魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南

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起きたら超絶イケメンの顔が目の前にありビビる。そういえば一緒に寝たんだったなぁ。

「おはようティナ」
「お、おはよう」

朝から甘い笑みは心臓に悪い。そそくさと起きて着替えようとするが世話をされた。5歳児では自分で髪を結ぶのも出来ずに梳かすだけだったが、ハーフアップにして毛先を魔法でくるくると巻いてくれる。付けられたリボンは黒色で白銀色の髪によく映えた。

シルの準備も終わり食堂へ行く。ハルトさんの他に3人の知らない人がいた。

「おはよう、ティナちゃん」
「おはようございます」

猫耳猫尾の露出の激しいお姉さんが立ち上がり近付いてくる。しっぽがゆらゆらと揺れていて目がいってしまう。

「可愛い! ティナちゃん、私はSランク斥候職のミーアよ。索敵の他に短剣と投擲が得意なの。よろしくね」

他2人も立ち上がった。

「俺はSSランク盾職のジョンだ。よろしくな」

短髪のガチムチイケメンが白い歯を見せて手を差し出してきた。その手はシルによって叩き落とされている。

「俺はSS職の弓術士ユーグ。アイテムボックスのスキル持ちで、遠距離の物理攻撃は任せてくれ」

ユーグさんは緑色の髪に黄緑色の瞳したイケメンさん。

「僕も改めて自己紹介するね。SSSランク治癒魔術師のハルト、これからよろしくね」

金髪碧眼の王子様風イケメンさんがハルトさん。

皆顔面偏差値が高い。その中でもシルは群を抜いてる。

「Eランク魔術師のティナです。支援魔法も治癒魔法も出来ます。よろしくお願いします」

下ろしてもらえなかったため抱っこされまま挨拶した。

「マスター含めた5人でティナちゃんをサポートしていくね」
「はい。よろしくお願いします」

朝食は神通販で購入した。シルの分はもちろん他の4人の分も出す。お金を払うと言われたが、これからお世話になるのだから断った。食べ終わった後、拠点を出てギルドに向かう。皆はそれぞれ武器を装着している。シルも背に剣2本を交差させて背負っていた。

「ティナちゃん杖は?」

ハルトさんに突っ込まれ眉を下げる。

「……重くて持てないのです」
「小さいのもあるよ?」
「小さいのは私の魔力に杖が耐えきれなくて壊れてしまうのです」
「それで魔力行使はキツくない?」
「杖を持ってしたことがないので違いが分かりません」

杖は使用魔力量を減らしたり威力を高めることが出来る。私は魔力無限だし、過剰攻撃にならないように威力を抑えてる。杖を持つ意味もないのだ。まぁ持っていた方が魔術師って感じがするから将来は形だけになると思うけど装備したい。

「ティナは無くても大丈夫だ」
「あー……、確かにそうだね」

シルに言われてハルトさんも察した。

ギルドで依頼を受注して西の森の近くに移動した。今回も討伐依頼はフォレストウルフだった。

ミーアさんだけ森の中に入っていて、他のメンバーでハイヒール草、ハイマナ草を集める。

暫くすると魔法探知が引っかかり立ち上がる。ミーアさんがスキップしながら戻ってきた。その後ろにはフォレストウルフが10体いる。

「ティナちゃん、お待たせ~」

倒していいってことなのかな?

「【氷】」

「おおー。1発で10体倒すとはなかなかだな」

ユーグさんに褒められた。

「ジョンの出番なかったわね」

ジョンさんを見ると盾を持っている。私が倒すまで抑えようとしてくれてたのか。

「採取しながら探知も出来てるし完璧だね」

ハルトさんにも褒められる。皆に褒められ照れてしまう。

解体しようとしたがシルに止められナイフを渡された。

「ティナが魔法で解体が出来るのは聞いてるが、正規のやり方も覚えていても損にはならない」
「まずは首を切り落としてね」

つまり解体しろと? 魚さえ捌けない私に?

涙目でシルを見上げるがスルーされ魔物を顎で指される。

女性には甘いクランじゃないの? 5歳児のか弱い女の子に解体させるなんてスパルタだよ!

