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最終話 本心
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残業を終え。涼太が夜遅く帰宅すると、リビングの明かりがついていた。
玄関には乱雑に置かれたパンプスが転がっている。
涼太は思わず大きなため息を吐いた。
ドアを開けた瞬間、香水の香りとワインの香りがふわりと漂う。
「涼太、おかえり」
ソファに座っていた梨花がグラスを片手に微笑んだ。
赤いワインを唇に運びながら、疲れた様子もなく言葉を続けた。
「今日ね、また部下がミスしてさ。全部私がフォローしたの。ほんと最悪」
梨花は愚痴をこぼしながら、コンビニの惣菜をつまみにしていた。
涼太は無言でコートを脱ぎ、テーブルの上に散らばった惣菜の容器を片づける。
「…もう少し片付けてから飲めよ」
そう小さく呟きながら、空いた缶と容器をゴミ袋に入れた。
「そんな細かいこと気にしないの」
梨花は笑いながら、ワインをもう一口飲むと立ち上がり涼太の腰に手を回した。
「ねぇ、久しぶりに舐めてあげる」
梨花の指先が涼太の下腹部をなぞる。
しかし涼太はその手を軽く押さえ、低い声で言った。
「今日は疲れてるんだ」
涼太の一言に梨花は一瞬目を見開く。
「大丈夫よ、すぐに気持ちよくなるから」
梨花はスーツのズボンの中に手を入れようとする。
涼太はさらに強く手で拒んだ。
「やめてくれ」
その冷ややかな響きに、梨花の表情が固まる。
「…なにそれ。ひどくない?」
涼太に拒否されたのは初めてだった。
彼女の声には苛立ちと寂しさが混ざっていた。
涼太はため息をつき、少し間をおいてから静かに告げる。
「梨花、申し訳ないんだけど…今、新しいプロジェクトに関わっていて忙しいんだ。しばらく、うちには来ないでほしい」
梨花の顔が赤くなり目を見開く。
「私だって忙しいわよ!」
梨花はワインの残りを飲み干し、バッグを掴んでドアの方へ向かう。ヒールの音を鳴らしながら玄関を出て行くと、ドアが静かに閉まった。
涼太はしばらくその音を聞きながら立ち尽くしていた。
そしてソファに腰を下ろし、目を閉じる。
頭に浮かんだのは、昼間、制服姿で笑っていたミクの姿だった。
──あの笑顔が、なぜこんなにも離れないのだろう。
グラスの中で氷が鈍く音を立てた。
涼太はテーブルに片肘をつきながら、深く息を吐く。
──梨花とはもう終わりにしたかった。
最初のきっかけは、あの夜。
飲みの帰りに誘われ、流れで一夜を共にしたことだった。
それがいつの間にか「付き合っている」と呼べる形になっていた。
楽だった。
気を遣わずに済んだし、放っておいても自分の世界を持っている。
夜には積極的だったし身体も魅力的だった。
けれど、心が満たされたことなんて一度もなかった。
「クソッ……」
低く唸るように吐き出して、涼太はウイスキーを一気に喉に流し込む。
液体が喉を焼くように通り過ぎ、胸の奥に鈍い熱を残した。
グラスの底に残った氷をじっと見つめながら、
脳裏には昼間のミクの笑顔が蘇る。
あの真っ直ぐな目、少し照れたような笑い方。
今になって、あの時どうして振ってしまったのかと思う。
——もう一度、会いたい
だがその願いを口に出す勇気は、まだ涼太にはなかった。
数日後、涼太は忙しい仕事の合間にレオといつものバーにいた。
バーの薄暗い照明の下、レオはウイスキーを傾けながら涼太と乾杯をした。
「で、どうしたんだよ、涼太。最近元気なさそうじゃん」
レオはいつもの陽気な口調で尋ねる。
涼太はグラスを軽く回しながら、溜息をつく。
「……梨花と、ちょっと距離を置いてるんだ」
「おん?なんでだよ、仕事忙しいとか?」
レオは眉を上げ、じっと涼太の顔を覗き込む。
「…そうじゃない。…気持ちが整理できなくて」
涼太は言葉を濁し、視線をグラスに落とす。
「……おいおい、まさかミクか?」
レオは軽く笑いながら横目で涼太を見つめる。
涼太は一瞬顔を上げ、黙ってウィスキーを流し込んだ。
