空蝉

杉山 実

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脅迫

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 84-051
静子が駅前で車を降りて、麻結の自転車が来るのを待って居る。
徐々に近づく自転車に横を向いて、顔を隠す様にした静子。
麻結はその横顔に何処かで見た様な気がしたが、咄嗟には思い出さない。
駐輪場に直行の麻結は自転車を止めた時に「あっ、あの人!」と口走って思い出した。
急いで駐輪場から出て周りを見渡したが、先程の静子の姿は見えない。
「静子!馬鹿ね!あの子に顔見られているのを忘れたの?」
「気が付かなかった様だけど!」
「近くで見たら思い出すわよ!電車に乗るのは間違い無いわよ!先に行きましょう!」
二人は改札を出て、麻結が上りか下りか乗る方を確かめる。
「上りだわ!ここで乗りましょう!」
隣の車両に乗る為に見られない様に隠れながら、電車を待った。
昼間の電車は空席が目立ち、隣の車両からでも麻結の姿が確認出来た。

魚住から西明石迄乗ると、新快速に乗り換える為にホームに降り立つ麻結。
長い髪が風に揺れて、時々髪を整える様に手を髪に持ってゆく仕草が、男達の視線を釘付けにしている。
やがて新快速電車が到着して乗り込む麻結。
「神戸か、三ノ宮、大阪だわ!」
「今の時間なら三ノ宮の可能性が高いわ!三島さんに変わって貰いましょう!」
「そうね!私達顔知られているから、三島さんなら大丈夫ね!」
もしも三ノ宮なら三島に尾行を託する事で決まった。

二人の予想は的中して麻結は三ノ宮で下車した。
もうしばらく尾行して、場所を確定すると三島が来る事に成っている。
既に児玉は(ボルソー)に入ってコーヒーを飲んでいた。
何度も何度も時計を見て入り口に目を移す。
今の時間客は少ないので、麻結が来て見逃す事は有り得ないと思っている。
そして、お目当ての麻結がようやく入って来た。
手を小さく上げて手招きをする児玉。
嫌そうな顔をして児玉の席にやって来た麻結。
「今日は一段とお奇麗な髪ですね!」何も変わっていないのに、自分の好きな黒髪を褒める。
店員が来たのでコーヒーを注文すると、席に座って「児玉さん!変な誤解をされて居ますよ!」麻結は早く話を終わって帰りたいので話を切り出した。
「まあ、そんなに急かさないで下さいよ!折角麻結さんとデートが出来たのに!」
「私はデートの為に来たのでは有りませんよ!」
「大森さんとお付き合いをされているのでしょう?」
「はい!大森さんでも妹さんの方ですよ!」
「大森君に妹が居るのか?」
「はい!私はその妹さんとお友達なのですよ!だからお兄さんにも会いますよ!変に誤解なさらないで下さい!」
「お母様からはその様には聞いていませんよ!」
「母と話されたのですか?」
「少しですが、困っているとおっしゃいましたよ!」
麻結は自分と武史の交際の話をこの児玉に喋って居たのか?そうすると先程の話は辻褄が合わない!早く喋り過ぎたと後悔した。
「でもお母さんは結婚をする様な付き合いでは無いとも言われました!僕も確かにその通りですね!彼は障害者で歩くのも不住で、走る事は全く出来ませんからね!と言いましたが若干の不安はお持ちの様ですよ!」
コーヒーがテーブルに運ばれて来て、麻結は手早くミルクをコーヒーに入れた。
普通はブラックで飲むのだが、今は早く飲みたい心境に成っていた。

「お母様は私に是非娘とお付き合いをして欲しいと頼まれました!」
「母がどの様な事を言ったか存じませんが、母の段取りで近日中にお見合いをする事に成っているのですよ!お相手の両親も私の両親も一緒です!」
「本格的な見合いですね!もしかして梅宮さんの仲人ですか?」
あっ、この人見合いの話も知っている。
窮地に成る麻結は、次の言葉に困ってしまった。

その時、三島が入って来て店内を目で探し始めて、直ぐに麻結を見つけて隣の席に座った。
元ボクサーの三島は席に座ると、隣の席の声を聞こうと耳を傾ける。
麻結は隣の席に座った三島に警戒心を持ったが、児玉の席からは反対に成って判らなかった。

コーヒーを一口飲むと「私にどの様にしろとおっしゃるのですか?」麻結は思い切って言った。
「僕と付き合って欲しい!正確に言えば今日が初めてのデートだろう?」
「何故?私が児玉さんと付き合わなければ成らないのですか?」
「見合いを希望したのは、君の両親だ!それに応じたのが私だ!」
「えっ、両親が貴方に私との見合いからお付き合いを頼んだの?」
「そうですよ!梅宮さんを通じてお頼みに成った!でも私は避けられている!変じゃないですか?」
「、、、、、、、、、」言葉に詰まる麻結。
あの両親なら充分考えられる。
梅宮さんに頼んで置きながら、同僚の息子薮内卓也にもデートを頼んだ。
もう少しで自分は卓也に強姦されそうに成った。
「麻結さんは今の状況がよく判ってない様ですね!梅宮さんが三人の男性を推薦してご両親に納得の上、私を含めて三人がアタックする事に成ったのですよ!」
「そんな!私は知りませんよ!」
「ですから、三人以外とはお付き合いをされては困るのですよ!」
「、、、、、、、、、、、」
「私も立場上言わなければ成らない事態に成るかも知れませんよ!」
「それって脅しですか?」
「そう思って頂いても構いませんよ!彼の立場が悪く成りますよ!」
「卑劣な方ね!他の人とお付き合いをしても、貴方は遠慮させて頂きます!」
怒った麻結は飲みかけのコーヒーを残して立ち上がった。
「まだ、話は終わって居ませんよ!」麻結の腕を掴む児玉。

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