誰も何も言ってくれないので諦めてフォレストウルフの死体の側に行きしゃがむ。

怖いから首の位置だけ確認して目を瞑る。そして両手でナイフを持ち頭上に振り上げて下ろした。

ーースポンッ。

変な音がしたなと目を開けると手にはナイフがなかった。

どこへ? 消えたと思ってると目の前にナイフが差し出される。見上げるとジョンさんがナイフを持っていた。

「ナイフどうしたのですか?」
「どうしたじゃねえ! 飛んできたんだよ! 俺の方に! まさかティナちゃんから攻撃を受けるとは思わなかったから気を抜いてたぞ!」

手を見ると震えていた。そのせいで力が入らなくて飛んでしまったのだろう。攻撃するつもりなんて全くない。

「ジョンさん、ごめんなさい」
「危ないから振りかぶるなよ?」

ナイフを受け取り再度フォレストウルフの死体と相対する。振りかぶれないなら力が足りないな。

「【バフ】」

自身にバフを掛けた。これで大丈夫なはず。

「解体するために支援魔法を掛けるなんて初めて見たわ」

ミーアさんが何か言ってるが気にしない。要は解体が出来ればいいのだから。

フォレストウルフにナイフあてるが、うんともすんともいわない。ピクリともしないため振り返って皆を見上げて助けを求める。

「刺さらないか?」
「うん。シル、無理」

腕がプルプルしてきた。諦めて刃をフォレストウルフから放す。ナイフをあててたところを見てみたが少しも傷になってない。

「ティナ、ウィンドカッターで首を落としてみろ」
「【風】」

10体のフォレストウルフの首を落とした。やっぱり魔法の方がスムーズにいく。

「あら?」

ミーアさんが切り口を覗いて首を傾げた。

「血まで固まってるわ」
「本当だね。これでは切れないよ」

ハルトさんがフォレストウルフの死体を叩いて硬さを確かめてる。

「どうするんだ? これでは持っていってもギルドも困るぞ?」
「……ティナ、いつも通りにしてみて?」

ユーグさんに言われ、シルは悩んだ末出した結果は解体魔法だった。

「【解体】」

魔石、肉、毛皮、爪に分類される。

「どうなってるの? 頭などの不必要部分はどこに行ったの?」
「凍ってたのもなくなってる」
「まるでダンジョンのドロップじゃないか」
「ダンジョンのドロップは2つまでしか出ないからその上位になるね」

ミーアさん、ユーグさん、ジョンさん、ハルトさんが素材を手に取り見回りしてる。私も原理は分からないため口を挟まなかった。

「ミーア、もう1度頼む」
「そうね。これでは解体のお勉強にならないものね」

ミーアさんが再び森の中に消えていく。私は素材を無限収納にしまった。

「ティナ、次は氷魔法以外で頼む。ウィンドカッターで首を切り落とすのもダメだからな」
「……うん」

手作業の解体は逃げられないと。気の重いまま採取してるとミーアさんが戻ってきた。フォレストウルフ10体集めるの早いなぁ。

「【雷】」
「雷魔法でも1発なんだな。俺の出番ないぞ」

ジョンさんは今回も盾職の役割をしようとしてくれたみたいだ。

再びナイフを渡されフォレストウルフの死体の前にしゃがむ。1/3まではナイフが進んだが、そこで止まってしまった。一旦、抜こうとしたがナイフが肉に嵌ってしまっていて手がすっぽ抜ける。

切実に腕力が欲しい。バフを掛けたままだからステータスは上がってるはずなのに……。

抜くことは諦めて全体重を掛けて……、というよりナイフの柄に乗りかかりながら少しずつ切っていく。

「はぁはぁ」

漸く切り落とした頃には肩で息をしていた。血塗れになったのでクリーンを掛ける。かなり時間は掛かったし切り口はぐちゃぐちゃだけど仕方ない。残り9体のフォレストウルフは他の人たちが首を切り落としてくれた。皆、1撃で切り落としてる。次は血抜きだ。自身とフォレストウルフを魔法で浮かせて木の枝のところに行く。縄で結ぼうとしたが小さな手では無理で捕縛魔法を使って固定した。