「…おいおい、涼太、まじでミクなのかよ」
レオの声は陽気だが、どこか鋭さと嫉妬が熱く燃えているのを自覚していた。
涼太がミクへ気持ちを認めてしまったら、もう二度と自分は彼女を抱けなくなる——
そんな焦りも混じっていた。
涼太はグラスを指で回しながら目を伏せる。
「……正直、わからないんだ。でも…前からミクのことばかり考えてしまう。梨花を抱いていても、どうしても彼女の顔を浮かんでしまって」
レオはそれを聞くと、思わずケラケラ笑った。
「ははっ……おまえ、完全に惚れてんじゃん!」
大きな体を揺らし、笑いながら涼太の肩を軽く叩く。
涼太は少し苦笑いを浮かべるだけで、言葉は続かない。レオの鋭い視線が、彼の心の奥を見透かすかのようだった。
「おまえもヒカルも、ミクに惚れてんだろ?」
涼太はレオを横目で見ながら、ロックのお代わりをオーダーした。
レオは呆れたように言う。
「知らねえのか?ヒカルはとっくに振られてるよ」
「そうなのか…」
涼太は手持ち無沙汰の手を思わず握りしめる。
「…ミクを振って泣かせた分際で、正直、自分がいまさら彼女に向き合っていいのか……」
涼太の言葉にレオは腕を組み、大きくため息をつく。
胸の中でモヤモヤが膨らみ、声に力を込めた。
「あいつはなあ、おまえが梨花と付き合う前からずっとおまえに惚れてたんだぞ?おまえが梨花と付き合いはじめた時、どんだけ泣いてたと思ってんだよ!」
涼太は言葉を返せず、ただレオの目を見つめる。胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚が走った。
「これ以上あいつを泣かせんな」
そう言ってレオは煙草に火をつけた。
「レオ…おまえもミクに惚れてんだろ?いいのかよ、俺がいまさら……」
涼太の言葉にレオは思わずカチンときて声を荒げた。
「いいわけねぇだろ……俺が抱いてやったって、あいつは涼太に抱かれてるつもりなんだからよ!!!」
レオは思わず口を手で塞ぎ、「しまった…」という顔をする。
涼太は固まったまま、目の前のレオを見つめる。
「おまえとミク……そういう関係なのか……」
言葉に出してしまった自分に、涼太自身も信じられない気持ちが混ざる。
ショックを胸に押し込めるように、ウイスキーを一気に流し込む。
レオはため息交じりで口を開く。
「やっとの思いでおまえに告白してフラれたり、梨花とのデートに出会したりしただろ?あれでミク、相当まいっちまって……」
レオの言葉に涼太は小さくため息を吐き、もう一度ウイスキーを口に運ぶ。胸の奥に鈍い痛みが広がる。
レオはミクを庇うように、肩をすくめて息をついた。
「……わかるだろ、涼太。俺だってミクの気持ち、全部理解してるわけじゃねぇ」
「でもよ、あいつは俺に抱かれてても涼太のことしか考えてねぇんだ」
「あいつ、俺に抱かれながら涼太の名前呼んだんだぜ?……ったくやってらんねぇぜ」
レオの言葉に涼太はグラスを握りしめ、視線を落とす。胸の奥が締め付けられるように痛む。
「俺はミクが笑ってればいいんだ。受け止められるなら受け止めてやって欲しい」
レオはそう言って涼太の肩に手を置いてバーを出た。
バーを出たレオは夜空を見上げた。
きっともうミクを抱くことはできない。
彼女は涼太の元へ行ってしまうだろう。
一瞬、涼太の背中を押してしまったことを後悔した。
でも、彼女が報われるなら———
涼太はバーを出て、夜の目黒川沿いを歩いた。
師走の夜風が冷たく思わずコートの襟元を立てた。
夜の川面は漆黒でまるで自分の心を映しているようだった。
胸の奥はどうしようもなく重く、涼太は深くため息を吐いた。
ミクが……レオに抱かれていた……
その光景が脳内に自動再生される。
陽気に笑うレオの腕の中で、頬を赤く染めるミクの姿。
思わず欄干を拳で叩いた。
「くそっ……」
冷たく硬い欄干の感触に、涼太の胸はますます締め付けられる。
梨花との関係に迷いながら、ズルズルと流されるように体を重ねてしまった日々のことが頭の中で渦巻く。
楽だった。それでミクを忘れられると思っていたのに———
