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危機一髪
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84-026
輝いて見える自転車の女性は駅前の街路樹の横に自転車を止めた。
そして、髪をかき上げると睦の方を見た。
「あっ、あの顔!」小さく叫んだ睦。
その時、一台のタクシーが駅前のロータリーに来たが、既に睦の目には入って居なかった。
間違い無いわ!落合さんだわ!何処へ行くのかな?目で追う睦。
自転車を置く目の前に小さな美容院が見えて、麻結は真っすぐ店の方に歩いて入った。
睦はお兄ちゃんに会う為に美容院で髪を?でも綺麗な感じだったな?不思議に思いながら美容院の方向に歩いて行った。
まさか兄と別れる為に、髪を切りに入ったとは思っても居ない睦だ。
小さな美容院の前まで来たが、いきなり入って兄とお付き合いをして頂いています!とも言えない。
偶然を装って入るのも、言い訳に困ると考えながら扉の横のガラス越しに中を見た。
小さな美容院で大きな鏡が目に飛び込む。
そこに映し出されているのは、知らない中年の叔母さんの顔だった。
出来上がりを見せているのか、鏡で後頭部を映して確認の様だ。
あの落合さんは何処だろう?見える範囲で探すが見えない。
睦は本人に会ったので、自宅に行く必要は無い様に思って美容院の前で立って、時々中の様子を見る。
しばらくして、先程の中年女性が出て来た。
ここで待って落合さんが出て来た時に挨拶をするのも変な話だ。
でも本人と出会って今更自宅を見に行くのも?どうするか?時計を見ると、10時前だ。
一時間以上時間が有るのに?美容院で不思議に思って再びガラス窓を覗く睦。
(お兄ちゃん‼魚住駅前で落合さんに会ったよ!)
(えーーいきなり会ったのか?挨拶したのか?)
(駅を降りたら、彼女が美容院に入って行ったから、まだ何も話をしてないわ)
(美容院へ?随分早いな!混んでいる店か?)
(昔からの馴染の店の様よ!客は今誰も居ないと思うわ!彼女だけかな?)
lineをしながらガラス窓を見ると、ようやく麻結の後ろ姿が目に飛び込む。
シャンプーをしていたのかな?睦の角度から時々麻結の顔が鏡に入り込む。
手振りで何かを相談している様に見えて、その手の位置が肩より上で耳の辺りに有る。
(カットに来た様だわ!それも極端に短くする様に見えるわ!)
(えーー、そんな!睦止めてくれーーー)叫ぶような武史のlineに只ならぬ事を感じた睦。
扉を開くと勢いよく中に入った。
櫛で長い髪を梳き始めた店主が「いらっしゃいませ!」と睦に向かって笑みを投げた。
「髪を切るのですか?」いきなり後ろから言ったが、麻結は自分の事では無いと思って反応が無い。
店主は「しばらくお待ち下さい!この方が終わりましたらに成ります!」
睦の方を向いて言った。
右手にハサミを持って、左手には櫛を持っていた。
「落合さん!髪を切るのは止めて下さい!」少し大きな声で叫ぶ様に言う睦。
その言葉に驚いて振り返る麻結。
「貴女どなた?私は貴女の事知らないわ!誰かと間違っていらっしゃるの?」麻結は座ったままで椅子を回転させている。
カットクロスが首に巻き付けられて、これから散髪の時だった。
「私は大森武史の妹です!兄は貴女が家族に反対されて困っているだろうと、話して居ました!今日会う時、兄を失望させて別れる予定でしょう?」麻結の心を見透かした様な言葉。
「えっ、妹さん?何故ここに?」麻結は武史の妹が目の前に突然現れて、驚きで状況が判らなかった。
「お兄ちゃんはあの身体だから、見合いをしても殆ど断られるの!最近では申し込むだけで見合い迄進まないの!今回落合さんに申し込まれて困惑していたけれど、三回も会えたと喜んでいました!でも兄は落合さんと結婚出来るとは思って居ません!家庭の事情で自分と見合いしたと思っています!兄は自分から断りませんよ!落合さんが坊主で現れてもね!でも兄は落合さんの髪がとても綺麗で素敵だと褒めて居ました!私にお前もあれ位綺麗な髪に出来ないのか?と冗談を言いました!」睦の必死の言葉に麻結は返す言葉が無かった。