「まぁ課題はあるが、合格だ」

頑張ったもん。不合格って言われてたら泣いてたよ。

「血抜きが終わるまでティナは休憩だ」

シルに後ろから抱っこされた状態で座る。他の人たちは採取し始めた。

「私も採取しないと」

この依頼は私のだから他の人にやらせて自分が休憩するのは許せない。

「ティナは休もうな? 怖いのによく頑張ったな」

シルに頭を撫でられた。

「そうよ! ティナちゃん今は休んでて! まだ解体は終わってないんだから体力回復させてね」

ミーアさんの言葉に青ざめた。そうだ、まだ終わってない。寧ろ首を切り落としただけで、これからが本番だ。

血抜きが終わり魔法でフォレストウルフを下ろす。

「私が見本をみせるわね」

ミーアさんはスルスルと皮を剥いでいった。あまりの手際の良さに理解しきれない。

とりあえずやってみるかな。

片手では上手くナイフを持てなくて両手で進めていくがやりずらい。終わってみれば素材は売り物に出来ないくらいに傷だらけになっていた。それでも何とか1体、解体することが出来た。

残りは皆がやってくれた。私1人だと明日の朝になっちゃうからね。

不要な部分は土魔法で穴を掘って埋めた。

お昼はおにぎりと唐揚げにした。唐揚げに皆は夢中になり何度も神通販で購入する。食べ終わったら全員で採取を再開した。

太陽が西に傾いて来たので帰ることにする。浮いたまま戻ろうとするがシルに抱っこされる。

「シル?」

魔力探知を展開してるとはいえ街に戻るまで何があるか分からない。目で咎めてみるがシルは甘い笑みを浮かべたままだ。

「俺が我慢できない。ティナ不足で死んじゃう」
「そんなんで死なないから!」
「まぁまぁティナちゃん。ここはマスターのためだと思って」

ハルトさんまで何を言ってるの? 周りを見ると皆が暖かい目で見てた。気恥ずかしくなりシルの胸に顔を埋める。

冒険者ギルドに戻ってきて依頼受付カウンターに並ぶ。

「フォレストウルフ20体で2ポイント40ギル、ハイヒール草50束で5ポイント75ギル、ハイマナ草40束で4ポイント80ギルとなります。残り787ポイント、護衛依頼4件でDランクになります」

やっぱり1人でやるより全然いいね。次に素材買取カウンターに並んだ。

「おや? 1体酷いなぁ。嬢ちゃんにしては珍しい。失敗したのか?」

そこは突っ込まないで鑑定して下さい。

「フォレストウルフ20体の毛皮91ギル、肉が91ギル、爪が51ギル、魔石が51ギルだ。1体だけ酷かったから最低価格だぞ」

1体酷いのは知ってるから。そこは流してくれていいから。納得してるからね!

カードにお金入れてもらいギルドを後にする。

拠点に戻ってきて夕食にする。今日は頑張ったし好きなパスタにしよう。皆の分も出して食べる。初めてのものだからかシルの介助もなく途中までは自力で食べれた。どう食べるのかは分かってからは、あーん攻撃になった。今度、あーんが出来ないラーメンにしようかしら?流石にラーメンであーんはないと思う。

パスタはカルボナーラでミーアさんには大好評だった。男性陣は物足りないのか肉も食べてる。

デザートはティラミスでミーアさんは甘い物が好きなのか感激してた。男性陣はお酒を飲み始めてる。シルは飲まないのか食べ終わったら私を抱っこしたまま席を立ち部屋に戻る。

「シルはお酒飲まないの?」
「状態異常無効のせいで酔わないからな」

お酒も状態異常になるんだ。酔えないのは可哀想だな。お酒の良さが分からないってことだもん。

今日もまたお風呂を一緒に入り甲斐甲斐しく世話をされた。

ベッドに行きステータスを確認する。

【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】342
【体力】352
【魔力】∞
【物理攻撃】68
【物理防御】68
【魔法攻撃】34,200,000
【魔法防御】34,200,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv4、鑑定Lv4、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100