もう一度、欄干を強く叩く。
夜風に混ざった自分の怒声が、静かな川沿いに響いた。
涼太は28年間生きてきて、初めて嫉妬心と後悔の渦に飲み込まれた。
レオやヒカルと向き合う事を避け、ミクを振ってしまった自分の弱さ、梨花とズルズル続けてしまった自分の情けなさ……。
結果、ミクはレオに抱かれてしまっていた。
胸が痛くて、どうにもならない。
川面に映る自分の顔は嫉妬が滲み出ていた。
涼太はそっと目を閉じ、拳を握りしめたまま立ち尽くしていた。
その数日後、涼太は梨花と会っていた。
「別れて欲しい」
涼太の言葉を聞くと、梨花の表情は一瞬だけ固まった。
冷たい光を帯びた瞳が、じっと彼を見据える。
「表参道で会ったミクさんが原因ね?」
梨花は冷ややかな視線を涼太に送る。
しばらくの沈黙の後に涼太が口を開いた。
「いや、俺は彼女を一度振っている。取り戻せるかはわからない」
梨花は無言で涼太をじっと見つめた。
「わかったわ。別れてあげる」
そう言うと、梨花はバッグを肩に掛け、すっと踵を返した。振り向きざまに最後の一言を投げる。
「でも、私を抱きたくなったらいつでも連絡してね」
言葉は軽く、だがその裏に確かな意志が滲んでいた。
梨花は扉を開け、夜の街へと歩き去る。
ヒールの音がしばらく残り、やがて途切れる。
店に残された涼太は深く息を吸って吐いた。
——もっと早く別れるべきだった…
一方、後ろ姿を消していく梨花の心は燃えていた。
負けず嫌いの彼女にとって、「振られた」という事実は屈辱でしかない。
怒りと嫉妬が混ざり合い、冷めた決意へと変わっていく。
——絶対に、ミクを傷つけてやる
その言葉は、梨花の内側で炎のように燃えた。
彼女は策を巡らすわけでもなく、ただその思いを胸に刻みつけるように歩き続けた。
クリスマスも年越しもヒカルから会いたいと言われたが、ミクはそれを断り紗弥と過ごした。
そしてレオと会うこともやめた。
身体だけの関係は解消したのだ。
複雑な想いを抱えたまま、新年を迎える。
ミクは紗弥と一緒に明治神宮で初詣に向かった。
「紗弥、あけおめ」
「ミク、あけおめ」
2人はハグした。
「ね、紗弥、写真撮ろう」
2人は頬を寄せて写真を撮り、ミクはInstagramにUPした。
"Happy new year!"
2人でお神籤を引き、お賽銭を投げ入れ、出店でイカ焼きを食べた。
「今年こそ幸せになりたいな」
ぼやくミクに紗弥は笑う。
「まず涼太を忘れないとね」
紗弥はミクの頭を撫でた。
「はーい、それが今年の課題だよ」
ミクはふざけて舌を出した。
「紗弥はいい人いないの?」
「うーん…、一応いるけど、恋人未満かな。
ちゃんとしたらミクには紹介するよ」
二人は微笑みあった。
「ミク....、紗弥.....」
背後から突然声を掛けられ、振り返るとそこには息を切らした涼太がいた。
え.....?
2人は目を丸くする。
「ミクのInstagramで、明治神宮にいるってUPされてたから」
「え.....、あ、うん。びっくりした」
ミクは思わず手で口を覆う。
息を切らした涼太はミクをじっと見つめている。
彼女もそんな涼太から目が離せなかった。
「....あ!私そろそろ実家に行かなきゃだ。ミク、涼太、またね!今年もよろしく!」
紗弥はなんとなく空気を読んでその場を足早に去った。
「え、紗弥.....っ」
ミクは戸惑うが意識は隣の涼太に向いていた。
2人は沈黙に包まれる。
「少し……歩こうか」
涼太はミクの方を見て優しく微笑んだ。
「あ、うん……」
涼太の表情ひとつで相変わらずときめいてしまう。
ミクは涼太の半歩後ろを歩く。
人混みから外れたベンチに腰掛けると、涼太はホットコーヒーをミクに渡した。
「ありがとう....」
ミクの言葉に涼太は優しく微笑んだ。
「Instagram見てわざわざ会いに来てくれたの?」
ミクは恐る恐る聞く。
涼太は無言でコーヒーを飲んでいたが、そっとミクを見つめた。
「ああ、ミクに用事があってな」
ミクは不思議そうな顔をして固まる。
——私に用事…?
