初冬

杉山 実

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突然の出来事

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青木俊三は久々に新聞をゆっくりと読んでいた。

今日の配達で購読を辞めると連絡した最後の新聞だった。

色々な物を整理したが、新聞が意外と最後に成っていたのだ。

妻の順子がこの家を出て行ってから、既に二か月が経過していた。



娘が嫁いだ結婚式の帰り道、突然順子が別れ話を切り出して来た。

俊三には青天の霹靂だった。

「何故今日なのだ!」

「娘の翔子は知っていますよ!」ぽつりと言う順子。

「、、、、、、、、、、、、、、、、」

今日まで我慢していたのだと順子は理由を一言話し出した。

「凛子さんって聞いたら、何も聞かなくても判るでしょう?」

顔色が変わる俊三には返す言葉が無かった。

「知っていたのか?、、、、、、、、、」

ぽつりと口走った後はお互いの沈黙が続いた。



順子は既に出て行く準備を終わっていた。

自宅に帰ると捺印した離婚届を俊三に手渡して「今から出て行きます!荷物は整理が終わっていますので後日引っ越し屋さんが来ると思います!」

「手回しが良いのだな!」

「既に18年も待ったのよ!長かったわ!貴方も元気でね!」

俊三が凛子と別れて既に10年の月日が流れていた。

その間一度も順子からそれらしき事を聞いた事が無かった。

結婚式の当日の夜、忽然と消えた順子。



俊三はこの二か月で、家の事が多少理解出来る様に成った。

最初の一週間は近所のコンビニで買った物を食べていたが、最近では簡単な物を自分で作る。

購読している新聞も片付けに困るのと、朝読めば殆ど見る事が無いので辞める事にして、今目の前に在る物が最後の新聞だった。

妻の有難みがこの二か月身に染みている。



その俊三が三面記事の一点に目が止まった。

東北自動車道路のトンネルでの多重衝突事故の記事に目が止まって居た。

東北、岩手の記事には時々今でも目が止まる俊三。

「子供を含む10人が重軽傷、内5人の死亡の記事だった。

その中に死亡したのは周文雄45歳と子供二人と記事に見つけた俊三。

「周!確か凛子の旦那も周だったな!まさか?」独り言の様に口走る。

電話番号だけは知っているが、メールも電話も別れてから通じた事は一度も無かった。

約10年前に凛子が周と付き合って居た事実を問い詰めると、何も言わず別れる事に成った。

その後凛子が何処に住んで、どうしているのか?調べた事も無いしでお互い音信不通に成っていた。

唯、周と結婚した事実だけは風の便りに知っていた俊三。

今何処に住んでいるのか?子供が産まれた事は周のフェイスブックで昔見た事が有る。



もしもこの周さんが凛子の旦那さんなら、凜子は同時に子供と亭主を失った事に成る。

これ以上ない不幸が彼女を襲ったのかも知れない。

自分も二か月前、突然妻に逃げられた不幸が、、、、、、

幸せの凜子にも?

その後も胸騒ぎが収まらない俊三は、新聞社に電話をして記事について尋ねた。

一番の心配は4人で乗っていて、凜子だけが怪我をして入院している可能性を確かめたかった。

俊三の不安は外れて、亡くなったのは親子三人で母親らしき人は同乗していなかった。

一旦は安堵したが、もしも凛子が母親なら哀しみは計り知れない。

久々に凛子の携帯番号を出して発信した。

いつもは呼び出し音の後、メッセージが流れて終わるのだが、、、、、、

呼び出し音も無く、いきなりこの番号は使われて居ません!のメッセージが流れた。

携帯変更したのか?

随分長い間電話をかけた事は無かった。

以前は呼び出し音が虚しく鳴るだけだったと記憶していた。



俊三は事故の周が凛子の亭主だと決まった訳では無いと頭では否定するが、どんなに哀しみ落ち込んでいるだろう?自分が電話をしたから安らぐ訳では無いだろうが、胸騒ぎが収まらない。

確か凛子は航空会社に勤めて居たから、一緒に出掛けて居なかった?

既に離婚している?全くの別人?

想像は尽きないが、何をどうする?自分に問いかける俊三。



年金生活の俊三は順子に去られてからは、洗濯、買い物、掃除が一日の大事な仕事だ。

洗濯は週に二日、掃除も同じ、買い物も同じで、曜日で決めている。

暇な時間はテレビドラマの再放送を見て、この二か月は妻が去った後の整理に明け暮れていた。



夕方、思い出した様に新聞社に電話をする俊三。

忘れようと思ったが、やはり凛子の顔が目の前にちらついて確かめずにはいられない。

「事故の死亡者の何が聞きたいの?」ぶっきら棒に答える。

「周さんの住所と奥さんの名前判りませんか?知り合いだと思うのですが?」

「連絡先知らないの?」

「はい!10年も前に付き合いがなくなりましたから、その後転居されて居ますから、、、、、」

「住所は判るけれど、教えられませんね!この様な事故の場合、隙を狙う人も多いので新聞社としては教えない事にして居るのですよ!」

「えーー、私は怪しい者では有りませんよ!」

その様に言ったが、電話は無情にも切られた。

警察に尋ねた方が良いと最後の捨て台詞が耳に残る。

「警察か?岩手の?」呟く様に言う俊三。

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