ステータス確認が終わるとシルに抱き込まれる。

「ティナ、俺にも魔力流して」

シルに魔力流されうっとりしてると要求された。

「いいけど、これ何か意味あるの?」
「ん。愛情表現」

ボッと顔が熱くなる。それって好きって言ってることだよね。うわー、恥ずかしい。それでもシルに魔力を流すと満足そうにしてた。



今日もまた薬草集めのため西の森の近くに来た。今日はガルクさんや他のAランクメンバーもいる。総勢20人くらいでやってるためサクサクと薬草が集まった。

お昼になり皆にお礼の気持ちも込めてご飯をご馳走する。

「嬢ちゃん、唐揚げが食べたい! 昨日、ジョンさんに聞いてさ羨ましくて今日着いてきたんだ」

ガルクさんが食い気味に言い寄ってきた。なるほど下心があったのね。手伝ってもらえるのは有難いから出すよ。シルたちは昨日も食べたし飽きないように色んな味の唐揚げを提供した。

「ねぇ、シルって竜体にもなれるんだよね」
「見たいのか?」

食べ終わったのを見計らって話しかけた。ドラゴンなんて見たことないもの。見たいに決まってる。

少し離れるよう言われて後退した。シルは一瞬、輝いたと思えば10メートルは超えそうな黒い竜になっていた。

「うわー! 大きい! カッコいい! キレイ!」

目を輝かせて見上げる。

「触っていい?触りたい!」
『沢山、触って』

脳に直接、シルの声が響いた。念話ってやつかな。

許可が貰えたため遠慮なく触る。

「すべすべ、ツルツル! 気持ちいい!」

浮遊して顔の前にも行って抱きつく。虹色の目が優しく細められ、嬉しくて頬にキスした。その後もあちらこちらと触っていく。

『ティナ、もう少し上、そうその辺り撫でて』

言われた場所を撫でると小さな虹色の雫の形した鱗があった。エンブレムはシルの竜体なんだね。

「うわー! 可愛い!」

暫く堪能してたが、シルが人化に戻る。まだ触りたかったのに。不満だと頬を膨らませた。

「これ以上は周りが耐えられないからね」

シルに言われ見渡してみると、ミーアさんたちSランク以上は片膝を付き頭を下げてて、Aランクの人達は尻もちをついて震えていた。

あんなにカッコよくて綺麗で可愛いのに、何が怖いんだろう?

意味が分からなくて首を傾げた。

「流石、番だね。マスターの竜体を見ても威圧されるところか感激するなんて」

ハルトさんがありえないと首を振る。

「威圧なんてしてたの?」

シルに聞いてみると苦笑された。

「竜体の時は自然と威圧が出てしまうんだ。人化してればかなり緩和されるんだけどね」

威圧なんて全然感じなかったけどハルトさんの言う通り番の影響なのかな?

「私なんて初めて見たとき冗談抜きでチビったんだからね!」

ミーアさんが曝露して、自分も自分もと初めて見た時どうだったか教えてくれる。私みたいにテンション爆上がりした人はいなかった。

「それじゃあ、採取を再開しよう。Aランクの人達はティナちゃんのご飯を食べた以上に働くこと! じゃないと次から連れて来ないからね」

ハルトさんの言葉にAランクの人達がおー!と雄叫びをあげて採取をし始める。その速さに苦笑いを零した。

私も鑑定しながら採取する。夕方まで採取してギルドに行った。受付で薬草を出すとお姉さんが目眩を起こしている。

「しょ、少々お待ちを……」

複数人で何回に分けて奥に薬草を持っていた。

「ハイヒール草320束で32ポイント480ギル、ハイマナ草240束で24ポイント480ギルとなります。残り731ポイント、護衛依頼4件でDランクになります」

おおー! 凄いポイントとお金になった。ギルドカードを返してもらってウハウハしてると受付のお姉さんに声を掛けられる。

「ティナ様、明日から2日間の予定はございますか?」
「護衛依頼ですか?」
「はい。Eランクパーティ3つが担当しますが、そのうちの1つのパーティの魔術師が体調不良になりまして、その代わりをして頂きのです。隣り街マンハールまでの片道護衛で報酬は1日10ポイント50ギルになります。失敗時は40ポイントの減点、200ギルの違約金が発生します」