「……元気だったか?」
涼太の声は落ち着いていたが、どこか柔らかさもあった。
「……うん、まあ。涼太は?」
「俺も……普通だ」
ミクは小さく息を吸い、声を震わせながらも質問を続けた。
「私に用事って……どういう意味……?」
元旦の夕暮れの柔らかい光が、公園のベンチに座る二人を包む。
ミクの手は膝の上で軽く握られており、緊張感が張りつめていた。涼太は目を逸らさず、彼女を見つめていたが、答えをはぐらかすように軽く肩をすくめた。
「……ミクはさ、今、好きな人…いるの?」
ミクは一瞬、胸の奥がきゅっと締めつけられるのを感じた。
涼太の問いに、ミクの心は思わず叫ぶ。
——涼太しかいない——
でも、もう言えなかった…。
小さな沈黙が二人の間に落ちる。
ホットコーヒーのカップを手に持つミクの指先が少し震え、心の奥の想いを押し殺すかのようだった。
ミクはとっさに目を伏せ、声を少し震わせながら答えた。
「うん……いいな、と思う人はいるよ」
涼太の目元が、ほんのわずかに揺れた。
彼は小さくため息をつき、静かに「そうか」とだけ言った。
二人の間に沈黙が落ちる。夕暮れの風がベンチの上をそっと通り抜け、彼女の髪をかすかに揺らす。
しばらくして、涼太が低く問いかける。
「その人と、上手くいってるのか?」
ミクの心臓が跳ねる。
胸の奥で、もう言えない叫びがこだまする。
——涼太しかいないのに——
でも言葉にはできない。
唇をかみしめ、彼女は小さく俯いたまま答えを探していた。
そしてゆっくりと首を横に振った。
「……可能性は、ないかな」
その言葉を待っていたかのように、涼太が静かに問いかける。
「それなら俺にも、まだチャンスはあるか?」
ミクは驚き、思わず顔を上げる。
夕暮れの光が二人の間に柔らかく落ち、視線が交差する。
しかし、言葉はすぐには出てこなかった。長い沈黙が、まるで時間を止めたかのように二人を包む。
ミクは言葉を失い、胸が張り裂けそうになるのを感じながら、ただ涼太の瞳を見つめるしかなかった。
「涼太……それって……」
声が震える。
「おまえが、好きだ」
涼太の声は低く、しかし迷いのない真っ直ぐな言葉を彼女に届けた。
ミクは思わず息をのむ。信じられなくて、口を開くも言葉が出ない。
心の奥底でずっと待っていた想いが、一気に現実として突きつけられ、胸が熱く高鳴った。
涼太は少し間を置いてから、さらに一歩近づき、低く落ち着いた声で言った。
「俺と、付き合って欲しい」
涼太らしい、あまりにも真っ直ぐでストレートな告白だった。
ミクは喜びよりも驚きで言葉が出ない。
代わりに涙が頬を伝い、赤く染まった顔を両手で覆った。心臓が激しく鼓動する。
長い沈黙のあと、涼太は苦笑する。
「その反応は……OKってことでいいか?」
照れくさそうに、しかし真剣な眼差しでミクを見つめる。
ミクは言葉を発する代わりに、無言で何度も小さくうなずいた。
「おまえ、気になる人いるって…」
涼太の言葉が途切れると同時に、ミクは必死に首を振りながら答えた。
「そんなの……ずっと、涼太だけだよ……」
彼女の震える声が響く。
涼太はその様子を見て、肩の力が抜ける。
「……ホッとした」
そう小さく呟くと、涼太はミクを自分の胸に引き寄せ、優しく腕で包み込んだ。
彼女の体温、髪の香り、震える声、すべてが涼太の心を揺さぶる。
「俺以外を好きだなんて……言うな」
低く、けれども真剣な声で言う涼太に、ミクは小さく頷き、まだ涙で濡れた頬を胸に押し当てる。
「うん…うん…」
その瞬間、ミクは初めて、涼太の腕の中で守られる安心感と甘さを感じた。
緊張と戸惑いの入り混じった心が、ゆっくりとほどけていく。
ミクと涼太は手を繋ぎながら、駅までの道を歩いた。
「涼太……梨花さんとは、別れたの……?」
声は震えていて、不安が混じる。
涼太は少しだけ視線を落とし、落ち着いた声で答えた。
「ああ、しばらく距離を置いてて、先月の中旬に別れたよ」
ミクは小さく息をつき、少し安心したように肩の力を抜く。でも、その目はまだ不安げに涼太を見つめていた。
「……そうなんだ……」
ミクの声はかすかに震えている。
涼太は立ち止まり、彼女の手をさらに優しく握った。