「だから言ったでしょう?麻結ちゃんの髪は特別綺麗から、切らない方が良いと!恋人との思い出も一杯詰まっているでしょう?」店主は切る事に反対をしていた様だ。
「、、、、、、、」
「髪が伸びたら結婚式で日本髪を結うって、高校生の時から話して居たのよ!良かったわ!止める人がいらっしゃって、麻結ちゃんも本当は切りたくなかったのよ!そうでしょう!」明子は説得する様に言った。
「うん!」と頷いた麻結の顔は涙で濡れていた。
「今日兄に会ったら、正式に断って下さい!兄は断られても怒りません!それと失望もしません!きっと自分に与えられた試練だと思う筈です!十数年前は全く歩けずにトイレに行く事も大変だったのです!その時の苦しみに比べたら楽だと言う筈です!よろしくお願いします!」深々とお辞儀をすると睦は店を出て行く。
「ま、待ってーー」
首に巻き付けたカットクロスのまま睦を追いかける麻結。
自分の身勝手で見合いをして断る為に考えた事を恥じる。
外に出ると、睦が駅の方に走って行くのが見えた。
麻結は戻るとカットクロスを外して店主にお辞儀をした。
「早く行きなさい!」そう言って見送る明子。
泣いていたからトイレに駆け込んだと思って向かう麻結。
自分も涙で顔が崩れているのだが、駅のトイレに走り込む。
鏡に向かって睦が「お兄ちゃん!また駄目だよ!」と小さな声で言った。
その鏡の中に麻結の顔が入って来た。
「私こそ、ごめんなさい!今日お兄さんに会ったらお詫びを言います!まだ時間が有るので、近くでコーヒーでも飲みませんか?」
「いえ、このまま姫路に帰ります!」
「そんな事を言わないで、話がしたいのよ!良いでしょう?」強引に誘う麻結。
近くの喫茶店に入ると、化粧を直して来ると言ってトイレに向かう麻結。
睦は武史にlineを送った。
(お兄ちゃんの予想通りだったわ!でも髪は切らなかったよ!)
(睦!ありがとう!彼女も喜んでいるよ!また振り出しだな!)
兄の寂しそうなlineを開いた状態でぼんやりしている睦。
輝いて見える自転車の女性は駅前の街路樹の横に自転車を止めた。
そして、髪をかき上げると睦の方を見た。
「あっ、あの顔!」小さく叫んだ睦。
その時、一台のタクシーが駅前のロータリーに来たが、既に睦の目には入って居なかった。
間違い無いわ!落合さんだわ!何処へ行くのかな?目で追う睦。
自転車を置く目の前に小さな美容院が見えて、麻結は真っすぐ店の方に歩いて入った。
睦はお兄ちゃんに会う為に美容院で髪を?でも綺麗な感じだったな?不思議に思いながら美容院の方向に歩いて行った。
まさか兄と別れる為に、髪を切りに入ったとは思っても居ない睦だ。
小さな美容院の前まで来たが、いきなり入って兄とお付き合いをして頂いています!とも言えない。
偶然を装って入るのも、言い訳に困ると考えながら扉の横のガラス越しに中を見た。
小さな美容院で大きな鏡が目に飛び込む。
そこに映し出されているのは、知らない中年の叔母さんの顔だった。
出来上がりを見せているのか、鏡で後頭部を映して確認の様だ。
あの落合さんは何処だろう?見える範囲で探すが見えない。
睦は本人に会ったので、自宅に行く必要は無い様に思って美容院の前で立って、時々中の様子を見る。
しばらくして、先程の中年女性が出て来た。
ここで待って落合さんが出て来た時に挨拶をするのも変な話だ。
でも本人と出会って今更自宅を見に行くのも?どうするか?時計を見ると、10時前だ。
一時間以上時間が有るのに?美容院で不思議に思って再びガラス窓を覗く睦。
(お兄ちゃん‼魚住駅前で落合さんに会ったよ!)
(えーーいきなり会ったのか?挨拶したのか?)
(駅を降りたら、彼女が美容院に入って行ったから、まだ何も話をしてないわ)
(美容院へ?随分早いな!混んでいる店か?)