他のパーティに入っての護衛か。前回1日100ギルだったのに今回はその半分だ。どうすればいいかなっとシルを見る。

「護衛依頼は受けよう。俺たちも着いていくから心配はいらないぞ」
「着いてきて大丈夫なの?」
「今はティナの育成中だからな。護衛の時の注意事項とかもあるから問題ない」

それならば安心だ。受ける旨を受付けのお姉さんに伝える。

「では明日朝の7時までにギルドにお越しください」

了承して拠点に戻った。食堂でシルにご飯を食べさせてもらってると明日の護衛の話になる。

「ティナ、明日は魔術師としての参加だから支援魔法や治癒魔法は使わなくていいからな」
「そうなの?」

シルを見上げるとうんと頷いた。

「そうよ。私も斥候としてパーティに参加したら戦闘はしないわ。する場合はその分の報酬も受け取ることになってからね」

ミーアさんも賛同し、他の人たちもそうだと言ってる。

「他パーティに参加する時、倒した魔物も自分のものになる。解体も自分のだけすればいいからな」
「分かった」

他にも色々と決まり事やルールを教えてもらった。お風呂に入った後、ベッドに入る前にポーションを作る。それを見ていたシルが不思議そうな顔をしている。

「錬金鍋とか使用して作るのが普通なのだが……」

へ? 錬金術辞典にそんなこと書かれてなかったよ。素材集めて後は魔力で作るとあった。

「誰に教わったんだ?」

無限収納から錬金術辞典を出してシルに渡す。シルは読み始めた。

「これは何処で?」
「神通販だよ」
「リュヌテラーシャス神の加護か。それならば他の者には無理だな」

これも加護だったんだ。色々と役に立つものが貰えたな。

「俺以外の前ではしない方がいいな。騒ぎになる」

騒がられるのは好きじゃないので了承する。20個ほど作って無限収納にしまいベッドに入った。



7時少し前に冒険者ギルドに行くと10歳くらいの男の子2人と女の子2人の1組、男の子3人と女の子2人の1組、男の子3人の1組、それと商会の人が数人いた。受付のお姉さんに今日助っ人するパーティを紹介される。助っ人するのは男の子3人組だった。

