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本編
生命力とモヤ
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続いてアーネの部屋に来た。
こっちは…ラウクムくんの時みたいな異常な病人じゃなく、普通の病人らしくしてる。
異常な病人とか普通の病人とか訳分からんけど。
まぁ要は、単に寝てるって話なんだけど。
赤く、腰の辺りまで伸ばしている美しい髪は艶が失われ、ベッドの上に散らされていて、真っ赤に燃えるような色をした目は閉じられている。
元気なときはふっくらと健康そうな色をしていた肌は、今は青白く、不健康そうな色になっている。
一応、無駄にでかい胸が上下しているから、生きていることはわかる。けど、これがもし静止画として見せられたら、間違いなく死んでいると思う。
「よかった、昨日よりも顔色がよくなってます。峠は越えたようですね」
嘘だろ?これで良くなったってのか?
「ということは、アーネはこれで死ぬことは無い?」
「死ぬことはありませんが、ずっと寝たきり、食事を取れていませんので、そっちの方で餓死する可能性がありますね。ファルナ様から聞いた話だと、今日中に起きるらしいので、大丈夫だとは思うのですが…」
もし今日起きなかったらどうすんだこの野郎。
いや、まぁ人間は一日や二日ぐらい食べなくても死にはしないけど、コイツのいつもの食事量というかカロリー摂取量からすると、死んでもおかしくない気がする。
「なにか早く治す方法とかは?」
「そうですね…生命力は私達ではどうする事も出来ないので、待つしかありません。しかし、魔力なら上二級に当たる魔法で魔力供給の魔法があります。今現在、もし仮に生命力がある程度回復した状態であるなら、この方法で魔力を外側から注入することで回復を早められますが…」
生命力なんか見えない、と。
そっとアーネの方を見る。
自分の目には、今もずっとあのモヤが見えている。
ただ、色がおかしい。
前に表現しにくい不思議な色、と言ったが、あれは常に色が変動しているからだ。
ついでに言うと、感情とかで激しく動いたり、色が変わるっぽい。
英雄様は最初青系統の色だったけど、首絞めたときは真っ赤になって、バッシャンバッシャンと荒れ狂ってた。
自分の予想では、魔力が見えてるんだと思ってたんだが…外れたっぽいな…。
というのも、今のアーネは、色がない。色はないけど、量はあるし、自分達の話に合わせて反応…というかある程度動き回ってる。
意識はないはず…だよな?
うーん、となると…もしかして生命力の方が見えてるのか?
「先生、さっきの魔力供給の魔法、使える?」
「使えますが…生命力が」
「それって危険な状態になるの?」
少し考える先生。
「……いえ、少しは生命力が回復しているはずなので、少しだけなら耐えられるはずです」
ふぅむ…。
「ほんの少しでいいから、それ、やってみてくれない?」
先生が眉間にシワを寄せる。
「…失敗すれば、ケイナズさんが危険な目に遭います」
「ある程度可能性はある。それに、少しは耐えられるんだろう?」
「耐えられても、寝たきりの期間が延びると、危険なんです。だから確実に助けるには寝かせる方がいいんです」
「少しでも早く助けるべきだろう?」
しばらく言い合っていたが、なんとか捩じ伏せ…じゃねぇ、説き伏せた。
「それでは…はじめます『魔力を透せ、力を巡らせ、鼓動を起こせ、全てを繋げて糧と為せ』」
短い詠唱が紡がれた後、一瞬室内が白い光で満たされた。
こっちは…ラウクムくんの時みたいな異常な病人じゃなく、普通の病人らしくしてる。
異常な病人とか普通の病人とか訳分からんけど。
まぁ要は、単に寝てるって話なんだけど。
赤く、腰の辺りまで伸ばしている美しい髪は艶が失われ、ベッドの上に散らされていて、真っ赤に燃えるような色をした目は閉じられている。
元気なときはふっくらと健康そうな色をしていた肌は、今は青白く、不健康そうな色になっている。
一応、無駄にでかい胸が上下しているから、生きていることはわかる。けど、これがもし静止画として見せられたら、間違いなく死んでいると思う。
「よかった、昨日よりも顔色がよくなってます。峠は越えたようですね」
嘘だろ?これで良くなったってのか?
「ということは、アーネはこれで死ぬことは無い?」
「死ぬことはありませんが、ずっと寝たきり、食事を取れていませんので、そっちの方で餓死する可能性がありますね。ファルナ様から聞いた話だと、今日中に起きるらしいので、大丈夫だとは思うのですが…」
もし今日起きなかったらどうすんだこの野郎。
いや、まぁ人間は一日や二日ぐらい食べなくても死にはしないけど、コイツのいつもの食事量というかカロリー摂取量からすると、死んでもおかしくない気がする。
「なにか早く治す方法とかは?」
「そうですね…生命力は私達ではどうする事も出来ないので、待つしかありません。しかし、魔力なら上二級に当たる魔法で魔力供給の魔法があります。今現在、もし仮に生命力がある程度回復した状態であるなら、この方法で魔力を外側から注入することで回復を早められますが…」
生命力なんか見えない、と。
そっとアーネの方を見る。
自分の目には、今もずっとあのモヤが見えている。
ただ、色がおかしい。
前に表現しにくい不思議な色、と言ったが、あれは常に色が変動しているからだ。
ついでに言うと、感情とかで激しく動いたり、色が変わるっぽい。
英雄様は最初青系統の色だったけど、首絞めたときは真っ赤になって、バッシャンバッシャンと荒れ狂ってた。
自分の予想では、魔力が見えてるんだと思ってたんだが…外れたっぽいな…。
というのも、今のアーネは、色がない。色はないけど、量はあるし、自分達の話に合わせて反応…というかある程度動き回ってる。
意識はないはず…だよな?
うーん、となると…もしかして生命力の方が見えてるのか?
「先生、さっきの魔力供給の魔法、使える?」
「使えますが…生命力が」
「それって危険な状態になるの?」
少し考える先生。
「……いえ、少しは生命力が回復しているはずなので、少しだけなら耐えられるはずです」
ふぅむ…。
「ほんの少しでいいから、それ、やってみてくれない?」
先生が眉間にシワを寄せる。
「…失敗すれば、ケイナズさんが危険な目に遭います」
「ある程度可能性はある。それに、少しは耐えられるんだろう?」
「耐えられても、寝たきりの期間が延びると、危険なんです。だから確実に助けるには寝かせる方がいいんです」
「少しでも早く助けるべきだろう?」
しばらく言い合っていたが、なんとか捩じ伏せ…じゃねぇ、説き伏せた。
「それでは…はじめます『魔力を透せ、力を巡らせ、鼓動を起こせ、全てを繋げて糧と為せ』」
短い詠唱が紡がれた後、一瞬室内が白い光で満たされた。
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