(昔からの馴染の店の様よ!客は今誰も居ないと思うわ!彼女だけかな?)
lineをしながらガラス窓を見ると、ようやく麻結の後ろ姿が目に飛び込む。
シャンプーをしていたのかな?睦の角度から時々麻結の顔が鏡に入り込む。
手振りで何かを相談している様に見えて、その手の位置が肩より上で耳の辺りに有る。
(カットに来た様だわ!それも極端に短くする様に見えるわ!)
(えーー、そんな!睦止めてくれーーー)叫ぶような武史のlineに只ならぬ事を感じた睦。
扉を開くと勢いよく中に入った。
櫛で長い髪を梳き始めた店主が「いらっしゃいませ!」と睦に向かって笑みを投げた。
「髪を切るのですか?」いきなり後ろから言ったが、麻結は自分の事では無いと思って反応が無い。
店主は「しばらくお待ち下さい!この方が終わりましたらに成ります!」
睦の方を向いて言った。
右手にハサミを持って、左手には櫛を持っていた。
「落合さん!髪を切るのは止めて下さい!」少し大きな声で叫ぶ様に言う睦。
その言葉に驚いて振り返る麻結。
「貴女どなた?私は貴女の事知らないわ!誰かと間違っていらっしゃるの?」麻結は座ったままで椅子を回転させている。
カットクロスが首に巻き付けられて、これから散髪の時だった。
「私は大森武史の妹です!兄は貴女が家族に反対されて困っているだろうと、話して居ました!今日会う時、兄を失望させて別れる予定でしょう?」麻結の心を見透かした様な言葉。
「えっ、妹さん?何故ここに?」麻結は武史の妹が目の前に突然現れて、驚きで状況が判らなかった。
「お兄ちゃんはあの身体だから、見合いをしても殆ど断られるの!最近では申し込むだけで見合い迄進まないの!今回落合さんに申し込まれて困惑していたけれど、三回も会えたと喜んでいました!でも兄は落合さんと結婚出来るとは思って居ません!家庭の事情で自分と見合いしたと思っています!兄は自分から断りませんよ!落合さんが坊主で現れてもね!でも兄は落合さんの髪がとても綺麗で素敵だと褒めて居ました!私にお前もあれ位綺麗な髪に出来ないのか?と冗談を言いました!」睦の必死の言葉に麻結は返す言葉が無かった。
「だから言ったでしょう?麻結ちゃんの髪は特別綺麗から、切らない方が良いと!恋人との思い出も一杯詰まっているでしょう?」店主は切る事に反対をしていた様だ。
「、、、、、、、」
「髪が伸びたら結婚式で日本髪を結うって、高校生の時から話して居たのよ!良かったわ!止める人がいらっしゃって、麻結ちゃんも本当は切りたくなかったのよ!そうでしょう!」明子は説得する様に言った。
「うん!」と頷いた麻結の顔は涙で濡れていた。
「今日兄に会ったら、正式に断って下さい!兄は断られても怒りません!それと失望もしません!きっと自分に与えられた試練だと思う筈です!十数年前は全く歩けずにトイレに行く事も大変だったのです!その時の苦しみに比べたら楽だと言う筈です!よろしくお願いします!」深々とお辞儀をすると睦は店を出て行く。
「ま、待ってーー」
首に巻き付けたカットクロスのまま睦を追いかける麻結。
自分の身勝手で見合いをして断る為に考えた事を恥じる。
外に出ると、睦が駅の方に走って行くのが見えた。
麻結は戻るとカットクロスを外して店主にお辞儀をした。
「早く行きなさい!」そう言って見送る明子。
泣いていたからトイレに駆け込んだと思って向かう麻結。
自分も涙で顔が崩れているのだが、駅のトイレに走り込む。
鏡に向かって睦が「お兄ちゃん!また駄目だよ!」と小さな声で言った。
その鏡の中に麻結の顔が入って来た。
「私こそ、ごめんなさい!今日お兄さんに会ったらお詫びを言います!まだ時間が有るので、近くでコーヒーでも飲みませんか?」
「いえ、このまま姫路に帰ります!」
「そんな事を言わないで、話がしたいのよ!良いでしょう?」強引に誘う麻結。
近くの喫茶店に入ると、化粧を直して来ると言ってトイレに向かう麻結。
睦は武史にlineを送った。
(お兄ちゃんの予想通りだったわ!でも髪は切らなかったよ!)
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