「こんなちっこいのが魔術なんて使えるのかよ?」
「ティナ様は優秀な魔術師ですよ」
「お前! 足引っ張るなよ!」

見た目だけで判断されるとは、先が思いやられる。だがシルたちを見ると彼らは目を輝かせた。パーティの名前を教えられたが覚える気なくなる。

「そのエンブレム、虹色の雫だよな!? 俺、憧れてるんだ! なぁ? そんなちっこいのじゃなくて俺を入れてくれよ! ちっこいのより役に立つぜ?」

俺も俺もとシルたちに纏わりつく。シルたちは冷めた目で彼らを見下ろした。

「ティナより役に立つ? 寝言は寝てから言え」
「そうよ! 見た目で判断するような貴方たちがティナちゃんより役に立つわけないでしょ?」

他メンバーも頷き同意してる。

「今回の依頼は失敗したかと思いましたが虹色の雫が参加するならば安心ですな」

商会の人が近付いてきて私以外のシルたちを見て満足気に言った。

「今回、俺たちはティナの付き添いで来ただけだから基本手出しはしないから、そのつもりでいろ」

シルに言われて商会の人は忌々しげに顔を歪める。その顔には冒険者風情が何を言ってると書いてあった。

護衛の配置でも、それぞれのパーティが強く主張してなかなか決まらなかった。結局、受付けのお姉さんが間に入りくじ引きになる。

今回は馬車3台で私が入るパーティは商隊の右側になった。

魔術師だからパーティの後方に位置する。流石に護衛中だからか抱っこはされず、シルたちは私の後を着いてきた。

途中で昼食になり、それぞれ食事をする。私はシルたちと食べた。他のパーティや商会の人の視線が集まってるが無視した。蔑ろにされたのにあげるほど人は出来てない。

「流石、虹色の雫だよな! 食べてるものが違うぜ!」

再出発したのに助っ人に入ったパーティがシルたちに纏わりついてる。

「護衛しろ」

勿論、シルには冷たくあしらわれていた。

魔物に会うことなく野営地点に着く。魔法テントを無限収納の中から出した。ミーアさんがアイテムバッグからテントを出して私に嬉しそうに報告してくる。

「ティナちゃん聞いて。これ魔法テントなの。オークションで漸く手に入れたのよ」

一緒に寝る? と聞かれたが断った。

「私のも魔法テントですので」
「ええー? ティナちゃん、どうやって手に入れたの?」
「神様の御加護です」
「いい加護もらったねー。私なんて手に入れるため何年もオークションに通ったのに」

お金はあっても凄く希少なためオークションでもなかなか出品されない。

夕食を食べ終えたところで夜の見張りの順番決めで、また揉めてる。順番なんていつでも一緒だと思うんだけどな。結局、くじで順番を決めることになっていた。私が助っ人で入ってるパーティは最初の見張りになった。

今回は攻撃魔法以外は使わないってことにしてるから結界魔法を商隊に掛けない。勿論、自身には掛けてるけどね。

見張りは何事もなく終わり、シルと魔法テントに入る。他の虹色の雫メンバーはミーアさんの魔法テントに入っていった。

お風呂に入りベッドで寛ぐ。

「疲れたな」

本当、精神的に疲れた。相手は10歳くらいの子供だけど、子供だからこそ言動に遠慮がない。

寝ていたら魔力探知が引っかかり目を開けた。

「気がついたか?」
「うん」

シルも起きて一緒に外に出ると、虹色の雫メンバーもいた。彼らも気がついたようだ。休んでる他パーティは気がついていないのか出てこない。見張りしてるパーティものんびり座っていた。

暗闇から人がゾロゾロ出てくる。その数は軽く20を越してる。漸く見張りしてるパーティも気付いて立ち上がった。

「武器を捨てろ! そうすれば命だけは助けてやる!」

盗賊の言葉に見張りしてたパーティが武器を手放す。

抵抗もすることなく投降する姿に目を疑った。護衛で来てるのに何してるの?

「お断りします」
「おい! 何言ってるだよ!」
「貴方たちこそ何をしてるのですか? 護衛でしょ?」

叱責するが彼らは戦おうとしない。

「威勢の良い嬢ちゃんだな? 殺すぞ?」

睨まれるが怖くなかった。逆に睨みつけやる。

「盗賊なんかに従う気はありません」
「何だと!? おい!やれ!」
「【聖】」

一気に全員を殺した。燃やすため盗賊の遺体を魔法で1箇所に集める。

「【炎】」

後始末をしてると漸く商会の人たちがテントから出てきた。

「盗賊ですか? 流石、虹色の雫ですな!心強いです」
「今回、盗賊を倒したのはティナちゃん1人よ」
「ははは! 子供に手柄を譲ってやるなんて器が大きい」

ミーアさんが訂正してくれたが、商会の人は全く信じてくれなかった。安心だと言いながらテントの中に戻っていく。

商会の人さえ出てきたのに護衛の冒険者たちが出てこないってどういうこと?

寝ているであろうテントを睨めつけた。

「お前! 何で戦ったんだよ!?」

見張りしていたパーティに食ってかかってこられるが、シルたちが立ち塞がる。

「君達は何を言ってるのかな? 盗賊が本当に君達に何もしないと思ってるわけ?」

ハルトさんが冷たく言い放った。

「確かに命は取られなかったかもしれないわね。でもね? 囚われ闇市場の奴隷市場に売られていたわよ。そうそう、その前に男の子たちは盗賊の汚い一物でぐちゃぐちゃになるまで犯されるわね。痛いって喚いても殴られ、感じて喘いでもうるさいって暴力を振るわれるのよ。女の子は処女性が重要視されるけど愛玩奴隷として売られるから早いか遅いかの違いだけね。それでもいいと言うならば冒険者辞めて奴隷か娼婦にでもなった方がいいんじゃない?」