「もう、心配するなよ。これからはおまえだけだ」
その言葉に、ミクの頬が少し赤く染まる。
駅に着く——
「明日、買い物に付き合って欲しい。また連絡する」
涼太はそう言って手を上げて去って行った。
ミクは涼太の背中を見送ったあとに、顔を覆いしゃがみ込んだ。
信じられなかった……。
この思いが成就するなんて……。
震える手で紗弥に電話をかける。
「紗弥っ……」
スマホ越しに紗弥も喜んで一緒に泣いてくれた。
一月一日にミクと涼太はようやく両想いになれたのだった。
※「本能と本心」はこれで完結です。
ミクと涼太の物語は既に執筆中で、まとめ次第UPします。
玄関には乱雑に置かれたパンプスが転がっている。
涼太は思わず大きなため息を吐いた。
ドアを開けた瞬間、香水の香りとワインの香りがふわりと漂う。
「涼太、おかえり」
ソファに座っていた梨花がグラスを片手に微笑んだ。
赤いワインを唇に運びながら、疲れた様子もなく言葉を続けた。
「今日ね、また部下がミスしてさ。全部私がフォローしたの。ほんと最悪」
梨花は愚痴をこぼしながら、コンビニの惣菜をつまみにしていた。
涼太は無言でコートを脱ぎ、テーブルの上に散らばった惣菜の容器を片づける。
「…もう少し片付けてから飲めよ」
そう小さく呟きながら、空いた缶と容器をゴミ袋に入れた。
「そんな細かいこと気にしないの」
梨花は笑いながら、ワインをもう一口飲むと立ち上がり涼太の腰に手を回した。
「ねぇ、久しぶりに舐めてあげる」
梨花の指先が涼太の下腹部をなぞる。
しかし涼太はその手を軽く押さえ、低い声で言った。
「今日は疲れてるんだ」
涼太の一言に梨花は一瞬目を見開く。
「大丈夫よ、すぐに気持ちよくなるから」
梨花はスーツのズボンの中に手を入れようとする。
涼太はさらに強く手で拒んだ。
「やめてくれ」
その冷ややかな響きに、梨花の表情が固まる。
「…なにそれ。ひどくない?」
涼太に拒否されたのは初めてだった。
彼女の声には苛立ちと寂しさが混ざっていた。
涼太はため息をつき、少し間をおいてから静かに告げる。
「梨花、申し訳ないんだけど…今、新しいプロジェクトに関わっていて忙しいんだ。しばらく、うちには来ないでほしい」
梨花の顔が赤くなり目を見開く。
「私だって忙しいわよ!」
梨花はワインの残りを飲み干し、バッグを掴んでドアの方へ向かう。ヒールの音を鳴らしながら玄関を出て行くと、ドアが静かに閉まった。
涼太はしばらくその音を聞きながら立ち尽くしていた。
そしてソファに腰を下ろし、目を閉じる。
頭に浮かんだのは、昼間、制服姿で笑っていたミクの姿だった。
──あの笑顔が、なぜこんなにも離れないのだろう。
グラスの中で氷が鈍く音を立てた。
涼太はテーブルに片肘をつきながら、深く息を吐く。
──梨花とはもう終わりにしたかった。
最初のきっかけは、あの夜。
飲みの帰りに誘われ、流れで一夜を共にしたことだった。
それがいつの間にか「付き合っている」と呼べる形になっていた。
楽だった。
気を遣わずに済んだし、放っておいても自分の世界を持っている。
夜には積極的だったし身体も魅力的だった。
けれど、心が満たされたことなんて一度もなかった。
「クソッ……」
低く唸るように吐き出して、涼太はウイスキーを一気に喉に流し込む。
液体が喉を焼くように通り過ぎ、胸の奥に鈍い熱を残した。
グラスの底に残った氷をじっと見つめながら、
脳裏には昼間のミクの笑顔が蘇る。
あの真っ直ぐな目、少し照れたような笑い方。
今になって、あの時どうして振ってしまったのかと思う。
——もう一度、会いたい
だがその願いを口に出す勇気は、まだ涼太にはなかった。
数日後、涼太は忙しい仕事の合間にレオといつものバーにいた。
バーの薄暗い照明の下、レオはウイスキーを傾けながら涼太と乾杯をした。
「で、どうしたんだよ、涼太。最近元気なさそうじゃん」
レオはいつもの陽気な口調で尋ねる。
涼太はグラスを軽く回しながら、溜息をつく。
「……梨花と、ちょっと距離を置いてるんだ」
「おん?なんでだよ、仕事忙しいとか?」
レオは眉を上げ、じっと涼太の顔を覗き込む。
「…そうじゃない。…気持ちが整理できなくて」
