすのがわかっている。
未だに轟音が鳴りやまないが、森でソフィアのものと思わしき大爆発も起きていたので、仲間たちが魔力切れを起こす前に援護に回りたい。
最初の場所から随分動かされたので走っても走ってもいい感じの狙撃場所を探せないのがもどかしい。というか、明るすぎるんだよ。
まだ五百メートル以上離れているが、これ以上近づくと視認されそうなので近くの木で身を隠そう。
状況を見ると、金髪の男の周りに立っている奴だけでも十を超える全身鎧がいるのがわかった。
とりあえず鎧を着たヤツは狙撃するだけ無駄だろう。
先ほどみたいに魔力式の電磁加速装置で威力を増幅させればやれるだろうが、大変なことにもう魔力がないのだ。なので、今の俺が撃てるのは有効射程三百メートル前後の弾で、あれほどガチガチの防具を貫くだけの貫通力は発射した弾にはないはずである。
関節部を裏から壊すように狙撃できれば貫けそうだが、四肢を壊してもあれだけ敵がいると効果は小さい。
横やりを入れられるだけでもソフィアたちの援護にはなるが、敵の魔法使いが放った魔法がここまで届いたらまず助からない。しかも、攻撃魔法の中でも遠距離でも減衰しにくい雷撃系の魔法を多用しているのも警戒すべき点である。
こんなことなら、質は悪くてもさっきの敵が使っていた銃を拾ってくるべきだった。あちらの方が俺が使っている銃と違ってコッキングが要らない装置がついていて連射が効くからだ。
セミオートみたいなものはないと思っていたが、魔力装置の可能性は無限大なのだと思い知らされる。
まあ、そのせいで精度が落ちていたようで命拾いしたのだが。
何にせよ、過ぎてしまったことは仕方ないので俺は俺のやるべきことをしよう。まずは、頭頂部だけなぜか装備を着ていない金髪の魔法使いから狙撃しよう。
狙撃の効果が大きそうだというのもあるが、着ている物が豪華なのでもしかしたらアイツがレイ伯爵ご本人かもしれない。
そうして狙いを定めて引き金を引くと、狙い通りに飛んだ弾は金髪頭にあたる直前に謎の力で軌道をそらされた。
直後、こちらを振り向いたあたり間違いなく気づかれただろう。
すぐさま反撃しようとしていたが、ソフィアたちの相手を優先しだす金髪を見て、俺は速やかにこの場を離れた。
『おい、ボンクラ! 奴はいったいどこに潜んでいる!』
『ひ、ひぃっ! さっきから索敵スキルを使って探知してますけど、全然引っかかりませぇん!』
『うっせえ! せっかくなけなしのカネで雇ってやったんだ! つべこべ言ってねえで、曲者の一人や二人くれぇ炙り出せ!』
レイ伯爵という依頼主の別荘へ続く道にいる冒険者用の銃を装備した数名の人間たち。彼らに傍受のスキルを使うと、そんなやり取りをしているのがわかった。
雪をかぶった茂みに身を潜めているうえ、三日月が出ている程度の明るさの夜なので、スキル以外での探知は困難を極めるだろう。敵の殺意をトリガーに反応するシーフの索敵スキルを除くと、今の人類にはロクな索敵手段がないはずだ。
ちなみに、あんな弱気で臆病なシーフを狙撃する気はないので、俺はあのシーフの索敵スキルに引っかかることは二度とないだろう。そうなると、雇われのシーフが無能扱いされて虐められるだろうが、そこまでは俺の責任ではないのでスルー。
それより気になるのは、そもそもあの数名の人間が銃など装備して誰かを探しているのか、である。
ターゲットは誰なのか、なぜこの辺りを捜索しているのか。そのあたりの情報が欲しいところ。
俺が狙われていないのであれば速やかに場所を変えようと考えていたが、傍受した情報によって考えを改めさせられることになる。
『アオキとかいう野郎が狙撃を得意とするから俺らで潰せ、とレイ様から直々にご命令があったんだ。絶対に潰す』
やっぱり俺が狙いだったか。嫌だなぁ。
さっきまで森の中の魔物を狙撃していたから、なるべく消音していたとはいえ大まかな位置はバレていると考えるべきだろう。
今の俺が隠れているように、この辺は茂みの上に雪が被っているような身を隠す場所が多い。