更にミーアさんが一気に捲し立てる。見張りしてたパーティは何も言い返すことが出来ずに涙目になっていた。まだ子供だし、そこまで考えてなかったんだろうな。

魔法テントに戻るとシルに後ろから抱き締められる。

「よく頑張った」
「シル……」

目から涙が零れ落ちた。振り向きシルに抱きつく。

「怖かったな?」
「うんうん」

そのままベッドに連れてかれた。

「ティナ、後は俺がやるから魔力探知も解いてゆっくり休め」
「でも……」

護衛が終わってないため躊躇する。

「何かあったら、すぐ起こすから」
「でも、依頼は私のだよ?」
「ティナ、直ぐに何でも出来るわけではないよ。少しずつ成長していけばいいんだからね」

シルの言葉に甘えて魔力探知を解除して眠りについた。

翌朝、起きると盗賊に遭ったパーティがいなくなってる。彼らのテントがあった場所には何もなかった。更には商会の人たちが荷物が取られたと騒いでる。

「どういうこと?」
「怖くなって夜逃げしたってことだね」

ハルトさん、そんな事があるの?

「商会の荷物は?」
「彼らが持ち逃げしたんだろうね」

それって盗賊とどう違うの? ただ逃げるだけじゃなくて犯罪者になるなんて、まだ10歳くらいなのに将来ダメにしちゃったじゃん。

「この場合の任務はどうなるの?失敗?」
「いや。流石に護衛からも守るのは任務には入ってないよ。1番悪いのは持ち逃げした彼ら。次にそんな彼らを冒険者にして任務を任せたギルド。そして安い護衛費か払わなかった商会」

なるほど。ザンド商会の会長さんも護衛依頼はケチったらダメだって言ってたな。今回の商会はケチなのか、はたまた儲けてないのか。どっちにしろ起きてしまったことには、どうにも出来ない。残りの護衛をどう遂行するかだ。

商会の1人が近付いてきた。

「マンハールまでの護衛を虹色の雫にお願いしたいのですが」
「僕たちはSランク以上ですよ?因みに僕と彼はSSSランクです。それなりの金額になるのですが、よろしいのですか?」

ハルトさんがニッコリ笑って告げる。商会の人は青ざめて逃げた。

話を聞いていた冒険者たちが羨望の眼差しでシルたちを見ている。Sランク以上なんて中央都市にいるのがほとんどで、こんな所で会えるとは思ってもみなかったんだろう。

「なぁ? こういう時はどうしたらいいんだ?」

私が助っ人で入ってるパーティの少年が聞いてくる。人にものを尋ねているというのに、その態度はどうなの?と眉根を寄せた。

「僕たちは君の指導係でないよ。自分たちで考えなさい」
「何だよ! 教えてくれてもいいじゃねぇかよ!」

少年は唾を吐いて自身のパーティの所に行って文句を垂れてる。こんなパーティの助っ人は2度と嫌だ。次からは断ろう。パーティ名は何だっけ?受付のお姉さんに言えばいいかな。

「ティナちゃんは残りの護衛どうしたらいいと思う?」
「そうですね。前後に別れての護衛でしょうか? 地形も左側が森で右側が草原となっていて、襲撃されるとすれば森からだと思います」

考えを述べればシルに頭を撫でられた。ハルトさんも満足気にしてる。

「地形まで把握してるなんて流石だね」

すみません。マップ機能を使いました。いたたまれず、視線を外した。

護衛は前後でなく左右で行われることになった。私は助っ人なので口を挟まなかった。助っ人は言われた通りするのが基本だと教わったから。

助っ人してるパーティは右側の担当になった。少し進んだ所で魔力探知に魔物がひっかかる。どうすればいいのか指示を仰ごうと思って振り返るが、首を横に振られた。静観または周りに合わせろということ?