涼太は言葉を濁し、視線をグラスに落とす。
「……おいおい、まさかミクか?」
レオは軽く笑いながら横目で涼太を見つめる。
涼太は一瞬顔を上げ、黙ってウィスキーを流し込んだ。
「…おいおい、涼太、まじでミクなのかよ」
レオの声は陽気だが、どこか鋭さと嫉妬が熱く燃えているのを自覚していた。
涼太がミクへ気持ちを認めてしまったら、もう二度と自分は彼女を抱けなくなる——
そんな焦りも混じっていた。
涼太はグラスを指で回しながら目を伏せる。
「……正直、わからないんだ。でも…前からミクのことばかり考えてしまう。梨花を抱いていても、どうしても彼女の顔を浮かんでしまって」
レオはそれを聞くと、思わずケラケラ笑った。
「ははっ……おまえ、完全に惚れてんじゃん!」
大きな体を揺らし、笑いながら涼太の肩を軽く叩く。
涼太は少し苦笑いを浮かべるだけで、言葉は続かない。レオの鋭い視線が、彼の心の奥を見透かすかのようだった。
「おまえもヒカルも、ミクに惚れてんだろ?」
涼太はレオを横目で見ながら、ロックのお代わりをオーダーした。
レオは呆れたように言う。
「知らねえのか?ヒカルはとっくに振られてるよ」
「そうなのか…」
涼太は手持ち無沙汰の手を思わず握りしめる。
「…ミクを振って泣かせた分際で、正直、自分がいまさら彼女に向き合っていいのか……」
涼太の言葉にレオは腕を組み、大きくため息をつく。
胸の中でモヤモヤが膨らみ、声に力を込めた。
「あいつはなあ、おまえが梨花と付き合う前からずっとおまえに惚れてたんだぞ?おまえが梨花と付き合いはじめた時、どんだけ泣いてたと思ってんだよ!」
涼太は言葉を返せず、ただレオの目を見つめる。胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚が走った。
「これ以上あいつを泣かせんな」
そう言ってレオは煙草に火をつけた。
「レオ…おまえもミクに惚れてんだろ?いいのかよ、俺がいまさら……」
涼太の言葉にレオは思わずカチンときて声を荒げた。
「いいわけねぇだろ……俺が抱いてやったって、あいつは涼太に抱かれてるつもりなんだからよ!!!」
レオは思わず口を手で塞ぎ、「しまった…」という顔をする。
涼太は固まったまま、目の前のレオを見つめる。
「おまえとミク……そういう関係なのか……」
言葉に出してしまった自分に、涼太自身も信じられない気持ちが混ざる。
ショックを胸に押し込めるように、ウイスキーを一気に流し込む。
レオはため息交じりで口を開く。
「やっとの思いでおまえに告白してフラれたり、梨花とのデートに出会したりしただろ?あれでミク、相当まいっちまって……」
レオの言葉に涼太は小さくため息を吐き、もう一度ウイスキーを口に運ぶ。胸の奥に鈍い痛みが広がる。
レオはミクを庇うように、肩をすくめて息をついた。
「……わかるだろ、涼太。俺だってミクの気持ち、全部理解してるわけじゃねぇ」
「でもよ、あいつは俺に抱かれてても涼太のことしか考えてねぇんだ」
「あいつ、俺に抱かれながら涼太の名前呼んだんだぜ?……ったくやってらんねぇぜ」
レオの言葉に涼太はグラスを握りしめ、視線を落とす。胸の奥が締め付けられるように痛む。
「俺はミクが笑ってればいいんだ。受け止められるなら受け止めてやって欲しい」
レオはそう言って涼太の肩に手を置いてバーを出た。
バーを出たレオは夜空を見上げた。
きっともうミクを抱くことはできない。
彼女は涼太の元へ行ってしまうだろう。
一瞬、涼太の背中を押してしまったことを後悔した。
でも、彼女が報われるなら———
涼太はバーを出て、夜の目黒川沿いを歩いた。
師走の夜風が冷たく思わずコートの襟元を立てた。
夜の川面は漆黒でまるで自分の心を映しているようだった。
胸の奥はどうしようもなく重く、涼太は深くため息を吐いた。
ミクが……レオに抱かれていた……
その光景が脳内に自動再生される。
陽気に笑うレオの腕の中で、頬を赤く染めるミクの姿。
思わず欄干を拳で叩いた。
「くそっ……」
冷たく硬い欄干の感触に、涼太の胸はますます締め付けられる。