交戦するなら隙をついてこちらから狙撃して、夜闇に紛れて茂み間を走り抜けて場所を移すのがセオリーだ。しかし、それは相手も同じで、見えているだけなら銃を装備したのが三人と憐れなシーフが一人だが、敵の誰かが既に茂みに身を潜めているのならもはや看破する術がない。
今度ソフィアに熱源感知スコープのような機能を持った魔法道具を作れないか聞いてみたいところだ。
そのためにもまずは安全に生き延びて、彼女らの援護射撃を再開しなければならない。
『仕方ねえ。数の利は俺らにある。野郎ども! 人が潜伏できそうな場所をくまなく──』
傍受のスキルで聞こえる声が途切れる。
なぜならされては困る指揮をとろうとした、まとめ役とみて間違いない男を狙撃したからだ。
──マズいことになった。
さっきの狙撃で銃持ちの三人を重傷に追い込んで、終始怯えていたシーフに回収させたところまではよかったのだ。だが、想定していた通り、既にその辺に俺を狙う奴が潜んでいたのだ。
不意の狙撃に被弾したものの、身に着けていた防具が弾いてくれた。
普段は防具類をあまり気にしていないせいで、着てきた安物の鎧が使い物にならないくらい千切れ飛んでしまった。こんなことになるならもっといい防具を装備していればよかったと思う半分、なぜこれだけ派手に千切れ飛んだのにその下にあった俺の左肩が無事だったのか不思議でならないのが半分。
そのタイミングでカウンタースナイプして先制してきた奴が派手に血を流して吹き飛んだのは見えたが、どうやらもう一名いるらしい。これが本当にマズい。
少し場所を移したとはいえ、元いた場所は当然バレているだろう。そうなれば、そのあたりをじっくり探されるとすぐ見つかってしまうはずだ。
荷物から爆発する罠を取り出しておもむろに投擲してみる。以前も使った、銃で起爆して光と音に紛れて逃げるという方法。今回もそれを狙っていたのだが、俺が銃を構えるよりもずっと早く罠が起爆した。
凄まじい反応速度と射撃精度に肝を冷やす。
少しでも何かが動けば抜かれるというわけだ。
しかも、わざわざ設置するタイプの罠を投げた時点で手の内は割れたはず。これもまたマズい。
ソフィアに持たされたお手製の携帯食料もついでにマズいので、これでマズいの数え役満だ。
ダークマターを思考から追いやり次の一手を考え始めたその瞬間、音を立てて近くの岩に弾痕が付いた。
弾痕が付いた岩の向きからして街道を挟んでずっと奥の延長線上、それも緩やかながら邪魔になりそうな起伏がある中唯一狙撃に使えるはずの木陰を望遠する。すると、体こそ見えないが今まさに銃身を隠そうとしている瞬間を目撃した。
距離にして二キロメートル強。射撃精度系、それも必中クラスのものを使ったとしても銃や弾の状態が悪ければ当てにくい距離だ。
先ほどの敵と装備が同じなら弾はさほど物を貫通しないだろう。射撃精度系のスキルは手振れや風、敵の動きに対して弾道補正をかけることで精度を上げるが、そもそも狙いを澄ましていないと発動しなかったり効果が中途半端になるらしい。
今まで単発で一回ずつ丁寧に狙いをつけてきたので気にしていなかったが、精度が悪いサブマシンガンとかを持ったら、必中スキルを習得している俺でさえ的に当たる自信がない。
だが、それはそれとして今使っている魔法銃は、霧の国でも有数の実力を持つ賢者が改造した装置付きの優れものだ。それが自信を与えてくれる。
「甘い!」
ものすごく光って目立つので控えていた電磁射撃装置に魔力を吸わせて、敵が潜伏した樹木ごと極超音速の弾丸でぶち抜いた。
発砲後ごくわずかな時間で弾丸がプラズマ化するので見た目に反して射程が短いが、それでも高速なので二キロメートルくらいならギリギリ届く。
生き残ろうと思うとそれこそ射程ギリギリでかつ、賢者が張るような高位のバリアを使わないと無理だろう。バリアで軽減しながら急所が外れるように祈り、そのうえで大怪我した患部の回復が間に合えば耐えられるだろう。