「ゴブリンだ!」
「20体近くいるぞ!」

馬車の向こう側から怒声と金属音が聞こえてきた。それで助っ人してるパーティも気が付き応援に向かう。だが馬車を迂回しないといけないので時間がかかった。私は飛んで行けるから直ぐに着けるが、他の人たちに合わせて行動する。

ゴブリンが見えてきた時には戦っているパーティは劣勢に立たされていた。

「【炎】」

パーティが手に負えてないゴブリンを倒していく。本来であれば1人で全部を討伐できるが、それはパーティではやってはダメだと言われた。倒せなかったことに不満を持つ者もいるから、強敵以外は魔術師として前衛が攻撃してない相手か遠くの敵に魔法を放つよう教わった。

「ダメだ! 数が多い! 逃げるぞ!」

助っ人で入ってたパーティが我先にと逃げ始める。ゴブリンは20体ではなく奥のも合わせて、その倍はいた。流石に逃げるのまでは一緒に出来ない。

「逃げるな! 助けてくれ!」

残ったパーティは既に逃げることが不可能なほど囲まれていた。商会の人はリーダーぽい人が隙があったら逃げろと周りに指示を飛ばしている。

うん。これは、もう殲滅してもいいよね? 従うパーティもいなくなったことだし。

「【炎】」「【炎】」「【炎】」

次々とゴブリンを屑っていく。あっという間に討伐が終わり辺りが静かになる。

「おおー! 流石は虹色の雫。小さいとはいえ素晴らしい!」

商会の人が手を揉み込みながら褒めてくる。さっきまで護衛を置いて逃げようとしてくせに手のひら返しが激しい。

「なぁ、あんたらポーション持ってないか?」

残ってたパーティが聞いてきた。護衛任務受けてるのにポーション持ってこなかったの? 遠足と間違えてるんじゃない?

「こういう時の相場は下級ヒールポーションの最高ランクの品質で100ギルだが、君たちに払えるのかな? 因みに僕たちは最高ランクの品質しか持ち合わせてないからね」

ハルトさんが金額を提示する。

「なんだよ! あんたら高位の冒険者なんだからくれてもいいだろう!?」
「世の中そんな甘くないよ! ポーションすら買えないなら安全な場所で採取でもしてなさい! いい? 最低でも1人10個は用意が出来るようになってから護衛依頼を受けなさい!」

ミーアさんに叱責されたが、彼らは反省の色をみせるところか不貞腐れた。もう護衛なんて出来ないとシルたちの後ろを陣取る。逃げて護衛依頼失敗したり、また魔物に遭うのも嫌なんだろう。つまり寄生するつもりだ。

前回の護衛依頼と比べると雲泥の差だよ……。サーシャさんという私を目の敵にしてた人はいたけどスムーズに依頼は達成出来た。

何とかマンハールに到着して護衛終了となる。片道護衛で本当に助かった。商会の人たちとは門のところで別れて冒険者ギルドに行った。

報告する際、ハルトさんが護衛中のことを事細かく話してると最後まで残ってたパーティが嘘だと言い出し、真偽の水晶を使うまで発展する。結局、ハルトさんの言い分が正しいことが判明された。最後まで残ってたパーティは厳重注意となった。

それだけ? とは思ったが最後寄生したとはいえ一応は依頼達成したことになるし仕方ないのかもしれない。

持ち逃げしたパーティは冒険者ギルド永久追放のうえ犯罪者として登録され、ゴブリン襲撃の時に逃げ出したパーティは任務失敗と判断されポイント減点と違約金を支払うことになった。

護衛依頼達成で20ポイント、盗賊退治24人で120ポイント手に入れて残り591ポイント護衛依頼後3件となった。

ランロワには私の魔導馬車で帰った。魔導馬車は普通の馬車の倍の速度で走れるため1日でランロワに到着する。魔導馬車に1番はしゃいでいたのがユーグさんで、ハルトさんは慣れた様子で魔導馬車を操作していた。

【名前】ティナ
【年齢】5歳
【レベル】352
【体力】362
【魔力】∞
【物理攻撃】70
【物理防御】70
【魔法攻撃】35,200,000
【魔法防御】35,200,000
【属性】全属性
【スキル】全属性魔法Lv4、鑑定Lv4、無限収納、マップ
【ユニークスキル】神通販、経験値10,000倍、必要経験値1/100
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