梨花との関係に迷いながら、ズルズルと流されるように体を重ねてしまった日々のことが頭の中で渦巻く。
楽だった。それでミクを忘れられると思っていたのに———
もう一度、欄干を強く叩く。
夜風に混ざった自分の怒声が、静かな川沿いに響いた。
涼太は28年間生きてきて、初めて嫉妬心と後悔の渦に飲み込まれた。
レオやヒカルと向き合う事を避け、ミクを振ってしまった自分の弱さ、梨花とズルズル続けてしまった自分の情けなさ……。
結果、ミクはレオに抱かれてしまっていた。
胸が痛くて、どうにもならない。
川面に映る自分の顔は嫉妬が滲み出ていた。
涼太はそっと目を閉じ、拳を握りしめたまま立ち尽くしていた。
その数日後、涼太は梨花と会っていた。
「別れて欲しい」
涼太の言葉を聞くと、梨花の表情は一瞬だけ固まった。
冷たい光を帯びた瞳が、じっと彼を見据える。
「表参道で会ったミクさんが原因ね?」
梨花は冷ややかな視線を涼太に送る。
しばらくの沈黙の後に涼太が口を開いた。
「いや、俺は彼女を一度振っている。取り戻せるかはわからない」
梨花は無言で涼太をじっと見つめた。
「わかったわ。別れてあげる」
そう言うと、梨花はバッグを肩に掛け、すっと踵を返した。振り向きざまに最後の一言を投げる。
「でも、私を抱きたくなったらいつでも連絡してね」
言葉は軽く、だがその裏に確かな意志が滲んでいた。
梨花は扉を開け、夜の街へと歩き去る。
ヒールの音がしばらく残り、やがて途切れる。
店に残された涼太は深く息を吸って吐いた。
——もっと早く別れるべきだった…
一方、後ろ姿を消していく梨花の心は燃えていた。
負けず嫌いの彼女にとって、「振られた」という事実は屈辱でしかない。
怒りと嫉妬が混ざり合い、冷めた決意へと変わっていく。
——絶対に、ミクを傷つけてやる
その言葉は、梨花の内側で炎のように燃えた。
彼女は策を巡らすわけでもなく、ただその思いを胸に刻みつけるように歩き続けた。
クリスマスも年越しもヒカルから会いたいと言われたが、ミクはそれを断り紗弥と過ごした。
そしてレオと会うこともやめた。
身体だけの関係は解消したのだ。
複雑な想いを抱えたまま、新年を迎える。
ミクは紗弥と一緒に明治神宮で初詣に向かった。
「紗弥、あけおめ」
「ミク、あけおめ」
2人はハグした。
「ね、紗弥、写真撮ろう」
2人は頬を寄せて写真を撮り、ミクはInstagramにUPした。
"Happy new year!"
2人でお神籤を引き、お賽銭を投げ入れ、出店でイカ焼きを食べた。
「今年こそ幸せになりたいな」
ぼやくミクに紗弥は笑う。
「まず涼太を忘れないとね」
紗弥はミクの頭を撫でた。
「はーい、それが今年の課題だよ」
ミクはふざけて舌を出した。
「紗弥はいい人いないの?」
「うーん…、一応いるけど、恋人未満かな。
ちゃんとしたらミクには紹介するよ」
二人は微笑みあった。
「ミク....、紗弥.....」
背後から突然声を掛けられ、振り返るとそこには息を切らした涼太がいた。
え.....?
2人は目を丸くする。
「ミクのInstagramで、明治神宮にいるってUPされてたから」
「え.....、あ、うん。びっくりした」
ミクは思わず手で口を覆う。
息を切らした涼太はミクをじっと見つめている。
彼女もそんな涼太から目が離せなかった。
「....あ!私そろそろ実家に行かなきゃだ。ミク、涼太、またね!今年もよろしく!」
紗弥はなんとなく空気を読んでその場を足早に去った。
「え、紗弥.....っ」
ミクは戸惑うが意識は隣の涼太に向いていた。
2人は沈黙に包まれる。
「少し……歩こうか」
涼太はミクの方を見て優しく微笑んだ。
「あ、うん……」
涼太の表情ひとつで相変わらずときめいてしまう。
ミクは涼太の半歩後ろを歩く。
人混みから外れたベンチに腰掛けると、涼太はホットコーヒーをミクに渡した。
「ありがとう....」
ミクの言葉に涼太は優しく微笑んだ。
「Instagram見てわざわざ会いに来てくれたの?」
ミクは恐る恐る聞く。
涼太は無言でコーヒーを飲んでいたが、そっとミクを見つめた。
「ああ、ミクに用事があってな」
ミクは不思議そうな顔をして固まる。
——私に用事…?