まず耐えられないだろうが生きているかもしれないので地面がえぐれてしまった着弾点を眺める。すると、血を流しながらもわずかに動く伏せた敵を発見した。もはやあれだけ血を流していると放置しても死にそうなものだが、道連れにしようと撃たれても困るのでもう一発撃ってみる。
……目標沈黙。
他に敵がいないか確認してみるが、茂みは倒した敵がクリアにしているし、他は堂々と魔物が闊歩しているので俺を狙う敵はいないと見てよさそうだ。
そうなるとソフィアたちの援護射撃に戻るべきだが、その前に比較的近くで倒した奴の持ち物を漁ってみようと考えて遺体のそばまでやってきたのだが。
「黒い鱗? コイツ、人間じゃないな」
思わずそう呟きながら、何者を倒したのか冒険証の討伐履歴を見て確認する。どうやらコイツはリザードマンだったようだ。
傍受したやり取りからしてレイ伯爵の配下で間違いないが、アイツは魔物まで囲っていたのか。
そうなると持ってる食料品が人間の食える物か怪しいが、一応荷物を漁ってみよう。
かばんはほぼ無傷だったので中を見てみると、やけに水が多かった。
その中に林檎を干したような保存食があったのでありがたく頂戴する。ソフィアが作る料理はどれも焦げてて美味しくないのだ。
本人は自信作だと言っていたのでありがたく受け取るように振る舞ったが、マズいものはマズいのでしかたない。
小腹を満たして眠気を飛ばしていると、森の中が突然光り出すのが見えた。
あの辺りは依頼現場だったはずなので、ソフィアたちが交戦しだしたのだろう。
飲食を中断して狙撃態勢に入るが、ここからではよく狙えない。場所を移そう。
──移動開始から数分経った頃。
今のところ、魔法戦特有の激しい光や、間違いなく『月夜見』がスキルを使ったであろう明るすぎる月明りが辺りを照らすのがわかっている。
未だに轟音が鳴りやまないが、森でソフィアのものと思わしき大爆発も起きていたので、仲間たちが魔力切れを起こす前に援護に回りたい。
最初の場所から随分動かされたので走っても走ってもいい感じの狙撃場所を探せないのがもどかしい。というか、明るすぎるんだよ。
まだ五百メートル以上離れているが、これ以上近づくと視認されそうなので近くの木で身を隠そう。
状況を見ると、金髪の男の周りに立っている奴だけでも十を超える全身鎧がいるのがわかった。
とりあえず鎧を着たヤツは狙撃するだけ無駄だろう。
先ほどみたいに魔力式の電磁加速装置で威力を増幅させればやれるだろうが、大変なことにもう魔力がないのだ。なので、今の俺が撃てるのは有効射程三百メートル前後の弾で、あれほどガチガチの防具を貫くだけの貫通力は発射した弾にはないはずである。
関節部を裏から壊すように狙撃できれば貫けそうだが、四肢を壊してもあれだけ敵がいると効果は小さい。
横やりを入れられるだけでもソフィアたちの援護にはなるが、敵の魔法使いが放った魔法がここまで届いたらまず助からない。しかも、攻撃魔法の中でも遠距離でも減衰しにくい雷撃系の魔法を多用しているのも警戒すべき点である。
こんなことなら、質は悪くてもさっきの敵が使っていた銃を拾ってくるべきだった。あちらの方が俺が使っている銃と違ってコッキングが要らない装置がついていて連射が効くからだ。
セミオートみたいなものはないと思っていたが、魔力装置の可能性は無限大なのだと思い知らされる。
まあ、そのせいで精度が落ちていたようで命拾いしたのだが。
何にせよ、過ぎてしまったことは仕方ないので俺は俺のやるべきことをしよう。まずは、頭頂部だけなぜか装備を着ていない金髪の魔法使いから狙撃しよう。
狙撃の効果が大きそうだというのもあるが、着ている物が豪華なのでもしかしたらアイツがレイ伯爵ご本人かもしれない。
そうして狙いを定めて引き金を引くと、狙い通りに飛んだ弾は金髪頭にあたる直前に謎の力で軌道をそらされた。
直後、こちらを振り向いたあたり間違いなく気づかれただろう。
すぐさま反撃しようとしていたが、ソフィアたちの相手を優先しだす金髪を見て、俺は速やかにこの場を離れた。
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