大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
116 / 2,040
本編

聖女とナナキ

しおりを挟む
自分が聖女様…フライナ・シグナリム様について知っている事と言えば…。
…元は辺境の地の農村の長女だったが、婚約を交わした十三歳の誕生日の日に聖女紋が身体に出現。そのことが教会に伝わり、出現後僅か三日にして教会に保護、そして一年の修行期間を終えるとほぼ同時に新しい聖女として正式に教会から発表された。
今現在、御年十八歳という若さにして聖女を務めており、歴代聖女よりも幾分早く聖女となった為か、先代達よりも結界が脆い、などの問題が指摘されていたりするが、その分戦場では先頭に立ち、先代達と負けず劣らずの人気を得ている。
と言ったところか。
で、その聖女様がいる訳だが…本物だよな?
地面につかんばかりに長い金髪に全てを見通すような碧眼、清廉さを強調する白を基調とした聖衣に、手や脛、額などのほか数箇所を覆う銀の防具は細く可憐でありつつ、芯の通った彼女をより美しく完成させるように、それでいてしっかりと守ることを出来るようになっている。
自分が知る聖女様その人だと、そう思う。
もっとも、初めて見たのが先日の学校でのスピーチなので、断言は出来ないのだが。
「あ、あの…」
「!!」
喋った!いや当然だけど!頭が真っ白になる!
「そんなにジロジロ見ないで下さい…」
困ったように目を伏せる聖女様。慌てて目をそらせるが…逆に不自然だ。
「え、えぇっと…聖女様?何用で御座いますでしょうか?」
いかん、慌てすぎて自分でも何言ってるかわからん。
しかも、さっき何気に知らなかったとはいえタメ口しちゃったじゃん!あれ、教会の偉い人とか、忠誠心高い英雄が見たら青筋たてて襲ってくるレベルだぞ!
そう思いながら慌てていると、聖女様は「気を楽にして下さい」と言ってくれた。いや、気休めにもならないけどね?
「あなたは…確かナナキの家族、なんですよね?」
「ええ、そうですよ。血のつながりはありませんが」
「それは…当然でしょう」
ん?どういう事だ?
「私が今から話すことは他言無用でお願いします」
「は、はい」
長話になりますがその前に、と前置きをして聖女様が質問を自分にしてきた。
「あなたは一体どこの生まれですか?何故、彼女と出会うことに?」
一番答えに困る質問だな…。
「実は…よくわからないのです。捨て子だったらしくて、それをナナキが拾ってくれたのだとか…しかも赤子で、物心ついた頃には既にあの森に…」
「そうですか…あの森へ自由に出入り出来る人物となると、かなり絞られてきますが…断定も出来ませんし、あなたの容姿に近い方は私も存じ上げないので、なんとも言えませんね」
「しかし、それが何の関係が?」
その言葉で、聖女様が少し困ったような顔をした。
「これから先の話は、あなたが信じたくないであろう事があるかもしれませんが、この話に嘘は一つもありません。その事を留意して聞いてください」
頷くと、聖女様は覚悟を決めて話してくれた。
「結論から言います。彼女…ナナキは、我が国で創り出された戦闘生物、ホムンクルスとでも言うような生き物です」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

処理中です...