「……元気だったか?」
涼太の声は落ち着いていたが、どこか柔らかさもあった。
「……うん、まあ。涼太は?」
「俺も……普通だ」
ミクは小さく息を吸い、声を震わせながらも質問を続けた。
「私に用事って……どういう意味……?」
元旦の夕暮れの柔らかい光が、公園のベンチに座る二人を包む。
ミクの手は膝の上で軽く握られており、緊張感が張りつめていた。涼太は目を逸らさず、彼女を見つめていたが、答えをはぐらかすように軽く肩をすくめた。
「……ミクはさ、今、好きな人…いるの?」
ミクは一瞬、胸の奥がきゅっと締めつけられるのを感じた。
涼太の問いに、ミクの心は思わず叫ぶ。
——涼太しかいない——
でも、もう言えなかった…。
小さな沈黙が二人の間に落ちる。
ホットコーヒーのカップを手に持つミクの指先が少し震え、心の奥の想いを押し殺すかのようだった。
ミクはとっさに目を伏せ、声を少し震わせながら答えた。
「うん……いいな、と思う人はいるよ」
涼太の目元が、ほんのわずかに揺れた。
彼は小さくため息をつき、静かに「そうか」とだけ言った。
二人の間に沈黙が落ちる。夕暮れの風がベンチの上をそっと通り抜け、彼女の髪をかすかに揺らす。
しばらくして、涼太が低く問いかける。
「その人と、上手くいってるのか?」
ミクの心臓が跳ねる。
胸の奥で、もう言えない叫びがこだまする。
——涼太しかいないのに——
でも言葉にはできない。
唇をかみしめ、彼女は小さく俯いたまま答えを探していた。
そしてゆっくりと首を横に振った。
「……可能性は、ないかな」
その言葉を待っていたかのように、涼太が静かに問いかける。
「それなら俺にも、まだチャンスはあるか?」
ミクは驚き、思わず顔を上げる。
夕暮れの光が二人の間に柔らかく落ち、視線が交差する。
しかし、言葉はすぐには出てこなかった。長い沈黙が、まるで時間を止めたかのように二人を包む。
ミクは言葉を失い、胸が張り裂けそうになるのを感じながら、ただ涼太の瞳を見つめるしかなかった。
「涼太……それって……」
声が震える。
「おまえが、好きだ」
涼太の声は低く、しかし迷いのない真っ直ぐな言葉を彼女に届けた。
ミクは思わず息をのむ。信じられなくて、口を開くも言葉が出ない。
心の奥底でずっと待っていた想いが、一気に現実として突きつけられ、胸が熱く高鳴った。
涼太は少し間を置いてから、さらに一歩近づき、低く落ち着いた声で言った。
「俺と、付き合って欲しい」
涼太らしい、あまりにも真っ直ぐでストレートな告白だった。
ミクは喜びよりも驚きで言葉が出ない。
代わりに涙が頬を伝い、赤く染まった顔を両手で覆った。心臓が激しく鼓動する。
長い沈黙のあと、涼太は苦笑する。
「その反応は……OKってことでいいか?」
照れくさそうに、しかし真剣な眼差しでミクを見つめる。
ミクは言葉を発する代わりに、無言で何度も小さくうなずいた。
「おまえ、気になる人いるって…」
涼太の言葉が途切れると同時に、ミクは必死に首を振りながら答えた。
「そんなの……ずっと、涼太だけだよ……」
彼女の震える声が響く。
涼太はその様子を見て、肩の力が抜ける。
「……ホッとした」
そう小さく呟くと、涼太はミクを自分の胸に引き寄せ、優しく腕で包み込んだ。
彼女の体温、髪の香り、震える声、すべてが涼太の心を揺さぶる。
「俺以外を好きだなんて……言うな」
低く、けれども真剣な声で言う涼太に、ミクは小さく頷き、まだ涙で濡れた頬を胸に押し当てる。
「うん…うん…」
その瞬間、ミクは初めて、涼太の腕の中で守られる安心感と甘さを感じた。
緊張と戸惑いの入り混じった心が、ゆっくりとほどけていく。
ミクと涼太は手を繋ぎながら、駅までの道を歩いた。
「涼太……梨花さんとは、別れたの……?」
声は震えていて、不安が混じる。
涼太は少しだけ視線を落とし、落ち着いた声で答えた。
「ああ、しばらく距離を置いてて、先月の中旬に別れたよ」
ミクは小さく息をつき、少し安心したように肩の力を抜く。でも、その目はまだ不安げに涼太を見つめていた。
「……そうなんだ……」
ミクの声はかすかに震えている。
涼太は立ち止まり、彼女の手をさらに優しく握った。
「もう、心配するなよ。これからはおまえだけだ」
その言葉に、ミクの頬が少し赤く染まる。
駅に着く——
「明日、買い物に付き合って欲しい。また連絡する」
涼太はそう言って手を上げて去って行った。
ミクは涼太の背中を見送ったあとに、顔を覆いしゃがみ込んだ。
信じられなかった……。
この思いが成就するなんて……。
震える手で紗弥に電話をかける。
「紗弥っ……」
スマホ越しに紗弥も喜んで一緒に泣いてくれた。
一月一日にミクと涼太はようやく両想いになれたのだった。
※「本能と本心」はこれで完結です。
ミクと涼太の物語は既に執筆中で、まとめ次第UPします。
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